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本のブログ(2013年から新規)

1korou:2012/12/31(月) 18:30:01
前の「本」スレッドが
書き込み数1000に近づいて、書き込み不可になる見込みなので
2013年から新規スレッドとします。
(前スレッドの検索が直接使えないのは痛いですが仕方ない)

680korou:2022/06/01(水) 13:33:00
横山源之助「明治富豪史」(現代教養文庫)の前半2篇を読了。

文庫本200ページの中身が、「明治富豪史」「富豪貴族」「海外の人」の三つに分けられていて
「明治富豪史」は本人もとりあえずのまとめとして一気に書かれたものであるのに対して
「富豪貴族」「海外の人」はいろいろな雑誌に書かれた同種の内容をまとめた章立てとなっている。
今回の読書では、「海外の人」は読了せず、他の2篇を読了した。
やはり、現代の財閥系企業につながる大本の話のほうが面白く
移民関係の話は実感が湧かないので。
そして、横山の意図が、富豪の成り立ちの偽善性を暴くものであったとしても
令和の今読むにあたって、そういう社会主義的な視点はなくとも
ただ単純に明治時代の秘められた歴史ということだけで
面白く読めることは否定できないわけである。
なかなか、ここまで詳しく明治初期の富豪の様子を書いた本というのは
ありそうで無いように思う。
期待通りの面白さだった。

681korou:2022/09/03(土) 12:03:41
猪俣勝人・田山力哉「日本映画作家全史(上)」(現代教養文庫)を読了。

トイレ本として読了。
猪俣氏の関係した人物が多数取り上げられていて
そのことは逆に、猪俣氏が
日本映画史上重要な役割を果たした人物であるということの
証しということにもなる。
そして、各人物の略伝に付記される形で書かれた各エピソードが
どれも人間ドラマのように思わるほど面白く
列伝を読む面白さ以上の魅力が付け加わっていた。
ちょっとこれは廃棄できない。永久保存版の本。

682korou:2022/09/04(日) 23:08:08
ロボットマナブ(原案)・大仏見富士(著)「自衛隊入隊日記」(学研プラス)を読了。

必要があって急きょ県立図書館から借りて読んだ本。
借りる前にパラパラとめくった感じで、これは読みやすいはずと判断したが
実際読んでみて、全くストレスなく最後まで一気読みできた。
結構個性的な著者なので、書いてあることが普通にそうなのだろうかという疑問は残るのだが
誰が書いても恐らく細部はそうなるだろうという部分に関しては
とりあえず最低限の描写がしてあるので
実際に実戦部隊として自衛官を志望する人にとっては
これほど有益な本はないかもしれない。
反対に、自衛官志望者以外にとって
どんな意味がある本なのかと言えば
なかなか難しい。
文章が極めて主観的なので、客観的に自衛隊のことを知ろうと思った人には
あまり参考にならないかもしれない。
個人的には、まあ話のタネとして使えるかも、という感じだった。
結局、巷によくある珍しい体験本という部類か。

683korou:2022/09/08(木) 15:02:38
岡田真理「自衛官になるには」(ぺりかん社)を読了。

必要があって読み始めた自衛隊本第2弾。
当面知りたい部分だけ先に読み、それで終わろうかと思ったものの
思い直して、再度、最初から全部読み通した本。
「なるにはBOOKS」をこんな形で読むことになるとは
想像もしなかったが
ある意味、その職業の良い面だけを強調して
闇の部分は抹消してあるともいえるので
高校生対象の推薦本、進路関係本として
本当にこれでいいのかという疑問も残った。
これはロクに読み通していなかった学校司書時代には
意外と見落としていた部分だが
それはともかく
当面の役には立った。
それ以上の感想は出てこない。

684korou:2022/09/12(月) 17:33:06
佐道明広「自衛隊史」(ちくま新書)を部分読み。

どうにも目が痛くなる本なので(活字は普通程度の大きさだが文章が読みにくく目が疲れてしまう)
読了は諦めて、ざっと目を通す程度にした(前半半分は読了したのだが、もう限界)、
自衛隊史としては
1960年代までは政治の思惑に振り回され、むしろ存在感を消すように要請されていたくらいだが
1970年代後半から、米国の衰退、軍事力の低下を背景に、日本の自衛力向上が要請され
1980年代はその押し問答が続き、なんとか日本の経済力と政治家の駆け引きで現状維持を保っていたものの
1990年代になり、例外的な措置を余儀なくされ、自衛隊の存在は曖昧なまま目立つレベルになってきた。
2000年代になり、周辺国からの危機が顕在化し、さらに神戸大震災などの災害等非常事態への対応も大きな任務とされ
2010年代になり、おもに安倍内閣の主導で、自衛力向上のためのプログラムが組まれるようになる。
まあ、そういった以前から何となくそうではないかと思っていた流れを
再確認した本ではある。
細部では知らない事実もいくつかあって参考になったが
そこまで読み込むための代償としては
この激しい眼痛は痛すぎる。
残念だが、他の本で探ってみたいと思う。

685korou:2022/10/01(土) 17:51:02
中川右介「文化復興 1945年」(朝日新書)を読了。

野球のシーズンも終わりかけているので
読書も少しずつ始めなければと思い
”中川本”でまずウォームアップということで
この本からスタート。
ただし、日によって目の疲れがひどいこともあるので
ムリはできない感じだ。

本そのものは、いつもの”中川本”で
安心して読める文章と、かっちりとした資料読み込みで
全く問題なく読めた。
ただし、一次資料を追って叙述するスタイルだけに
こうした特定の地点に絞った著作だと
中川氏の個性がうまく生かせない面も出てくる。
今度は、時系列に沿って推移するスタイルの本を
読もうと思っている。
あと、トイレ本として今現在も読書進行中の「映画作家全史」との関連で
客観的な叙述の中川氏と、あたかも自伝小説のような猪俣氏とで
同一人物ながら全く違った印象の人物評になるところも
興味深かった。

686korou:2022/10/29(土) 11:15:43
中川右介「至高の十代指揮者」(角川ソフィア文庫)を読了。

いつもの中川本。読みやすく、タメになって、読書ストレスフリーの本。
十大指揮者は、ベルリン・フィル常任指揮者(フルヴェン以降)を軸に、世代、国籍について万遍なく選んだ結果らしい。
トスカニーニ、ワルター、フルトヴェングラー、ミュンシュ、ムラヴィンスキー、カラヤン、バーンスタイン、アバド、小沢征爾、ラトル
といった面々で、前半の数名についてはすでに読んだ本の内容と重複することになる(しかしすでに忘れてもいるのでムダな読書ではない)
後半のアバド、小沢、ラトルについては、今回初めてその活躍の詳細を知ることができた。
これ以上の感想はもう書けない。
あとはそれぞれの指揮ぶりを、実際の音響で堪能することになる。

687korou:2022/11/08(火) 17:26:52
小菅宏「異能の男 ジャニ―喜多川」(徳間書店)を読了。

とにかくヒドい日本語、ヒドい文章だった。
こんなレベルで、よくフリーのライターが務まるなあと思った。
最初のページから最後のページまで、まともな文章はほとんどなかった。
意味を理解できるところだけ飛び飛びに読んだというのが実感だ。
意味を理解できる箇所は、ほぼ過去の事実をそのまま書いている部分で
それすら、かなりの部分が意味不明だった。
まして、著者の考えが書いてある部分など
どうやって読解せよと言うのかと言いたいくらいだった。

それでも読了(いや飛ばし読みかな)してしまったのは
ジャニーズに関する解説本が
あまりにも少ないという現実、しかも著者は
少なくとも80年代途中までは伝聞ではなく直接ジャニ―姉弟を取材していた
大手出版社の編集者だったからで
これが違うジャンルの違う著者であれば
最初の10数ページで投げ出していただろう。

著述の中身は、あまりに断片的に読んだので(そう読まざるを得なかった!)
イマイチ頭の中でまとまらない。
すでに整理してあるジャニーズ関係の知識と照合しながら
徐々に理解していくしかない。

キツい読書だ(苦笑)

