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聖典引用 板
299
:
「訊け」管理人
:2012/03/27(火) 16:48:15 ID:Lnhsn5Ng
WEB「榎本恵吾記念館」文書館より謹写――
ある画学生への手紙――
先ず最初に、物質の眼で見れば一ミリの何千分の一の大きさ(の卵)でしかなかったあなたが、自分で美しさを感じ、考え、もっともっと何かを作り出そうとするようにまで生長していることに、とても感動しています。あなたの中に、すべての美しさがあるのです。
景色をもっともっと美しく描(か)き写したいということは、あなたの中に「もっともっとここにあるものに感動したい」という魂の輝きが動いている。景色を写生しようとして立っているあなたそのものが、私には美しい魂の輝きに見えるのです。
あるものに向かって、もっともっと感動したいと思うこと、その思いが出てくるということそのことが尊い。自分の内に動いているその輝きをもっともっと、いつも賞めてほめぬいてやらなければならない。
これから、どれだけのものが描けるかはわかりませんが、内にある輝きが、自分の内に動いたということだけは、厳然とした事実なのです。その尊いものをジッと拝みつづけ、ほめつづけていると、やがてあなたは何かしら充実した喜ばしいものを内に感じはじめ、そしてその時から不思議にも、自分の前にあるものを何か美しいものというか、それがそこにあるということの不思議さというようなものを感じはじめる。それがそこにあるものの生命(いのち)の尊さ、美しさなのであります。対象を写すことによって、新たにそのものの美しさに気がついて行く、ということはたしかにあるが、しかし、まずはじめに何か美しさ不思議さを感ずるということが、内になければならない。それが自然に自分のうちにあるからこそ、外のものを写したいという願いが起こるのです。
“まず”はじめという、“まず”とは、自分がそこに立って生きているということ。そして、感動したいという願い、描きたいという願いが起っていることへの、自己祝福、満足がなければなりません。あなたが対象を写すと同時に、あなたの前にある対象はあなたのその満足、よろこびを写すものであるからです。そして明るいもの、よろこびなるものこそが、一番いのちに近く深いものであります。美しさとは明るさであり、よろこびであるということを忘れないようにしなければなりません。
(つづく)
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