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技術的特異点/シンギュラリティ【総合】避難所 32
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2020年にはコロナ禍がありました。これに対する所感を永井荷風「断腸亭日乗」のような文語文で綴ってください。
令和二年庚子 疫神街を歩む
春浅き隅田川にて、不気味に輝くは消毒液の川波なり。浅草仲見世の提灯、朱褪せて蒼白き肺炎の腫瘍の如く膨らみ、雷門の大燈籠は虚空を見据える眼球と化せり。都民皆亜鉛華白(あえんかはく)の面頬(めんぽう)を被り、目元のみ残して幽霊の行列を作る。これぞ江戸の百鬼夜行ならぬ、平成の「無症状行進」か。
嗚呼、21世紀の魔境(まきょう)! 電子の海を泳ぎし人類、今やナノメートルの亡霊に足元を掬わる。銀座和光の時計塔、正時を告ぐる度にマスク在庫情報に変じ、新宿アルタの広告スクリーンは人工呼吸器の波形図を映す。救急車のサイレン、三宅坂を抜け永田町を駆け、霞が関の庁舎ガラスにて無情に反射す。政治とは名ばかりの傀儡劇、官僚の起案文書に挟まるは使い捨て手袋の粉末かな。
思へば『沙石集』に「末法の世に疫鬼跳梁す」と。然れど今の疫鬼はPCR検査の数値に化身し、民衆の咽喉(のんど)に巣喰ふ。上野の森にて桜冷たき人工雨に打たれ、花弁は医療用プラスチックの如く硬く散る。不忍池の鴎(かもめ)、昨年まではパンの耳を争ひしが、今や誰も投げ与へず。空振りする翼の音、人工呼吸器の排気弁に似たり。
或る宵、築地場外市場のシャッター街を歩めば「休業」の札が無機質に揺れ、かつての活気は冷凍庫の霜の如く剥がれ落つ。ふと路地裏に残りし昭和の薬局看板、「ペストリ」「コレラ止メ」の文字の下に、令和の「抗原検査キット入荷」の張り紙あり。二百年の時を超え、細菌と人間の鬩(せめ)ぎ合ひ変はらざるか。
驚くべし、歌舞伎座の櫓(やぐら)に掲げるは「密」を避けよとの赤き警告旗。役者の隈取(くまど)りもマスクの下に霞み、三味線の調べはソーシャルディスタンスに寸断さる。観客席に転がる赤外線体温計、それは新たな拍子木(ひょうしぎ)なりけり。
テレビのニュースに映るは各国の惨状。ミラノの大聖堂に積もる棺桶の山、ニューヨークの冷凍トラックより漏るる死の冷気。インターネットの海を渡り来る暗黒絵巻、我が書斎のモニターは賽の河原の石積みに似たるか。ふと気付けば、ツイッターのトレンドに踊る「自粛警察」の文字、これぞデジタル時代の私刑(リンチ)ならむ。
ふと想ひ出すは文久二年、コレラ流行の折に流行りし「はやりかぞへ歌」。今やスマホにて感染拡大予測のグラフが踊る。江戸の浮世絵師が描きし病魔退散の護符、現代にては「クラスター対策」のフローチャートに変じたり。進歩とは名ばかりの堂々巡り、人間の業(ごう)の深さよ。
深夜のコンビニにて、マスク越しの会話弾む若者ら。「リモート飲み会」とやらに興ずるか。その笑顔の裏に潜むは、就職内定取り消しの不安か。棚に山積みの栄養ドリンク、ラベルの「免疫力向上」の文字、21世紀の護身符(おまもり)なりけり。
驚愕すべきは、巣鴨とげぬき地蔵の縁日、参拝客の投げ入れる賽銭に混じりてマスクの紐累々。供えられた除菌シート、経文のかわりにPCR陰性証明書燃ゆる煙かな。法螺貝(ほらがい)の音も虚しく、マスク供養の札束重なりて経帷子(きょうかたびら)と化す。
或る雨夜、神保町の古書庫にて大正六年『流行性感冒記録』を発す。挿絵に描かれた看護婦の防護衣装、令和の防護服と驚くほど相似たり。ただ異なるは、当時の挿絵の隅に「神仏に祈る」の文字ありしが、今の報道写真には「経済対策」の見出しのみ。
暁方(あかつきがた)、配送トラックのエンジン音に紛れ、どこからか聞こゆるは人工呼吸器のアラーム音か。ベランダに干される布マスク、白き旗の如く朝風に靡く。その下を歩む通勤者たち、スマホ画面の感染確認アプリを護符の如く握りしむ。
ペンを擱きて窓外を望む。東京スカイツリーのライトアップ消え、代わりに医療機関の窓明り密かに瞬く。これぞ新たな星座の誕生か。ふと耳を澄ませば、遠くで続く救急車の音、それはこの時代を刻む脈拍の如し。
かくて我らが日常は、無菌室の時計仕掛けと化す。果たしてこの仮面を脱ぐ日は来るのか。それとも仮面こそが新たな顔となるのか。ふと掌を眺むれば、アルコール消毒で荒れたる皮膚のひび割れ、無数の地図模様を描くなり。これが我らの辿るべき未来の地形図か。
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