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Tohazugatali Economic Review

1302とはずがたり:2009/05/06(水) 10:48:20
>>1301-1302
深尾教授は、やはり効率が悪いといつも批判される日本の小売部門を例に挙げる。小売部門の生産性を測る基本的な指標は、従業員が1時間あたりどれだけの商品を販売できるかだ。この指標を使うと、ドイツの成績はとてもいい。これがなぜかというと、営業時間が短いからだ。店が開いている時間が限られているので、客はやむを得ず短時間でたくさんを買うことになる。一方でこの測り方をすると、日本は成績が良くない。巨大でガラガラな米国のスーパーが、狭くて小さい日本のラーメン店や豆腐屋よりずっと成績がよいということになる。加えて日本にはあらゆる街角に24時間営業の店舗が立ち並ぶ、非常に密度の濃いコンビニ・ネットワークが存在し、おかげで消費者はいつでも好きな時間に買い物ができる。よって購買量は時間単位で集中しないため、効率が悪いということになってしまう。

加えて、日本の小売店がほとんどの場合は徒歩圏内あるいは遠くても自転車圏内にあるという点も、プラス材料として評価されていない。使われている統計データでは、小売店にたどり着くための移動の不便や、遠くの店で買い物することに伴う要素(交通事故の危険性、公害、道路維持管理費)などを考慮に入れていない。

さらに複雑なことに、欧州委員会出資のプロジェクト「EU KLEMS」による生産性の国際比較では、もっと妙な結果が出てくる。日本の卸売部門、小売部門、流通部門の生産性について2007年3月に公表されたデータによると、1995年〜2004年にかけて労働生産性は年率0.5%しか上昇していない。一方で1年後に公表された同じ調査によると、1995年〜2005年の労働生産性は年率2.1%と好調で、欧州よりもかなり良かった。

だからといって、日本のサービス部門に問題がないわけではない。労働市場が硬直的なので、生産性の低い産業から生産性の高い産業へ労働力が移動するのが、欧米に比べて困難だ。たとえば、赤い誘導灯を振っている警備員たちは、人手不足が深刻な病院で看護師をやったほうがいいのではないだろうか? あるいは情報通信技術に関して言うなら、米国企業は新しいコンピューター・プログラムにあわせて仕事の仕方を変える。そして多くの場合、これに合わせて人員を削減する。しかしこれに対して日本企業は、既存の仕事慣習や従業員数に合わせたプログラムの開発を求めるのだ。

日本のサービスには高すぎるものもある。消費者よりも生産者を大切にする慣習は、誰の得にもならない。日本の港湾使用料が高いせいで、日本を中継していた船舶貨物はもっと安い中国の港を使うようになってしまった。空港の着陸料も高すぎるため、格安航空会社が日本で運航するのはほとんど不可能だ。またOECD加盟国中4位と高い電力料金も、日本のビジネスコストを押し上げている。

日本は生産者重視から消費者重視に振り子を戻すべきだ。そしてこれには競争育成と対日投資の促進、新規参入者への障壁撤廃などが必要だ。今よりも安いサービスが手に入るようになれば、内需拡大につながり、日本の輸出依存度を減らすことができるようになる。こうした指摘はどれも正しい。しかしそれと、生産性についての無意味な比較は、全く別の話だ。日本の運輸システムは効率が悪い、と誰かが言うのを聞いたら、米国の「アムトラック」を思い起こしてみるといい。


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