688korou:2022/11/13(日) 15:30:02
小菅宏「女帝 メリー喜多川」(青志社)を読了。

前著同様、読みにくい本だった。
明らかに著者の文章は下手くそを通り越して
日本語として意味を成していない。
このような著作を出す人が
ジャニーズ関連本の権威と目されているのには
呆れてしまうが
それが現代日本の現状なのだろう。
いかに意味不明な文章が連なっていようとも
その中に挿入されるエピソードの数々は
著者でなければ書けない、他の人は体験すらできない事実なのだから
尊重されてしかるべきなのだが
それにしても、である。
結局のところ、何が書かれていたのか
読み終わった今は
むしろ悪文を通し読みした疲労のほうが勝ってしまい
何も思いつかないのである。
そして、最後には、オリジナル事実も散在しているが
やはり無視しても大丈夫な本かな、という評価になる。
オリジナルにしても
そんなに大したことない話だし。

689korou:2022/11/25(金) 13:54:47
猪俣勝人・田山力哉「日本映画作家全史(下)」(現代教養文庫)を読了。

トイレ本として9月上旬から読み始め、本日読了。
下巻のほうは、田山氏が主に書いているようで
取り上げられた作家たちも
この本の出版時(1978年)においては
中堅どころの人が多く
これからの活躍が期待される人々列伝という趣きである。
そして、最後のほうの数名について
その後の経歴もWikiで調べてみたが
ほとんど活躍できておらず
この本に書かれた仕事以降
映画人としては終わってしまっている状態だった。
それを思えば、物悲しい列伝ということになるが
本そのもののテイストとしては
やはり名著と言えるだろう。
これだけの人々を取り上げて
1冊の本に仕上げる苦労、努力は並大抵でない。
これもうかつに廃棄できない本である。

690korou:2023/02/17(金) 15:40:47
ほぼ3カ月ぶりの読了!
宇佐見陽「大リーグと都市の物語」(平凡社新書)を読了。

2001年発行の新書で、当掲示板がMLB関連の書き込みで潤っていた時期にはもう購入済みで
その時期からずっと、読みかけては途中で断念、途中で止めるを繰り返していた本だ。
ほぼ20年越しでやっと読了できた次第。
決して面白くなくて読み終えることができなかったということではなく
ただ単に偶然により読書が中断しただけだが
まあ、そういうことはよくある。
今回読み終えて、思ったよりも内容が濃かったことと
さすがに20年も経つと内容が古くなるということを痛感した。
2001年時点では、見事な新書と言えるが
やはり現在進行形の出来事を扱っているだけに
それ以後の多くの現在進行形が抜けてしまうのは
当たり前とはいえ、内容の新鮮さにおいて致命的になってしまっている。
あれからMLBは日々変化し、停滞もすれば進展もした。
20世紀のMLBはこの本でかなりの部分を参照できるが
21世紀のMLBも22年経過している。
読む時期を逸したと言わざるを得ない。
でも、不思議なのは、読後にこれは即廃棄かなと思えなかった点だ。
またいつか読み返したい、でもいつ読み返すんだという自問自答。
もう少し時間が経たないと結論は出ない。

691korou:2023/03/10(金) 12:57:11
宮崎勇・田谷禎三「世界経済図説 第四版」(岩波新書)を読了。

トイレ本として読了、前回が9月に読了だから、この本を半年かけて読んだことになる。
思ったより長くかかったが、やはり読みやすいとはいえない内容のせいだっただろうか。
事前に思っていたほどデータが多くなく、むしろ経済学の立場から現代の世界経済を眺めた場合
どのような考え方が最も妥当で一般的なのかを、文章で説明している本といってよい。
共著者の宮崎氏(福田赳夫氏のOBサミットの事務局長でもあった)は
この本の前回の改版(第三版)の直後に亡くなられ
今回の版の著者は田谷氏単独ということになったが
本としての構成、版組みは確立済みなので
単独著者になっても、そこのクオリティに関しては問題ないわけである。
なかなか平和が実現せず、むしろ新しい紛争の火種が増えてきていること、
紛争のない先進国にあっても、経済運営はスムーズでなく、むしろ格差問題が生じていること、
経済の世界一体化が進む一方で、そこでの問題、課題を解決する組織が機能していないこと、
そういったことが語られている本で
ある意味、普段感じていることの総復習のような読書でもあった。
悪くはないのだが、新しい知見に乏しく、魅力ある本とは言い難く
もっとデータ提供に徹したほうが使い手があるのだがと
思ってしまう。

692korou:2023/03/28(火) 17:28:14
池上彰・佐藤優「真説 日本左翼史」(講談社現代新書)を読了。

昨年11月にジャニー姉弟の本を借りて以来、久々に県立図書館の本を借りて読む。
これは、出版された当時に概要を知って、ぜひ読みたいと思った本である。
それから1年半ほど経って、世間的には注目度はぐっと落ちたのか、普通に書棚に並んでいて
続編共々、借りる人が居ないようだったので、それならと思い借りてみた。
自分としても以前よりは日本左翼史への関心は落ちてはいるが
まあ新書ぐらいならと思い読み始めてみたところ
結構その方面の記憶すらあやふやになっていて
小熊英二氏のあの力作を読んでいた時期とは
随分異なっている自分にまず戸惑う。

読後の印象としては
左翼全般について、まさに社会党のシンクタンク組織に属していた佐藤氏の独壇場とも言え
池上氏は、当時の政治状況について優しく解説を加えるにとどまっている。
そして、左翼史とはいいながら
実質、日本共産党と日本社会党の政党史となっており
そのことには違和感はなかったが
佐藤氏が、向坂逸郎とか宮本顕治などを絶賛する姿勢には
違和感を覚えた。
時に滑稽なくらい違和感を露呈するのも佐藤氏の個性ではあるのだが。

さて、しばらく他の本を片付けてから、続編に挑むことになる。

693korou:2023/03/29(水) 20:49:42
読了断念本
平川克美「喪失の戦後史」(東洋経済新報社)

BSプレミアムの特集番組で、戦後日本の60年代の喪失感が気になり
似たような問題意識かもしれないと思い県立図書館で借りた本だが
いつまで経っても、そうしたテーマは現れなかった。
そして、重要なポイントにおける認識の違いも目立ち
ある意味、著者の友人である内田樹氏の文章で感じられる「一流なんだけどうさんくさい」感が
鼻についてきたのも事実。
まあ、それ以前に目的に合ってなかったので読了断念。

694korou:2023/04/13(木) 10:01:08
池上彰・佐藤優「激動 日本左翼史」(講談社現代新書)を読了。

日本左翼史3部作の第2弾。60年安保以後から70年代初頭の新左翼の衰退までが描かれている。
今回は、第1弾では概要だけの解説で佐藤氏の引き立て役に回っていた池上氏が
リアルタイムで新左翼の衰亡を体験した自身の記憶をもとに、大いに語っている
(第1弾だけ読んで池上氏の限界を嗤った書評を見たが何と軽率なことか)。

新左翼の流れは複雑でとらえにくく、この本はその点を出来る限り分かりやすく語ってはいるが
それでも難しい。
あまりにも分派が激しすぎて、結局、若者だけの運動だったので
全体のまとめ役が不在だったのだろう(そして、まとめ役に耳を傾ける気持ちもなさそうだ)。
そして、達成感のない(自称)革命行動に閉塞感を覚え
本来の敵対勢力である国家権力への憎悪のはずが
派内の人間関係のこじれから、内部に敵を見出してしまったのだろう。
新左翼の成れの果ては、内部抗争、凄惨な暴力、殺し合いに行き着き
誰からも支持されない運動に終わってしまった。
始まりは聴くべきものがあった革命思想が、なぜか無意味な内部暴力に終わってしまったのは何故か。
そこにこの本を企画した意義があると、著者両名は語っている。
そのことをもっと掘り下げて分析してほしかったが
考えてみれば、そういう意図のもとに広く大衆向けに書かれた本は
今までになかったのではないかとも思えるので
その意味で本書はもっと読まれるべき類のものだろう。
内容に関しては、特に異論はなく、ためになる新知識が多く
有意義な読書となった。

695korou:2023/04/13(木) 14:16:51
安西巧「歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想」(日経プレミアシリーズ)を読了。

