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聖典引用 板

595金木犀:2012/05/05(土) 03:00:50 ID:wrF1mhWI
五更の残月     田中忠雄先生 (6)

かくて、瓶とは閼伽(浄水)を入れる桶のことで、この桶を閼伽棚に供え置くのである。「おけ」だの「たな」だのという日本語が附着して、これも国際的で奇妙だけれども、意味はよくわかるのでありがたい。

さあ、そこで、原文に帰る。――定より起って双澗に下り、瓶に五更の残月を汲んで帰る。

この結句のなんと美しいことよ。瓶に五更の残月を汲んで帰る。もうそろそろ、ひんがしの野に陽炎(かぎろい)の立つみえて、今汲む閼伽の水は、かたむく月を宿して、神秘な光を放っている。残(のこ)んの月と谷川の水とを一緒に汲んで、わが草の庵(いおり)に帰る。

何か、こう、大智の運ぶ瓶の中に大宇宙の神秘がこもっているような感じである。

蛇足ながら、五更の残月の「五更」は一夜を五つに分けた総称であり、また初更、二更、三更、四更、五更というときは、五つの時刻の中の第五更をいう。これは寅の刻で、今の人のいう午前四時にあたる。

大智禅師は道場の弟子が開枕(就寝)した後、真夜中に長松の下の石上に、しばしば結跏趺坐されたことがこの偈頌でよくわかる。むかしの禅僧は、これを「夜坐(やざ)」と言っていた。夕刻に坐るのも夜坐といったが、真夜中の坐禅も夜坐といった。夜坐して暁に及び、水を残月と共に汲んで、これを仏前に供えたのである。

瓶の中の水は、月と共に仏前にある。また、余った水は月と共に炊いてお粥にして、これを敬っていただくのである。
                        
                       おわり


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