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Tohazugatali Economic Review

1125とはずがたり(2/3):2006/03/07(火) 16:59:58
>>1124-1126

なぜ若手日本人は米国で修業しないか

 では今はどうか。2006年現在、筆者の知る限り、アメリカのトップ・スクールの博士課程で勉強する若手はほとんどいない(いたら失礼。私に連絡ください)。経営のグローバル化が言われる今の時代に、これはいったいなぜだろうか。
 理由はいくつか思いつく。第一に、われわれの世代(今の40〜50歳あたり)の日本人がほとんど日本に撤収したため、後続が途切れた。酒向真理オックスフォード大教授や榊原磨理子UCLA准教授など少数の顕著な例外を除けば、私の前後の世代で欧米に残って活躍している経営学者は非常に少ない。例えばハーバードでは、長年同校を支えた吉野洋太郎教授が名誉教授になられたあと、200人を超える教員団の中に日本人の常勤教授はいない(インド系の教員は20人以上いるのだが)。学問に国境なしとはいえ、同国人の教員が不在ならば、次世代の留学生の流れには自ずと影響が出る。
 第二に、この時期、日本の経営学部や経営大学院が規模的に拡大したことも影響している。各校で院生数も教員ポスト数も増えたが、他方で常勤教員の就職競争もオープン化かつ厳しいものとなってきた。学者を目指す大学院生にとっては、国内の学会での発表がデビュー戦となり、よい就職口を得る登龍門となった。彼らの間で「大事な時期に留学などしていては就職の機会を逸する」という考えが強まっても無理はない。
 第三に、日本の一部経営学者の側にも「日本の大学院教育も充実したことだし、わざわざ若手をアメリカに送り出さなくても、日本でちゃんと人材育成できるぞ」という自負が出てきたようだ。それ自体は日本の経営学の進歩とも言えるが。
 第四に、アメリカのビジネススクールにとって「研究対象としての日本」の魅力度が下がった、というアメリカ側の事情がある。米ビジネススクールの教授は、魅力ある研究を進めるうえでの助手として使うことを前提に大学で指導する院生を選ぶことが少なくない。したがって、研究対象としての日本の魅力度が下がれば、当然、研究指向のトップ・スクールが受け入れる日本人留学生の数も減る傾向となる。日本の景気が低迷する一方、アメリカがITバブル景気に沸いた90年代後半以降、日本人留学生が減少傾向にあったのは偶然ではないだろう。
 第五に、日本人にとって「登龍門としてのアメリカ」の魅力度自体もやや下がったかもしれない。米国大学院教育の高度さ、周到さは、依然大きなメリットのはずだが、「9.11」以後、こっちから行くにも住むにも移動するにも、何かと窮屈な国になってしまった感はある。実際、筆者もここ5年、アメリカには2回しか行っていない。面白い研究テーマはアジアに山ほどあるし、不況下の日本にも研究対象として魅力のある企業は多かった。
 とはいえ、筆者としては、若手にもっと「アメリカ武者修行」に出てほしいと思っている。筆者も億劫がらずに、若手を連れてアメリカに出かけるようにしようと思う。


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