ついつい借りてしまったプロ野球本。その割には面白かった。
前半の「拡大構想」については、読んでから少々間が空いたので
その内容についてほとんど覚えていないのだが
後半の「歴史に学ぶ」部分の記述は
ややこしい球団設立過程について実にコンパクトに分かりやすくまとめていて
知識の整理という面で実に役立つ読書になった。
球団の実質オーナーの変遷について
表面だけをなぞった球史の類は多いが
なぜそうなったかまでをこれほど簡潔に記した本は
滅多にない。

また知識が混乱したとき
この本を頼りに球史を振り返ることにしよう。

696korou:2023/04/25(火) 17:55:48
池上彰・佐藤優「漂流 日本左翼史」(講談社現代新書)を読了。

3部作の最終編で、1970年代の「あさま山荘」での新左翼勢力解体以降から、ウクライナ戦争の現在までを扱っている。
半世紀にも及び長い期間を新書1冊で概説するのだから、当然ながら駆け足で重大な事項のみを取り上げるスタイルになってしまうのは
当然と言えば当然だが、逆に考えれば、新書1冊分で済む程度の内容しかない「日本左翼史」だったとも言える。
ただただ衰退していき漂流しながら迷走していく「日本の左翼」。
最初は労働運動が目立ち、それからソ連の低迷、暴走を受ける形で社会党が変貌し(結局、衰退し)、ソ連の解体を受けて完全に左翼としての
アイデンティティを喪失した結果、今や”リベラル”と同義語となってしまうほど意味不明な言葉になってしまった「左翼」。
その経過が、著者二人の博学により語られている。
この本も、新知識満載でタメになった。
本来なら3冊とも購入して、何回も読み返したいところだが
残念ながらこの本の知識を活用するような場面もないだろうから
今の自分としては、読んでいるときの知的高揚感だけで満足するしかないのが
残念といえば残念。

697korou:2023/05/09(火) 21:37:21
半藤一利・池上彰「令和を生きる」(幻冬舎新書)を読了。

気軽に読める本として県立図書館で借りた本。
確かにスラスラ読める対話本だったが、後半から次第に半藤氏の独断が鼻についてきて
読後感はそれほど爽快ではなかったのも事実。
前半は、平成の最初の方の出来事を振り返る内容だったので
自分でも忘れていたことが多くあり、いい復習になったのだが・・・

半藤氏について悪く言えるわけもない。
でも、生涯の最後はこういう風にもなるという教訓かもしれない。
根拠が薄く、思い込みに近い主張が、決して控え目でなく強く出てきている。
池上氏はその点でまだそこまで老け込んでいないので
いつもの冷静な解説でわかりやすさも健在だが
それでも半藤氏に合わせたかのように
強引な論理の展開も垣間見え
池上さんは本当にそう思っているのだろうか、という疑念も湧く。

ということで
後半はかなり読み通すことに疲れてしまった。
まあ、そんなわけで
読後に「令和を生きる」知恵が増したかと言われれば
必ずしもそうではなく、むしろ碩学お二人の強引さに困惑したというのが
正直なところ。

698korou:2023/06/06(火) 16:18:08
中川右介「社長たちの映画史」(日本実業出版社)を読了。

久々に視力のこともある程度犠牲にして、しゃかりきに読んだ。そして、予想通り面白い本だった。
ある程度は、今までの映画関連本で既知としている史実だったが
自分の頭の中では、それらが整然と並んでいなくて、極端に言えば断片的な知識でしかなかったので
こうして一気に史実の絡み合いがほどかれ、人物の関わり合いが明快に示されると
本当の意味での知的興奮を覚え、知的爽快感に満たされる。

やはり、後半の昭和戦後編ともいうべき箇所(1945年ー1971年)に惹かれた。
昭和20年代には新興産業として創造意欲に燃えていた各社の経営陣が
昭和30年代後半に主にテレビ産業の躍進に負け始めたときに
的確な判断が全くできなかったという史実が何とも歯がゆく、空しい思いになる。
そして、そこから脱皮しようとして個人プロを立ち上げた三船敏郎、石原裕次郎たちの思いが
全く実を結ばず、最終的に悲劇的な結末を遂げるわけだが
その純粋な思いが胸を打つとともに、さすがにその純粋さだけではどうにもならないだろうと
誰もが思うわけで、なぜ誰も助けなかったのだろうという残念さが残る。
(「黒部の太陽」のときの関西電力だけは例外だったが・・・)
石原慎太郎という人について、少なくともこの面からみれば、大した人だと言わざるを得ない。
嫌いな佇まいの人だが、そこは認めざるを得ないだろう。

読んでいて、あまりに参考になるので、いっそのこと購入しようかと思ったくらいだが(分厚い本なのに税抜き二千円という安さ!)
もう少し留保することにした。

さて,次の中川本も読みたくなってきたぞ。

699korou:2023/06/20(火) 13:50:51
中川右介「アニメ大国建国紀 1963-1973」(イースト・プレス)を読了。

マンガならともかくアニメはちょっと、と思いながら借りてきた本だが
そんな懸念は無用だった。
中川氏は自分と同世代なので、マンガをベースに記述しながらアニメの歴史を記述していた。
そして、1964年から数年間は、自分もマンガをそこそこ熱心に読んでいた時期なので
書いてある内容に懐かしさとか、知らなかった事実への驚きが次々と溢れ出て
これほど楽しい、そして面白い読書になるとは、想像以上だった。

最後のページで、宮崎駿が手塚治虫について批判的な感想を述べた部分の引用があるが
これこそ、この本を読了した時点で、実に納得できる話であり
かつ、宮崎氏の感想は個人的なそれでしかないというのも納得できるのである。
やはり手塚治虫のまっすぐな思いが、人を動かし、時代を動かし
逆にそのまっすぐで妥協のない姿勢のせいで、人が離れて、時代からも縁遠い存在になっていった経緯が
多数の関連人物の動きとあわさって描かれている本である。
もう少し前の時期であれば、関係者への取材が可能であったに違いないし
これほど関係者の証言が食い違ったり、無言を貫いていたりして、曖昧な部分の多い日本アニメ黎明期の歴史について
直接取材は不可避だったはずだが、
それが可能であった時代には、誰もその作業に従事しなかった。
ゆえに、こういう形でしか、日本アニメ史は語れないのが残念でもあるが
それを成し遂げた中川氏の仕事は偉大であり不滅である。
今や日本が世界に誇れるものはこの分野ぐらいしかないのだから
ある意味、今の日本国民にとって必読書と言ってよいかもしれない。
またしても中川マジックに陶酔させられた。幸福な二週間だった。

700korou:2023/06/20(火) 13:55:00
早川隆「日本の上流社会と閨閥」(角川書店)を読了(トイレ本)。

今年3月から今日までかけて、読み続けた(眺め続けた)トイレ本。
1980年代前半に購入して以来、どれほどこの本を参照し続けてきたか分からないほど身近な本なので
今さら通読など想定もしていなかったが
適当なトイレ本がないので、読み始めることにした。
本当にイメージ通りピッタリのトイレ本だった。
本の内容については今更なので省略。

明日からどうしよう。
適当なトイレ本がないが、何か探さねば。

701korou:2023/07/21(金) 16:26:41
中川右介「プロ野球『経営』全史」(日本実業出版社)を読了。

県立図書館に直接リクエストして購入してもらった本で
読み始めてすぐに、リクエストしたかいがあったと実感できた本である。
これほど面白い観点で書かれたプロ野球の本は、かつてなかったと断言できる。
断片的に特定の視点、特定の球団に限定した形なら
いくつかあったかもしれないが
日本のプロ野球の歴史全体を「経営」の視点で書き綴った本というのは
かつて記憶がなく
そして、それはこれからの”あるべき経営の形”を示唆することにもなっている。

とにかく、あらゆる人物が登場し
それらの人物についてのミニ評伝、ミニ伝記も逐一書かれている。
日本で野球がプロ興行として成立し発展していく過程で
いかに多くの人物がそこに関わってきたかということがよく分かる。
正力松太郎が中心になって成立させ発展させてきたという”偽りの正史”は、
この本によって完全に化けの皮がはがされたといってもよい。
しかし、そのことは逆の意味において
この世界(NPB)において
真の意味におけるリーダーシップを発揮した人物が
過去に居なかったということの証明でもあり
そのことが現在のNPBを閉塞した状況に追い込んでいるということでもあるような気がする。
そう思えば、この本が出版された意義は
さらに大きく思えてくるのである。

