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生長の家 「今の教え」と「本流復活」を考える/4

2877愛と追憶の日々:2014/11/11(火) 20:09:48 ID:DvLoxxK2
>>2876

 母が倒れてから二ヵ月余りが過ぎ、とうとう退院する日が決まった。結局、私はムックをどうすることもできずにいいた。父の言う通り、保健所へやるしかないのだろうか。
複雑な思いで退院準備を整えた。退院当日は、私が母を来るまで迎えに行くことになっていた。その日の朝、団地を出ようとしたところへ、妹から電話があった。「ムックが夕べから帰ってこない」
妹の話によると、昨夜、夜勤に出る時に、ムックを外に放したということだった。朝、誰も散歩に連れて行けない時、そうしていたのだ。いつもなら朝には必ず戻って来るのに。
私は一瞬嫌な気持ちがしたが、すぐに打ち消した。

「遠くへ行きすぎたか、知らない人について行ったんじゃないの。そのうち帰って来るよ」妹は、責任を感じているようだった。とにかく、私は実家に行って、ムックの帰宅を確認することにした。
実家には、午前十一時くらいに着いた。妹はすでに出勤したらしい。私はまっすぐ犬小屋へ行った。ムックの声がしない。犬小屋にも寝ている姿がない。私はザワザワと胸騒ぎがして、ムックの名を呼ばずにはいられなかった。
私は急いで自転車に乗って、ムックを探しに出た。足がペダルにもつれそうになる。ひざに力を入れ、心の中で祈った。どうか無事に見つかりますように。いつもの散歩コースではなく、私は車の多い国道へ自転車を飛ばした。
しばらく走ると、国道沿いの空地に、犬が横たわっている。私の目に、首輪の赤い色が飛び込んだ。ムックだ。私は自転車から飛び降りて、そばに駆け寄った。

「ムック。何しているの。起きなさい」涙でよく見えないが、まちがいなくムックだ。私は、あたりかまわず大声で泣いた。でもムックは目を閉じたままだった。体を触ると、すでに硬直している。家を出て間もなく、車にはねられたのだろう。
体にはどこも損傷がなかった。本当に眠るように死んでいた。その日の夕方、母は無事退院した。母はムックに会うのを楽しみにしていただけに、うれしいはずの退院も、悲しいものになってしまった。もしかすると、ムックは自分から死を選んだのではないだろうか。
母や私達を困らせまいとして、母が帰宅する前に、自ら命を絶ったのではないかと思う。私の涙をなめてくれた夜、ムックの目は悲しそうだった。
一緒に泣いているようにも見えた。ひそかに何かを決意していたのかもしれない。

 よく考えてみれば、母が倒れたのは、ムックの世話が苦痛だったからではない。
母を手助けしなかった、私や妹に責任があるのだ。皆、自分のことだけに精一杯で、家族のことを思いやるゆとりを無くしていた。少しでも母に心を配っていたら、
こんな大きな病気もしないですんだはずだ。勿論、ムックも生きていたかもしれない。

 ムックは、それを私達に気づかせてくれたのだ。もしかしたら、ムックはそれを使命として、天国から私達のところへやって来たのではないだろうか。
そしてまた天国へ帰ってしまったのだろう。そんな気がしてならない。

   『心に残るとっておきの話』 潮文社編集部


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