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聖典引用 板

123うのはな:2012/01/16(月) 12:20:47 ID:El6gIMAw
122 つづき

 ベットのそばにゆき顔を近づけますと、両手を伸ばし、あたたかい手で私の顔を挟んで、
「あんたも、やせたね」といわれる。そっと胃のあたりに手を当てますと、父は私の手を
胸の方に移動させて、私の手の上に自分の手をかさねたまま眠ってしまいました。
しばらくして母が入ってきて、父が細く目を開けると、大きな声で私のことを父に聞きました。
「お父様、この人誰だか知っていますか」
すると父は、ふざけたような笑いをふくんだ声で答えるのです。
「天の使いです。天の使、来たりて歌い給う」
又ある時は、そばの椅子に腰かけている私を、ふと目をさました父がチラリと見て、
「恵美子さんが元気そうでうれしい」と寝言のように言って又眠ってしまわれたこともありました。
食事をしなくてもお腹もすかず、父は淡々とした表情の中で、自分にいま何が起りつつあるかをみつめて
いられるようでした。上野さんが一人でお傍にいるとき、父は四月の末頃に書いておいた『生長の家』誌の
「碧巖録」の終講の辞という永い文章を読み返し、「日本教文社か、その関係の人に渡して下さい」
と渡されたと聞いて、その時読ませていただいた。それには皆様へのお別れの御挨拶と、次の境涯で再会できる
ということなどが書いてありました。

 主治医のすすめで点滴を受けられることになったが、食事は一口もとられず、朝の牛乳だけは半分ほど召上っていた
六日目、飲むものもいらない風になりました。
背中を撫でてあげると、寝返りを打ちながら、「もう、お別れかもしれないね」と、やさしい声で、まるで人事のように言われるのです。
 私はその夜、眠れないまま思いました。昆虫はさなぎになる前に、青葉を食べるだけ食べると、ある時期に何も食べなくなってしまう。
そして、さなぎになり、さなぎが蝶になって飛び立とうと、静かに、静かに、自然に自然に羽化するそのとき、決して邪魔をしてはならない。
 私は揚羽蝶が、静かに時間をかけて羽化するのを見たことがある。本当は誰にも見てほしくない。
それはとても神秘な時間に思えました。この世界が神秘な世界であることを忘れてはならない。

 無理に羽化させまいとしたとき、蝶はどうなるであろうか。
やがて、蝶は見事な美しい羽根をのばして、自由な青空に飛び立ってゆきました。
 少しでもよくなられたら、食べられるようになられたら、という人々の願いのままに入院という
ことになったけれども、父は羽化の過程を進めつづけられた。
『甘露の法雨』には次のごとく書かれている。

 汝ら明かに知れ、繭は蚕に非ず、
 然らば肉体は人間に非ずして、人間の繭に過ぎざるなり。
 時来たらば蚕が繭を食い破って羽化登仙するが如く、
 人間もまた肉体の繭を食い破って霊界に昇天せん。
 汝ら決して肉体の死滅をもって人間の死となす勿れ。
 人間は生命なるが故に 常に死を知らず。

 「ほんとうに、ありがとうございました......」
あたたかき御手のうちに、どれだけ多くの人たちが救われたか知れない。
その方たちの想いも込めて、私は合掌し感謝を捧げたのでした。


『生長の火をかざして 永遠の谷口雅春先生』 谷口恵美子 先生


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