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PC関連スレ

2036とはずがたり:2017/02/06(月) 16:58:36

Athlon 1GHzの壁を破る

私はその時Gateway Japanの社長と会っていた(2000年の初めころだったと思う)。Gateway(当初はGateway2000という名だった)は新興のPCメーカーで、特にパワーユーザーに人気のブランドであった。すでにAthlonの重要カスタマーであり、世界各地で協業をしていた。

その日もいつものように、その時点では最速のAthlon(確か、800か850MHzであったと思う)を使用したデスクトップPCの共同プロモーションの話をした後、握手して帰ろうとした時に、彼は独特のニュージーランドなまりの英語で切り出した、「1GHzの発表会を一緒にやらないか?」。1999年の8月に最速の650MHzで正式発表されたAthlonにより、それまで最速は常にIntelと決まっていた状況が一変した。今やIntelがAMDを追いかける形になっていたのだ。

周波数は今までは考えられなかったペースで上がっていった。まさに、Sandersが予想した通り競争がIntelの技術者たちに闘志を植え付けた。しかし、私は1GHzの話は聞いていたけれども、早くても、2000年のQ2(4-6月期)という認識であった。そこで、「1GHzはまだまだ先だよ」と言ったら、Gateway側は「いや、もっと早い時期だと聞いている。その場合にはGatewayが真っ先にシステムを発表することになっている。本社に確認してほしい」と言う。

その晩、私は本社のVPに電話して、AMDがひそかに1GHzの発表を前倒ししているという事実を知った。1GHzの壁を超えるのは当時としてはジェット旅客機が音速を超えた時くらいのインパクトがあったので、AMDは必ずIntelに先んじて大々的に行うのだと言う。その中でAMDが選んだパートナーがGatewayだったのだ。

Gatewayはパワーユーザーをたくさん抱えているし、Athlonといえども、プロセスのチューニングを行って徐々に周波数を上げている最中なので、1GHzを超えるものはよほどできのいいシリコンを選別してやっととれるくらいであるので、最初は限られた数しか提供できない。それでいて、1GHzの発表は3月中、それも早い時期に行いたいというので大変驚いた。 社内でも限られたものしか知らないという。次の日、件のGateway Japanの社長と再度Meetingしたのは言うまでもない。

時効だから明かす、効果的なPRのために採った策とは

そこで、3月に迫っている発表イベントの計画を、PRマネージャーとともにひそかに進めた。一番恐れたのが、闘志むき出しのIntelに出し抜かれないことである。アーキテクチャの優位性から、AMDが1GHz品を実際にIntelよりも早く生産できるであろうことには自信があった。あとはUSと連携をとりながらどうやって、世界同時に、Intelよりも早い時期に、しかもより効果的に発表するかということに頭をひねった。

そこで、一計を案じ、2つの発表日を1週間ずらしてセットすることにした。当時は、発表会と言うとホテルのカンファレンスルームと相場が決まっていたので、2つの日にちで部屋を抑えた。その間、エンジニアたちはほどなく到着した1GHz Athlonを搭載したシステムを念入りにチェック。発表当日に安定してデモができるかが非常に重要である。

これからの話は、今は時効になっていると思われるので、裏話として聞いてもらいたい(プレスの方、Intelの方申し訳ありませんでした…)。まず、プレスに「AMDから重要な製品発表を3月13日に行います」という案内をだした。そんな案内を出せば、プレスからは「重要な発表っていったいなんですか?」と質問が来る。そこで、言葉を濁しながら、「今は言えません、でもきっとびっくりすると思いますよ、絶対にはずさないで来てください」と答えておく。

すると、鼻の効くプレスの人たちは、「これはAthlonの新製品だろう、ひょとして1GHz?」と考える。その話はいずれIntelのPRにもわかることになる。そのうち、予想した通り、あるプレスから、Intelも発表会を開くらしい、その日付は3月8日である。という情報が入った。そこで、我々は正式発表の日付を3月6日に変更した。プレスの人たちには「突然で申し訳ありません」と電話をかけまくって来てもらった。

AMDとIntelの1GHzの発表が微妙にずれているのはこういった事情があったのである。Gateway Japanも即日製品の販売を受け付け開始の準備をしていたが、それを発表会で正式に言ってしまうのはあまりにもできすぎなので、「システムはどこから出るのか?」と言う質問に、私はわざと「ゲート…」と言いかけ、PR担当の方を見ていかにも「しまった!!」という顔をする、と言う手の込んだ演出まで用意していた。


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