702korou:2023/08/21(月) 16:14:03
中川右介「世襲」(幻冬舎新書)を読了。

政治家、自動車・鉄道事業の企業家、歌舞伎の名家について
それぞれの世界での世襲の実例を示しつつ
実際のところ、近代日本政治史、近代日本産業史、江戸時代以来の歌舞伎史について
コンパクトに知ることができる本にもなっているというスグレモノ。
他の本でこれほど詳しく書かれているものはないのではないかと思われる。
この種の本を読み続けている者として
これほど嬉しい読書体験はない。

政治史に関しては
どのような経緯で権力者たちが権力を得ていったのかが
こうしたフィルターで記述されることによって
意外なほどハッキリ見えてくる。
企業史に関しては
そもそもここまでコンパクトかつ詳しく書かれた自動車産業史、鉄道事業史の記述は
他の本では見たことがない。
歌舞伎史は、江戸時代の世襲について詳しく書かれていて
これも明治以降に偏りがちな類書と比べて優れているといえよう。

さらに、あとがきでサラッと書いているが
これは「天皇史」へのオマージュでもあるだろう。
ハッキリと”天皇家の世襲は望ましくない”と書いたりすると
不要な雑音、揉め事に巻き込まれる恐れがあるので
今回の著作では意図的に外しているように思えた。
しかし、著者の結論としては、そのように読める。
まさに、これこそこの本を書いた最大の動機なのだろうと思ったりする。

なんとか返却期限までに読めた、一安心(読み辛くて読破に時間がかかったのではなく、たまたま)

703korou:2023/08/22(火) 17:33:18
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 女優篇」(社会思想社<現代教養文庫>)を読了。

トイレ本として読了。
前回の閨閥本読了の後、何をトイレ本にしようか迷った末
このシリーズの「俳優篇」に目をつけ、まず女優篇から読むことにしたのだが
これは大当たりだった。
適度に知らない部分があり、ほどほど知っている部分もあり
活字の大きさも適当、叙述の平易さも妥当ということで
今回の女優篇の次は、当然ながら男優篇ということになる。
その次は男女優込みの現代篇、
それが終わったら日本の俳優に移る。

内容については省略。
意外と、著者たちが個人的な思い出を語っているのには驚いたが(今はこのたぐいの叙述は出版しにくいだろう)
まあ、猪俣氏にしても田山氏にしても、今までずっとその叙述に触れてきていて大体の嗜好などは承知できているので
特に問題はなかった。

さて、トイレ本、次回からは男優篇だ。

704korou:2023/09/09(土) 15:15:42
本多圭「ジャニーズ帝国崩壊」(鹿砦社)を読了。

ジャニーズ事務所の”悪業”が注目されているこの時期
かつて購入して一度読了もしているはずのこの本を
再読してみた。
思ったよりも中身が濃くて面白い本であることを再確認。

いろいろあって、なかなか要点を絞るのは難しいが
やはり、藤嶋泰輔というメリー喜多川にとってのパトロンの存在がユニークで
そこから最終的に勝共連合に資金が流れていく過程が
一般には語られていない部分で興味深かった。
喜多川姉弟というのは、あまりにも純粋で視野が狭く
そこを藤嶋がつついて好きなように資金を使っていたという構図が
みてとれる(証拠も何もないが、それこそ藤嶋の悪賢さだろう)。

そこから小杉理宇造、白波瀬傑といった小悪人に”悪業”が受け継がれ
さらに表面上は喜多川メリー、ジュリー親子に批判が集中する構図になっていく。
ジャニ―喜多川は、自らの悪業を自らのカリスマ性で帳消しにするという稀な人物だったが
亡くなってしまうと、その悪業を弁護する要素も消えてしまった。
そして、メリー亡きあと、ジュリーが一手に背負うには重すぎたジャニーズ事務所の負の遺産は
海外からの指摘で、一番わかりやすい性的犯罪行為により
その正体を浮き彫りにされたのだろうと思う。

つまり最初の悪業ともいえる労働搾取による統一教会への献金という行為は
もはやどこかにいってしまっているのだ。
そんなことを読後に思った。

705korou:2023/09/10(日) 16:38:34
木村元彦「江藤慎一とその時代」(ぴあ)を読了。

県立図書館で借りた本で
借りる前から、すぐに読了してしまうだろうなという予感があったが
その通りに一気読みで終わった。

叙述スタイルは
一次資料を駆使して二次資料を構築するという”中川右介”スタイルではなく
オーソドックスに関係者にインタビューを重ねて事実関係を掘り下げていくものである。
それだけに話は時として脇道にそれたり、関係なさそうな部分も出てくるが
やはり、まだ当事者に事実を確認できるテーマについては
このスタイルのノンフィクションは貴重であり、かつ欠かせないものだろう。

もともと江藤という打者に思い入れがある上に
こうした貴重な情報も満載だったので
実に面白く読めた。
水原茂という人のとらえ方も
また人間というものの不可思議さの典型のように思え
それに比べて、一昔前の野球人に時としてみられる傲慢さ、理不尽さは
あまりに人として浅く不誠実で、実に腹立たしく思えてくる。

大きな活字で200ページ程度の小著であるが
中身の詰まった好著だった。

706korou:2023/09/16(土) 17:06:43
西崎伸彦「海峡を越えた怪物」(小学館)を読了。

これも県立図書館で借りた本。ロッテ創業者の重光武雄についての評伝である。
読み終わった直後の印象としては
週刊誌の連載記事をまとめた本ということで
世間一般の評価よりも厳しい人物評となっており
それは登場人物全般においてそのようになっている。
例えば、次男で会社全般を引き継いだ立場の重光昭夫について
普通なら、不振のロッテ球団を立て直した仕事のできるオーナーという評価だと思うが
この本では大したこともできなかったダメな管理者という評価となっているし
また、この本のほぼ最後のほうまでは
一流の経営者の扱いだった武雄本人の評価にしても
最後の章(これは週刊誌連載の後、今回の出版に際して追記された章)では
2000年代に入ってからのいろいろなつまずき、お家騒動について
容赦ない指摘で、一気に評価を下げているのも
ある意味奇異な印象を受けた。
やはり、最も活躍していた時代から半世紀近く過ぎて
関係者から直接の証言を得ることが困難になっているので
どうしても過去の業績については
限定されたものしか出てこないというのが大きい、
それに対して、最近の出来事については
あらゆる情報が飛び交い
どうしても負の側面が隠し切れないという面もあるだろう。
現代の著名人の伝記ではよくあることだが
秘密主義のロッテという企業に関しては
そうした面がさらに大きく出てしまったという感が強い。
まあ、伝記として、この時期に書かれたものとしては(ほぼ2000年前後に書かれた連載だが)
よく出来たほうだとは思うのだが。

707korou:2023/10/24(火) 13:55:08
井沢元彦「日本史集中講義 1〜3(大活字本)」(大活字)を読了。

1・2は、先々週の金曜日(電気工事で停電・断水の日)に、図書館内で読了。
時間の関係で、3だけを借りて帰り、しばらく目を休めるために(結婚式を控えて健康管理)そのままにしておいて
やっと昨日一気に読了した。

副題で「点と点が線になる」と書いてあるが
まさに、そういう歴史の流れを重視した日本史の通史本だった。
もっとも、事細かく事件・出来事を記述する教科書のような本ではなく
歴史の流れだけを書いている本なので
すでに通史についてある程度理解している人でないと
この本を読み通しても無意味だろう。

近現代で、突然個人攻撃が始まったのには驚いた。
藤原彰という、さほど有名でもない歴史学者(井沢氏は歴史学の大家と評していて、こういう人が第一人者であることが許せないらしいが)を
これほど攻撃しなくても、普通に書いていれば納得するのに
ここだけは違和感ありありだ。
その勢いで、次々と指摘が続き、それらは重要な論点であるので、
今までの経緯、反対意見の論拠、自分の意見の論拠などを示す必要があると思うのだが
なぜか近現代編だけは、読みようによっては独断の連続のようにもとれる。
参考になる歴史観も多いのだが、近現代だけは独特だなと
思わざるを得なかった。
まあ、全体として良書だとは思うのだが・・・

