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聖典引用 板
3345
:
志恩
:2017/12/17(日) 15:42:27 ID:6hRUvSRg
田中忠雄先生著「こころの姿勢」よりー
かなり有名なある評論家が、道元禅師の 『永平清規』 をさんざんこきおろしていました。
『永平清規』 というのは、道元禅師が道場における心得を示されたもので、目上の人にたいする心得、
洗面のときの心得、食事のときの心得などをくわしく書いたものです。
この評論家は、それを読んで昔の軍隊を思い出すと言ったのです。
「一つ軍人は信義を重んずべし」 などという 「軍人勅諭」 を思い出し、その先入見に捉われたのでしょう。
彼はそれを軍国主義だのファシズムだのと結びつけてさんざん悪口を言っておりました。
けれども、こういうのは浅はかな考えであって、昔の軍隊でやっておったことを何でもかんでもみな軍国主義だとか
ファシズムとか言うのが、そもそものまちがいであります。
軍隊には秩序が大切ですし、特に規律が大切である。 世界中の軍隊に規律のない軍隊というものはありません。
だからそれを要約した形で、日々の心得を表したものがどの国にもあるわけです。
それを全て軍国主義的だとかファシズム的だとか言うなら、地球上の軍隊で、軍国主義的・ファシズム的でない国は
どこにもないことになってしまうでしょう。
そいう浅はかな自由思想で規律や心得というものに反対するならば、あらゆる共同生活、あらゆる集団生活、あらゆる職場生活は、
ばらばらになって解体することになるでしょう。 国や民族も統一を失ってばらばらになって、やがて衰頽してしまうでしょう。
信仰上の集団ならば、教えのうえから当然でてくるところの心得があり、それによって日常生活の基準にすることがあります。
これが確立されていれば、勝手気侭なことはできないわけで、その力で秩序が保たれるのです。
秩序が保たれるだけでなく、教えそのものが永く受け継がれることになるのであります。
もし 『永平清規』 というものがなかったならば、道元禅師の宗風はとっくに失われ、七百年以上もつづいて今日にまで
伝わることは決してできなかったでしょう。
ですから私は、こういう心得や規律の意味を吟味して 「歴史継承の型」 と呼んでいます。
この 「型」 によって、教えが後世に受継がれる、つまり継承されるのであります。
むろん 「型」 というものは、「型にはまる」 と言われるように、精神を失ってただ形だけのものになる恐れがあります。
それを形式主義というのです。
ですから、常に根本の精神に立ち返って、絶えずその 「型」 に魂を入れてゆかねばなりません。
既成宗教という言葉がありますが、それは長い年月のあいだに偉大な宗祖の精神を失い、ただ形式だけまねているということです。
そういう場合にも、その形式がまだ残っているなら、その形式に含まれた精神をよび戻すことができます。
古来、そういう仕事をした立派な人のことを 「中興の祖」 と呼ぶのであります。
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