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聖典引用 板
783
:
金木犀
:2012/06/03(日) 01:00:16 ID:j28jHRaM
(つづき)
鍵のかかった部屋で
私はある収容所に参りました。この患者さんは、レプラ患者の中でも特に重症で、特別隔離室に鍵をかけて収容されております。その部屋に、鍵をあけて頂いて入らせて頂きました。八年の長い間この患者さんは、親兄弟、親戚すべての人の訪問なく、手紙一通さえ来ることなく、あらゆるものを呪い、恨み、“自分が好きでこんな病気になったのではない。この世の中に神も仏もあるのか”といった暗い悲しい気持ちで暮らしていました。当時、米軍から支給された野戦用の鉄のベッドの上に粗末な毛布をただ一枚敷いただけで、その上に横たわり、本当に、全身の関節という関節は皆曲がり歪んで皮膚は破れて、膿み爛れて、まったくこれ悲惨な状態でございました。
さすがの私も、この姿を見まして、“ああ、地獄というものがあるならばこれが本当の地獄ではないのか”と思いました。私は、その人の名前を呼びまして「○○さん、今日は。今日私がここにお伺いしましたのは、あなたと仲良くしてお話合いがしたいので来たのです」そう言いまして、思わずベッドのそばに近より両手をとりますと、本人はビックリ致しまして、「何をするんだ!!出ていってくれ!!」と怒鳴られました。それも無理からぬことです。八年もの長い間、誰一人として訪なう人のないこの部屋に、突然入って行ったのですから。
「俺は、親も兄弟も、誰一人として来てくれない、手紙一通もくれないのにその俺に、見たことも会ったこともないあんたのような人が、何のために来たのか!!」
そう言って、形相も凄く私の顔を睨みつけておりました。
「○○さん、あなたは八年という長い間どなたが会いに来なくとも、今、あなたの目の前に私が会いに来ておるではありませんか」
と申しますと、じっと私の顔を見つめていらっしゃいました。私は、また、しばらくしてから静かに両手をとって、体を引き寄せ肩を抱いて、耳もとで、
「○○さん、あんたと私とは今日只今から兄弟ですよ。私の方が年上のようだから兄貴、あんたは弟。今から仲の良い兄弟ですよ。兄貴の言うことだから、弟はきいてくれるね……」と、静かに言いました。そして、この素晴らしい生長の家の真理を懇懇と話させて頂きました。聴いているうちにその人は身を震わせておりましたが、たまりかねて、声を出して泣き出してしまわれました。「先生、有難う、有難う」と言って、私にしがみついて来られました。「ああ、よかったね。有難うを言うのは私の方だよ」と、私もともに涙にくれました。
「ああ、よかった。よかった。これでよかったね」
と言って、その日は『甘露の法雨』を一冊置きまして、「そのうちに又来るからね」と言って帰らせてもらいました。(つづく)
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