708korou:2023/10/27(金) 14:30:37
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 男優篇」(社会思想社<現代教養文庫>)を読了。

トイレ本として、約2か月読み続けた本。
前回の女優篇と同様、
一昔前のこうした本では普通だった(でも今ではなかなか許されない)著者である猪俣・田山両氏ともに
主観丸出しの叙述で
自分には非常に面白く読めた。
特に田山氏については、自分の青春の想い出をふりかえるような叙述ばかりで
でもこういうのが本当の映画ファンだよなと思いながら読み進めた。

古い時代については知らない俳優ばかりで
でも、これで少しは目印がついたので
その時代の映画を観る際には
以前よりは興味深く視聴できるのではないか
という気がする。

さて、次は「現代篇」だ。これも楽しみ。

709korou:2023/11/09(木) 21:46:46
川島卓也「ユニオンズ戦記」(彩流社)を読了。

久々にボリュームのある本に食らいついた感じだった。
高橋ユニオンズのことが書いてあるはずと思って図書館で借りたのだが
最初は読めども読めども高橋ユニオンズの話が出てこず
もっぱら毎日新聞の大阪での夕刊発行のダミーとして設立された「新大阪」のことばかり書いてあり
なかなかユニークな本だと思った。
小谷正一、足立巻一、黒崎貞治郎といった人たちの群像劇が延々と描かれ
それはそれでかなり面白い読み物になっていたので
とりあえずは退屈せずに読み進めることができた。

黒崎貞治郎は毎日球団の関係者なので
なるほどと思い読んでいくと
予想通り、昭和20年代半ばの頃の激動のNPBの歴史が
独特のタッチで掘り起こされていく。
このあたりも独自の視点で書かれていて、なかなか参考にもなる。

そして、この本の後半は
高橋ユニオンズの戦いぶりを当時の新聞記事などで再現したかのごとく
なんと全試合の概要が延々と書かれているのだから驚く。
ハッキリ言って、途中で飽きてしまうほどの単調さなのだが
これも著者のユニオンズ愛というべきか。
まあ、これはこれなりに日本プロ野球史の貴重な記録ともいえる。

続編も予定されているらしい(そもそも昭和29年で終わっているし)
自分のような独特の野球ファンにとっては
こたえられない「ヘンな野球本」であることは確かである。

710korou:2023/11/11(土) 15:40:00
岸宣仁「事務次官という謎」(中公新書ラクレ)を読了。

本のタイトルと違った点が2つ。
①事務次官という言葉を使いながら、記述の大半が財務省(大蔵省)の次官に偏っていること
②事務次官についてのあるべき未来像を語る後半において、その記述はむしろ公務員制度の改革に偏っていること
こうした偏りはあったが、全体としては面白く読めた。
それは、当方が勝手知ったる公務員のことなので、
特に著者が取材した官僚の談話などから
言葉の背後から伝わってくるものが
実感をもって迫ってくるからなのだろう。

幹部級のエリート官僚だけは
独自の選抜制度にすべきというのが
現時点のベターな正解なのだろう。
その第一歩としてなら「内閣人事局」の創設・運用というのもアリだろうが
やはり、これからの日本においては
無理やりでも国家の目標を仮説の形で言語化して
その仮説に沿った各省の目標を定め
その目標を数年単位で具体化した上で
幹部官僚の職務を明確にする、そしてその職務に最適の人材を公募するという
新しい公務員制度を検討しなければならないだろう。
一気に改革できない今の日本だが
せめて事務次官だけでも、それからごく少数の幹部職員だけでも、
そして、公募と内部昇格の2本立てで運用というのが
現実的だと思える。

そんなこんないろいろなことを考えさせられる好著だった。

711korou:2023/11/14(火) 20:44:03
二宮清純「証言 昭和平成プロ野球」(廣済堂新書)を読了。

多分すぐ読めるだろうと思って借りた本で、実際すぐ読めた。
その割には、中身は予想以上に詰まっていて
今まではつまらない本が多かった二宮氏への認識を
改める結果となった。

二宮氏は、還暦となったこともあり
これからは古い時代の出来事を関係者から「オーラルヒストリー」を重ねて
未来の世代に残していく仕事を中心にしたいと
この本の”まえがき”で書いている。
二宮氏なら、そういう仕事は適任だし
いい方向に進んでもらったと
応援したい気持ちになった。

今回は、杉下茂、金田留広、城之内邦雄、柴田勲、佐々木信也、長谷部稔、古葉竹識、大下剛史、安仁屋宗八、田淵幸一、鈴木康友の
11名への「オーラルヒストリー」だった。
なかには、取材時からまもなく死去された方も居られるので
生前に話を聞けてよかったと思うのである。
話があまりに多方面に広がっているので(新書サイズとはいえ)
具体的なことはすぐには思い出せないのだが
なかなか面白く読めた本だった。

712korou:2023/11/21(火) 09:50:45
連城三紀彦「悲体」(幻戯書房)を読了。

何か小説の文体についてヒントを得たいと思い
畏敬する作家である連城氏の小説を借りた、というシンプルな動機。
しかし、もはやそのようなことはどうでもよくなり
世間一般では評価の低い小説というのに
自分としては無我夢中で読み進めることになった。
小説をこんなに一気に読んでしまうことなど
もう我が人生ではないだろうと思っていたのだが。
何年ぶりのことなのか、少なくとも退職後は初めてのはず。

何が凄いかといって
これほど細かく丁寧に人間描写ができて
しかも文章が洗練されているので
全く読みづらくないということ。
活字を追う疲れなど全然感じない反面
あまりに情景がリアルに迫ってくるので
(フィクションとはいえ)そういう体験を繰り返し味わうことへの疲れで
本を閉じたくなってしまうのである。
こんな作家は他にはいない。

また連城氏が紡ぐ物語を読みたくなってきた。
「恋文」などが良さそうだな。

713korou:2023/11/28(火) 21:50:25
笹山敬輔「興行師列伝」(新潮新書)を読了。

目次を見ての第一印象は
ありきたりな本だなということ。
興行師として、守田勘彌は面白いとしても
その後の大谷竹次郎、吉本せい、永田雅一、小林一三という章立ては
あまりに普通すぎると思ったのである。
しかし・・・読み始めてすぐに
この著者は出来る人だと感じた。
説明するのに苦労するような複雑な状況を
簡潔で分かりやすく書ける才能のある人である。
そして、各事件、事案についての簡潔なまとめについても
概ね妥当な、常識のある大人の意見と思われ
安心して読めるのだ。

ということで
すっかりこの著者のファンになってしまった。
今回の著作にしても
今まで知っていたことも多くあったとはいえ
それについて記憶があやふやになっていたところを
明瞭な形で再復習できたし
また同じ著者の別の著作を読みたくなってきた。

良い本にめぐりあうことは年に数回はあるのだが
良い著者にめぐりあうことは稀である。
今回はその稀な幸運に出会った感じだ。

714korou:2023/12/02(土) 10:37:13
竹中功「吉本興業史」(角川新書)を読了。

吉本興業の社員として数々の功績を残した著者だが、2015年に退職。
改めて外から吉本を眺める機会を得た。
その上で、いろいろな感慨、反省も含めつつ
私家版「吉本の歴史」としてまとめた本ということになる。
著者は、吉本興業の正史である「105年史」にも
社員時代にいくらか関わっており
それと対比させる意味もあったようだ。
その意味で、冒頭から
闇社会との関わりを延々と書き連ねて
なかなかの心意気を見せたわけだが
読み終わってみると
やはり全般として「手ぬるい」印象は拭えない。
もっとも、元社員としては、これが「手一杯」かもしれないが。

社史としてみれば
私家版ということで客観的な視点など期待すべくもない。
ただし、何もかも自慢するような嫌な感じもなく
そのあたりは巧く書けていると思った。
そして、エピソードの数々には
私家版ならではの「もう一つの真実味」が感じられ
全体としては好著といえる。
でも、まだまだネタはあるはず、
この著者にはもっと書いてほしいと思う。

