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PC関連スレ

2061とはずがたり:2017/02/06(月) 19:43:17
インテルはコア・アーキテクチャを採用した製品を3種類リリースした、モバイル用のMerom、デスクトップ用のConroe、そしてサーバー用のWoodcrestである。通常AMDもインテルも新製品のリリースの6か月くらい前から社内で性能試験をした結果などを踏まえ、自社製品の優位性をまとめたプレゼンをお客に配り始める。もちろんNDAベースであるが、こういった情報はいろいろなチャネルから漏れてくるのが常識だ。

我々も情報を集めてOpteron、AthlonX2とインテルの新製品との性能比較に注目した。すると、どうも今回のコア・アーキテクチャはかなり出来がいいことがわかってきた。Opteronのデュアルコアの登場で、前述したスパコンへの採用などでも証明されたように、向かうところ敵なしだったK8にも強力なライバルが出現したことが明らかになった。正式な製品のリリースは6か月先とはいえ、こうした情報をすでに入手している顧客側の反応が次第に変わってきたのが感じられた。"AMDのK8ベースの将来製品はインテルのコアに本当に対抗できるのか?"、という質問をほとんどの顧客から受けるようになった。

そこで、できるだけ広く集めた情報、客の反応などを本社と共有し我々の危惧を伝えるのだが、本社は、"コア・アーキテクチャ恐れるに足らず"、の強気の姿勢を一向に変えない。この本社の態度に業を煮やした同僚は私に、"本社はOpteronの成功に酔っているのではないのか? 我々の警鐘に全く耳を貸さないというのはどういうことだ?"、と憤慨している。こういった状況は本社のマーケティングと各国の営業では日常茶飯事だ。

つまり、本社のマーケティングは"この製品はこれだけの優位性があるのだから営業がしっかりしていれば高い値段で必ず売れるはずだ"、と言い、現場を預かっている営業は、"この製品は競合に比較して優位性がないので値段を下げないと売れない"という違う立場どうしの議論だ。私の30余年にわたる営業、マーケティングの経験でこうした会話が何千回と繰り返されたことか。営業対マーケティングの議論は典型的に下記の状況のどれかで行われる。

1.営業も製品もしっかりしているので放っておいても売れる - この場合、議論は起こらず、ひたすら売りまくるだけである。
2.製品は優秀なのだが営業がだらしないので客から足元を見られている - この議論は本当に営業がしっかりしていない場合は正論だが、製品力が落ちてきている場合は果てしない議論となる。
3.営業はしっかりしているのだが、製品の競合に対する優位性が左程ない、あるいは劣っているので値段を下げでもしなければ売れない - 2. の変形だが、製品力がないのを本社が認めない場合にこの議論が起こる。本社が市場を理解しないで言っているのであれば営業の説明力が足りないのである。本社が市場を理解したうえで言っているのであれば、営業は殆どなす術がなく、営業成績でやはり責められる。

Opteronが登場したころは明らかに1. の状況であった。しかし、コア・アーキテクチャの登場を前にして状況が1. から3. へとシフトしていくのを肌で感じ取った私は、ある日、本社から来日していたマーケティングの人間を連れ出してホテルのバーで一杯やることにした。そこで私は、"本当のところはどうなんだ?"、と聞くと彼は、"コア・アーキテクチャの優秀性は本社が一番よく知っている。製品テストの結果もOpteronの強力なライバルになることを示している。しかし、我々には現在Opteronの延長でコア・アーキテクチャの進撃を封じるものはない。デュアル・コア(2コア)の次に控えるクアッド・コア(4コア)の製品が出てくるまで何とか踏ん張るしかないのだ"、という答えだった。

そのころAMD本社では初の4コア製品(コードネームBarcelona)の設計が粛々と進められていた。

…バルセロナは前回話したデュアルコアOpteronの後継機種クアッド・コア(4コア)Opteronの開発コードネームであったというだけだ。私も含めて、当時このプロジェクトに関わっていたAMDの人間には、バルセロナロはそのマンチックな響きとは相反して苦い思い出を想起させるかもしれない。


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