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PC関連スレ

2054とはずがたり:2017/02/06(月) 19:35:19

お客のお客(エンドユーザー)に自社製品の価値を分からせるという点で今までのマーケティングとは大きく違っていた。"市場をセグメント化し、各セグメント毎に一番有効なメッセージを定義し、そのセグメントでのメッセージ発信に一番有効なメディアを使い、効率よくターゲットにリーチする"、などと言うMBAのコースでは定番の基本的なマーチャンダイズの考え方は現在のマーケッターにとっては常識だが、当時の半導体業界のマーケティングは黎明期でいろいろな試みが行われていた。その中で非常に独自で、突出して大規模なマーケティング・キャンペーン"インテルインサイド"は我々にとってはまさに仕事をしながら進化するマーケティングを同時に勉強する格好の機会となった。ただし、インテルインサイドは主にコンシューマー・ユーザー(個人ユーザー)を対象としたキャンペーンだった。当時、我々AMDが新しい商材として抱えていたのはOpteronというサーバー用のCPUである

Opteronが目指した市場は私が今までに全く経験したことがないIT(Information Technology)の市場であった。CPU・PCの市場を概観すると、その中身は個人相手のコンシューマー市場、大企業のIT部門が一手に購入決定をするエンタープライズ市場、企業であるが個別の案件のサイズが小さい中小企業市場、政府・官公庁などのパブリック市場、HPCなどの研究開発機関のR&D市場など、いろいろに分かれていてそれぞれが購入決定についての独自の要件を持っている。

前述したとおり、当時のAMDではいつの間にかトラディショナルな半導体営業、マーケッターは少数派となり、Dell、HP、IBM、SUNといったPC/サーバーのメーカーからリクルートされた人たちがどんどん入社してきた。これらの人たちは半導体については素人だがサーバーの市場原理をよく理解していた。 AMDが直接のお客のそのまたお客に直接売り込むのであれば、お客から経験豊富な営業、マーケッターを引き抜いてしまえというわけだ。私はトラディショナルな半導体屋であったが、これらの人たちのお蔭で何とかサーバーの市場原理を理解することができた。

営業はその業界での経験、人脈が決定的要素だが、マーケティングではそれほど関係なく原理的にはほとんど全ての市場でその手法は通用する。成功する手法の要件は、

1.明確な差別化、付加価値のメッセージ(これは多分に商品の出来にかかっている)。
2.製品自体のスペックもさることながら、製品が提供する総合的な価値が重要。
3.対象となるメッセージの受け手(Audience)の定義と、それらの人々のプロファイルの理解。
4.マーケティングにかけられる予算の確定とそれらを効率よく行うプログラムの策定。

それまで未知のサーバー市場を相手にマーケティングを開始する私は不安で一杯だったが、同時に何とかなるだろうという直感があった。その第一の根拠はOpteronという製品の出来の良さだった。インテルの競合製品に対し非常に明瞭な、かつ事実に裏付けられた優位性があったからだ。そこから導き出されるマーケーティング・メッセージは次の通りである。

1.32ビット・64ビットソフトウェアに同一ハードウェア(CPU)で高速に対応可能。
2.将来的なアップグレードが周波数向上とCPUコアの多重化(デュアルコア)で対応。
3.インテルのIA64よりも安価なプラットフォームの提供。

これだけいいことずくめだったら売れないはずがないと直感したわけだ。また、サーバー市場はコンシューマー市場と比較してAudienceのサイズははるかに小さく、彼らの技術的理解度は非常に高い、という事は大量の資金を投じた一般コンシューマー相手のインテルインサイドのような大規模マーケティングでなくとも、うまい方法さえ考えれば効率よく効果的な活動が可能であると思った。


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