715korou:2023/12/04(月) 21:09:13
(未読)連城三紀彦「恋文」<短編集まるまる1冊読了ではないが5作中2作を読んだ>

連城氏が1984年に直木賞を受賞した表題作と、「紅き唇」の2作を(大活字本で)読んだ。
いずれにせよ、とにかく作品世界が濃ゆい。
人間臭さ全開で、よくよく考えたら
自分が一番苦手な世界なのではないか?
文章が巧すぎて、ついつい手を出してしまうのだが
最初はその巧さに感嘆しながら
いつしか読み進めるのがしんどくなり
ついに投げ出してしまうというパターンが見えてきた。
前に読んだ「悲体」は、その点であっさり味もあって完読できたが
今回はさすがに濃ゆい、濃ゆい!
もうムリということで、残り3作品はパスすることにした。

連城氏の小説は
今のところ、ほぼ私小説の変型だ。
違うテイストがあれば
文章の達人だけに読みたいのだが
多分、どの小説にも濃ゆい人間関係が描き込まれているのではないか。

716korou:2023/12/14(木) 16:24:35
笹山敬輔「ドリフターズとその時代」(文春新書)を読了。

最近発見した久々の名文章家、笹山さん。その最新作。
期待通りの面白さだったし
最後の最後で、志村けんがなぜ喜劇王なのかということに触れ
それは著者のライフワーク(演劇史)と重なることによって
この本を書いた動機も明確になるという見事な結末となった。
何よりも、著者の”ドリフターズ愛”が心地よい。
また、そうした書いている対象への敬愛がなければ
ここまで深く書き表せないだろう。
自分は
(リアルタイムなのに)ドリフターズについては何の思い入れもないので
ここまで思い入れることのできる著者を
羨ましくも思うし
逆に今回初めていろいろな事実を教えられた。
特に、志村けんについては認識を改めることが多かった。

皆、昭和を生きた人間だと痛切に思うのである。
昭和という時代のいろいろな要素が
彼らの活動には詰まっている。
だから、こうして言葉の力で
その時代の顛末を振り返る必要があるのだと思う。
その意味では、書かれるべき時期に
書かれるべき著者によって書かれた
実にタイムリーな著作になっている。
文字通りの「佳書」だ。

717korou:2023/12/15(金) 12:15:22
大脇利雄「フェレンツ・フリッチャイ」(アルファベータブックス)を読了。

この本の出版元であるアルファベータブックスという会社が
近年数多くのクラシック音楽家の本を出している
貴重な出版社であることが分かり
さらに、中川右介氏が創業した出版社であることを知って
そのことも驚きの一つ。
フリッチャイのような必ずしも絶大な人気を誇っているわけではない指揮者について
さらに専門家でなく、その指揮者のファンであるという一般人の著作を
こうして企画し出版する心意気には
敬意を表さざるを得ない。

そうして出来上がったこの本は
中身も素晴らしく
さすがに長年のファン(フリッチャイのサイトの運営者でもある)だけのことはある。
知りたいことはほぼ書き尽くされていて
逆にこれ以上のことは推測でしか分からないだろうと思われる。
フリッチャイの命を奪った病名は
一般に言われる白血病とは断定できず
むしろ悪性リンパ腫と考えたほうが辻褄が合うという最後のコラムなどは
従来の見解を覆すものであり
こうした研究成果は広く知られるべきだろう。

まあ、フリッチャイに興味ない、そもそも知らないという人には
何の価値もない本ということになる。
伝記だから仕方ないけど。

718korou:2023/12/28(木) 17:50:24
笹山敬輔「昭和芸人 七人の最期」(文春文庫)を読了。

またまた笹山氏の著作をゲット、県立図書館の書庫から出してもらって借りた本。
七人の昭和芸人とは、エノケン、ロッパ、エンタツ、石田一松、シミキン、金語楼、トニー谷のこと。

個人的には
金語楼とトニー谷の晩年のテレビでの姿しか判らないわけだが
一般的にも、この本が出版された時点(文庫書下ろしで2016年刊行)で
これらの芸人のことを事細かく書けるほどリアルタイムで観ていた人は
皆無ではないかと思う。
その意味で、まさに
二次資料を駆使して見事な文章を組み立てる笹山氏の面目躍如たる本なのである。

「最期」とはいえ、きっちりとその生きざま、活躍の概要が簡潔にまとめられていて
そもそもがあまり詳しい生涯が語られなくなった人たちばかりなので
それだけでも貴重なのである。
もっと他にもいろいろと書いてほしいと
切に願うばかり、それ以上のことはない。
見事な複数伝記本。

719korou:2023/12/29(金) 10:29:20
田山力哉「世界映画俳優全史 現代篇」(社会思想社)を読了。

トイレ本として読了。
いまはなき社会思想社の映画シリーズとしてほぼ最新版といえるが
現代篇と銘打ちながら1984年頃までの映画俳優について語っているわけで
今となってはレトロ編といえるだろう。
メリル・ストリープ、トム・クルーズなど
2023年の現在でも大活躍を続けている例もあるが
その大半は80年代もしくは90年代の活躍で終わっていて
なかには何で取り上げているんだろうと疑問な人選も
ないではないが
個人の著作なのである程度の偏りは免れないところ。
そして、田山氏ならではの仏映画偏愛の傾向は
この著作でも顕著で
女優偏愛の傾向も全然改められていないのは
もはやご愛嬌という他ない。
そういう独断と偏見も
この方の著作の大きな魅力といえる。

さて、次は何を読もうか。

720korou:2023/12/29(金) 10:40:45
(2023年読了本① 1月〜9月)
(1月)
ナシ
(2月)
宇佐見陽「大リーグと都市の物語」(平凡社新書)
(3月)
宮崎勇・田谷禎三「世界経済図説 第四版」(岩波新書)
池上彰・佐藤優「真説 日本左翼史」(講談社現代新書)
(4月)
池上彰・佐藤優「激動 日本左翼史」(講談社現代新書)
安西巧「歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想」(日経プレミアシリーズ)
池上彰・佐藤優「漂流 日本左翼史」(講談社現代新書)
(5月)
半藤一利・池上彰「令和を生きる」(幻冬舎新書)
(6月)
中川右介「社長たちの映画史」(日本実業出版社)
中川右介「アニメ大国建国紀 1963-1973」(イースト・プレス)
早川隆「日本の上流社会と閨閥」(角川書店)
(7月)
中川右介「プロ野球『経営』全史」(日本実業出版社)
(8月)
中川右介「世襲」(幻冬舎新書)
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 女優篇」(社会思想社)
(9月)
本多圭「ジャニーズ帝国崩壊」(鹿砦社)
木村元彦「江藤慎一とその時代」(ぴあ)
西崎伸彦「海峡を越えた怪物」(小学館)

721korou:2023/12/29(金) 10:42:10
(2023年読了本② 10月〜12月)
(10月)
井沢元彦「日本史集中講義 1〜3(大活字本)」(大活字)
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 男優篇」(社会思想社)
(11月)
川島卓也「ユニオンズ戦記」(彩流社)
岸宣仁「事務次官という謎」(中公新書ラクレ)
二宮清純「証言 昭和平成プロ野球」(廣済堂新書)
連城三紀彦「悲体」(幻戯書房)
笹山敬輔「興行師列伝」(新潮新書)
(12月)
竹中功「吉本興業史」(角川新書)
笹山敬輔「ドリフターズとその時代」(文春新書)
大脇利雄「フェレンツ・フリッチャイ」(アルファベータブックス)
笹山敬輔「昭和芸人 七人の最期」(文春文庫)
田山力哉「世界映画俳優全史 現代篇」(社会思想社)

<計28冊>

722korou:2024/01/03(水) 15:02:05
ルーベルト・シェトレ「指揮台の神々」(音楽之友社)を読了。

ユンク君サイトで話題になっていたので
県立図書館の書庫からリクエストして借りた本。
苦手の翻訳ものだったが意外と読みやすく
450pを超す分厚い本ながら短期間で読み終えることができた。

ハンス・フォン・ビューローから始まる指揮者列伝で
普通なら次はニキシュになりがちなところを
ハンス・リヒターをその間に挟むところが
いかにも分かってらっしゃるというセンスを感じる。
ニキシュの後にマーラーというのもさすがだし
そこでやっとトスカニーニの登場と相成る。
以下、ワルター、クレンペラー、フルトヴェングラー、クナと続き
さらにベーム、カラヤン、バーンスタインという流れ。
最後にラトルへのインタビューとなっている、
叙述は妙にバランスを崩してまでは詳しくもなく
かといって押さえるべきところはきちんと押さえてあって
なかなか信頼に足るバイオグラフィーだと感じた。

特に、ビューロー、リヒター、ニキシュ、マーラーあたりは
詳しい生涯を知るところが無かったので
新鮮でタメになった。
いい感じの佳著である。

723korou:2024/01/15(月) 16:44:57
ベン・リンドバーグ&トラヴィス・ソーチック「アメリカン・ベースボール革命」(化学同人)を再読。

2回目の読書となる本書。前回は、次に予約が入ってしまい、500p近いこの大著を大急ぎで読む羽目に陥ったのだが、今回は
年末年始の貸出期間長期となる期間を利用して、さらに2週間の貸出延長もかけて、じっくりと読むことができた。
前回は、最初に読んだ衝撃ということもあり、この本に書かれたいろいろなMLBでの変化について、初めて知った喜びが強すぎた
かもしれない。今回は割と冷静に読むことができ、こうしたMLB内での「革命」を過大にも過少にも評価できるようになったよう
な気がする。

この「革命」の最大の利点は、超一流選手は才能、という従来の決定論のような思考を覆して、一流に近い才能さえあれば、より科学的
にベースボールを追求することによって、誰でも超一流選手になれるということが実際に証明されたことである。超一流選手が増えれば
それは間違いなく野球界全体のレベルアップにつながり、今まで見たことのない新しい世界が開かれるはずだ。

一方、この「革命」は、野球のアスリートとしての側面だけを一気に改善する流れなので、野球そのものの競技としての側面には一切
関係なくなっていく。イチローはそれが言いたかったのだろう。でも、競技としての野球のレベルアップは、今のMLBだとかなり
難しいのではないか。より優れたアスリートになろうとする努力は、おそらくMLBレベルにまで達した選手であれば、ほぼ全員が
その方向により良くなろうとするだろうが、野球という競技のなかで頭脳を発揮する方向により努力しようとする選手は、どうしても
限られてくるのではないだろうか。残念ながら、近代スポーツはどうしてもその方向に発展しがちだ。それは他の競技でもそうなのだ。

また、こうした努力が、結局若い選手の早期育成につながることによって、その反作用として高年俸の選手の排除につながり、選手に
とっていいことばかりではなくなり、一方的に球団の財務が潤うだけという批判もある。その一方で、この流れが定着すれば、高年俸の
選手であってもまだまだ進化していくということでもあり、この点はまだ進行中の事実ということで結論には至っていない。
そして、そうした努力の最先端にいたアストロズの球団ぐるみの不正行為は、いかなる努力でもある程度の良識抜きだと皆が納得する
「革命」にはなり得ないということを明らかにしている。少なくとも野球界の外部では、厳しいコンプライアンスが要求されている現在
において、結果だけを追い求める姿勢は社会からは支持されないわけで、それに加えて、ファンあってのプロスポーツである以上、あま
りに極端な「革命」にならないよう、今まで以上に慎重に検討されるべきだろう。

今回の読了ではそんなことを考えた。そして、この本が名著であることに変わりないと再度思った。

724korou:2024/02/01(木) 16:57:30
大見崇晴「『テレビリアリティ』の時代」(大和書房)を読了。

笹山敬輔氏の著作からこの本の存在を知り、
さっそく県立図書館で書庫から出してもらって借りることに。
読了後の印象としては
思ったほど整理された本ではなく雑然とした叙述だったが
部分的には優れた考察も見られる好著ということになる。

戦後日本でスタートしたテレビという媒体を
「民主化を促す」媒体という本来の設立趣旨と
コンテンツ自体が内包している「エンタテインメント」としての性格に二分するとともに、
それらが自ずから両立し得ないものであることから
1970年代の「あさま山荘」実況中継のあたりから
「エンタテインメント」としてより
「ダダもれ」としてのドキュメント性のほうが優位になるという考察。
視聴者と制作者がお互いにお互いを必要とする日本のテレビ独特のコンテンツが形成され
そして、それが21世紀になって、ネット全盛時代に引きずられるかのように
双方向性、コメントする視聴者と
「やらせ」のないコンプライアンス重視のドキュメントスタイルの番組を作り続ける制作者との双方向性、
そして、それは「ニコニコ動画」のようなスタイルにすぐ馴染む日本独自の感性を生んだ、という考察。

しかし、この本の後半に頻発する「環境環境」という言葉などはあまりに抽象的で
この本の前半の分かりやすさ(萩本欽一の役割の強調、そして彼の復権をもくろむ叙述)に比して
後半の抽象的な難解さには閉口した。
前半の叙述だけでうまくまとめていればもっと面白い本になっただろうけど
著者が素人文学ファンということから、それは難しかったのかもしれないが。

725korou:2024/02/11(日) 12:31:42
マイケル・チャーリー「ジョージ・セル」(鳥影社)を読了。

480ページに及ぶ大著で、さらに優に100ページ以上あると思われる注釈・参考データが末尾に続く
稀代の名指揮者ジョージ・セルに関する伝記の決定版と言える好著である。
翻訳の文章が誠実過ぎて堅苦しいこともあって
読み続けるのには苦労したが
詳しいことは何一つ伝わっていない20世紀前半から中盤にかけての欧米のクラシック音楽界の実情を
前回読了したフリッチャイの伝記と合わせて
具体的かつ詳細に知ることができたのは
読了前の期待通りとなった。
ただし、全体を通して(クリーヴランド時代以降の後半の叙述では特に)
細かすぎる記述(個々の演奏会についていちいち曲目を羅列する細かさ)には閉口した。
翻訳文体の固さと相俟って
この本を必要以上に読みにくくさせている。

そうした退屈さの合間合間に
(人としてはともかく)芸術家としては極めて誠実な人生を送ったセルらしい言葉が挿入され
それはこの本の最大の魅力となっているだろう。
そして、もう一点。
絶賛を浴びた晩年の指揮ぶりでさえ
「予測可能だった」「説教臭い」などという批判も浴びていたことも
忘れてはならない。
どんなに真剣に芸術に取り組んでいて、まして才能に満ち溢れていたとしても
それだけでは完璧な芸術にならないという、いわば当たり前の事実が
ここには示されているのである。
そして、それはセルにどうしても馴染めない今の自分には
重要な真実であるように思えたのである。

726korou:2024/03/01(金) 14:08:47
山崎浩太郎「演奏史譚 1954/55」(アルファベータブックス)を読了。

読み始めるまでは、それほど期待はしていなくて
クラシック音楽の雑学が少し増えればという程度だったのだが
読み進めるにつれ、予想に反して面白い本であることが分かった。
ちょうど、今の自分の関心が深まっている分野、時代についての著書であることが
この読書を有意義なものにしているというわけだ。

直前にセルの本を読んだので
トスカニーニ、ミトロプーロスに関する出来事、あるいは
ワルター、モントゥー。ライナー、バーンスタインについての当時の評価など
まるで復習をするかのように読むことができた。
そして、トスカニーニはもちろん、フルトヴェングラー、カラヤン、カラスなどの
この時期の詳しい動きも
的確な記述で手に取るように分かった。
さらに、吉田秀和、山根銀二、朝比奈隆などの当時の日本音楽界での立場とか
大岡昇平、福田恆存などの当時の文化人のクラシック音楽への関心など
全く新しく知ることが多かった。

意外なほどタメになる本だった。

727korou:2024/03/05(火) 17:45:23
ノーマン・レブレヒト「クラシックレコードの百年史」(春秋社)を読了。

第1部が本編で、第2部・第3部はレコード史における名盤・迷盤の紹介となっている。
第1部は読み切ったが、第2部・第3部は読了しなくてもよいと思ったので
飛ばし見程度、そういう意味での読了ということになる。

第1部だけ完全読了とはいえ
実に読みにくい本で苦労した。
最初は、自分が固有名詞を覚え切れないせいだろうと思っていたが
読み進むにつれ、叙述自体が滅茶苦茶なせいも大きいと気がついた。
段落切れも何もなく、いきなり次の行で全く違う話が続いていたりして
読んでいるほうは、それに気づくまでかなりの時間がかかるのだから。
同じ段落のなかで、最初の行だけEMIの話、その次の行がいきなりデッカの話という風に
何の脈略もなく連続しているわけだ。
訳担当者は、もっと思い切って意訳すべきで
原著の不都合な流れをそのまま翻訳してどうするのか
と言いたくなる。

書いてある内容は興味深いもので
途中から極端な悲観論に終始するのには閉口したが
それ以外は、現時点でぜひ知りたい情報、知識が大半だった。
少なくとも、レコード会社、その関係者に関する知識量は
読む前よりも飛躍的に増えたような気がする。
まあ、もっと分かりやすい本で読みたかったけれど(^^;;

728korou:2024/03/16(土) 18:01:58
戸部田誠「芸能界誕生)(新潮新書)を読了。

予想以上に面白い本だった。
いわゆる聞き書きスタイルで書かれている本なので
そのすべてが真実であるかどうかは定かでないが
この種のサブカル本については
こうしたスタイルで書かれた本が必須なのであり
きちんとした検証が不可能な場合も多いので
そうなれば、ここで書かれたことが真実に一番近い事実として
語られることになるだろう。

”芸能界”については
ここで語られたことが全てでないのは勿論で
ナベプロが興行の世界まで支配し始めた時期の直前まで
日本の興行界を牛耳っていたヤクザの存在については
この本では全く語られていない。
しかし、それ以外の
おもにテレビ時代以降の芸能界の中心的存在となった芸能プロダクションについては
ほぼ完ぺきに歴史が網羅されていて、しかも簡潔で読みやすい記述となっている。
(あと、レコード会社とテレビ・ラジオ放送局の歴史も必要だが・・ここまで書いてみて
 それが不足していたと思い当たった)

昭和、特に戦後について芸能界を語る上での
必読書ともいえる佳著であることは間違いない。

729korou:2024/03/18(月) 12:18:22
お股ニキ「セイバーメトリクスの落とし穴」(光文社新書)を読了。

ダルビッシュ投手とのやりとりで有名になった著者だが
基本的に野球シロウトとしての立場を踏まえつつ
最新の野球理論についてどう考えたらいいのか、ひいては
最終的に野球の面白さとはどういうところにあるのかについて
いろいろな観点から語っている本である。
副題に「マネー・ボールを超える野球論」とあるが
出版社などの担当者たちが
いかに野球のことに無知であるかが
この副題のつけかたに示されている。
そして、その副題を了承してしまったところに
この著者の”シロウトとしての遠慮”が見えて面白い。
マネー・ボールはセイバーメトリクスと何の関係もない。

記述は多岐にわたっていて
そのすべてを理解するには
かなりの”野球愛”を必要とする。
そして、分析面では鋭いものの
著書全体としてはまとめ方が上手でなく
結局何が言いたいのかということにもなるのだが
この種の本では、そこは目をつむって
分析の面白さを味わうべきだろう。
特に変化球の分析に関しては
他に類のない見事なもので
ハッキリ言って全部理解することは難しいのだが
一読の価値はあると思った。
もう少し分かりやすいものが出ればベストなのだが
著者の次回作を待ちたいところである。

730korou:2024/03/26(火) 11:32:04
猪俣勝人・田山力哉「世界映画作家全史(上)」(社会思想社・教養文庫)を読了。

トイレ本として読了。
読む前から面白い本として分かっていたし
実際、タメになった本だったのだが
それにしても、今更ながら知らない人物も多くて
映画史全体を把握することの困難さを
改めて思い知った次第。
特に、ハリウッド以外の地域の映画人については
代表的な数人しか知らないわけで
この本に載っている人物にしても
この共著者たちが選んだ範囲内ということでしかないので
すべてが網羅されていることではないわけだ。

そんななかで
かなり古い映画について
猪俣氏が実際に観たときの感想、世評などを
具体的に書かれているのは貴重は記述だと思う。
なかなか、昭和初期の頃の映画をめぐるエピソードなど
ここまで細かく書ける人は
この本の出版時でもそう多くは居なかったわけで
まして2024年の今、それを知ることができることそのものが
奇跡のようなものだ。

というわけで貴重な読書だった。
次は下巻。

731korou:2024/04/02(火) 11:56:52
吉田光男(編著)ほか「韓国朝鮮の歴史」(放送大学教育振興会)を読了。

放送大学の講義を随時聴いている関係で
一度通史を読んでおきたいと思い
何でもいいから読みやすそうなものをと県立図書館で借りた本が
たまたま放送大学のテキストだった(借りる前には気付かなかった)という
ウソのような話。
そして、ゆっくりゆっくり読んでいって
貸出延長でさらに2週間かけて読もうと思った矢先
次の人の予約が入ってしまい延長ができなくなったので
慌てて昨日、今日で一気読みしたという経緯。
まあ、それでも落ち着いて読めたのでよしとするか。

期待通りの通史の内容、レベルで
非常に満足できる読書ととなった。
後はこのイメージに具体的な事項を追加していくことになる。
韓国朝鮮の歴史は思ったよりも複雑で
こうして通史を知ることは
すべての日本人に必要ではないかと感じた。
誤ったイメージで語られることが多すぎるので
自分としてももっと知識を増やしていく必要があるだろう。
放送大学のテキストというのは
その意味で(基礎知識の網羅。知識を身に付けるための最初のステップ)
重要な意味合いをもつと
今回の読書で認識させられた。

732korou:2024/04/10(水) 14:38:35
生明俊雄「二〇世紀日本レコード産業史」(勁草書房)を読了。

いわゆるコロンビア、ビクターなどのレコード会社について
二〇世紀における企業としての隆盛史を記した本である。
この本のあとがきで著者が書いているとおり
この種の本はほとんど書かれておらず
その意味でこの本の存在は貴重ですらある。
ただし、文章は生硬で晦渋で読みにくく
誤字脱字、単純な勘違いなどが頻出する
言ってみれば、編集者は何をしていたのかと
嘆きたくなるような本でもある。
読みにくいけど、初めて詳しく知る事実も沢山知ることができる
という類の本になる。
(それにしても、これで東京芸術大の博士論文の草稿かと思うと唖然。
 要するに、誰もこの本の中身をチェックできないということか。
 それで博士論文として幅を利かせるのはどうかと思うが・・・)

今回の読書で得た知識は膨大なものになる。
音楽雑談スレを新設した上で、いくつかそのスレでまとめて記しているが
それでもごく一部に過ぎない。
まあしつこく読み通せば、編集の不備はなんとか解決できるので
全体としては良書と言えるかもしれない。
誤字脱字、勘違いなどは、著者に全部、責があるわけでもないので。

733korou:2024/04/22(月) 18:36:45
ジョン・カルショー<山崎浩太郎訳>「レコードはまっすぐに」(学研)を読了。

実に面白い本だった。
もともとの文章がイギリス人独特のひねくれたユーモアに満ちていて
さらに訳文もその文章の特徴を十分に生かした巧みな文章になっていたので
翻訳本を読んでいるある種辛い日本語体験など
まったく感じることなく読み進めることができた。
アマゾンの評だと、訳文の間違いなどが厳しく指摘されているが
確かにそういう誤りが頻出している上に訳文も酷ければ
その指摘はそうだと思うのだけれども
これだけ面白く訳されているのだから
細かい間違いは、それはそれでグッと腹に収めておくのが
読書人の良識というものだろう。
誰かと厳密な議論をするわけでもあるまいし。

この本でもし残念なところがあるとすれば
カルショーが自身の仕事ぶりについて
あまりに謙虚で、自慢すらしない書きっぷりなので
客観的にみてカルショーの評価はどうなのかが
さっぱり分からないことだろう。
幸いにも、カルショーを高く評価している本を先に読んでいたので
「指環」録音の偉業なども知った上で読むことができたのだが。

それにしても生々しい(笑)
ルービンシュタインのエピソードなど、本当なのだろうけど
ちょっと可哀想(爆)
この本のおかげで、(今後も多分聴くことは少ないだろうけど)
オペラなどで活躍する名歌手の人たちについて
親近感が増したのは間違いない事実。


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