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鈴扇霊 二つ目の物語
44
:
ピーチ
:2013/07/29(月) 22:39:06 HOST:em114-51-149-36.pool.e-mobile.ne.jp
『……どうしたの?』
どうにも集中力というものをどこかに置き忘れてきたように錯覚させる友人に、少女が問うた。
『…ねぇ、神代さん』
呼ばれた少女、神代天音が視線を投げる。
『………この学校、かっこいいひと居ないよね』
『―――は?』
『なんでもないっ』
慌てて言った少女に、天音が胡乱げな視線を向けて。
『どうしたの? いつもの秀才ぶりはどこに置き忘れてきたのよ?』
『秀才じゃないし』
苦笑した彼女―――飛湘あおりに、天音はあ、と言って。
『今日、紹介したい人が居るの』
そのとき、あおりはまだ予想していなかった。
彼女の紹介したい人、と言う人物像を。
開いた口が塞がらないという慣用句は、まさにこのためにあるのだろうと、あおりは初めて思った。
『天神柊一さんと、飛鳥井昇さん』
『うっわお前にさん付けられるとすげぇ違和感ある………あれ?』
昇と言われた方が大袈裟に言ったあと、あおりに視線を向けて呟く。
『ひょっとして、昨日の?』
やはり、昨日助けてくれた彼だった。
『あ、き、昨日はありがとうございましたっ』
明らかな動揺を見てとり、天音が昇に視線を投げた。
『知ってたの?』
『いや、名前までは知らねぇよ。昨日悪い虫が寄ってたのを払っただけだけど?』
『はぁ?』
天音の言葉に被せるように、柊一と呼ばれた少年があぁと呟いた。
『そういえば、昨日変な男に言い寄られてた女の子助けたって言ってたね』
『別に、助けたわけじゃねぇよ』
苦笑気味に答える彼。そんな彼が、あおりに向かって笑いかける。
『次は変なのに近寄られないようになー』
『は、い……』
二人の会話を聞いていた天音が、
『…じゃあ、今日は二人で帰ったら? 私は柊と帰るし。どうせ私の家だしね』
『また護衛かよ』
苦笑しながらもあおりの傍に一歩近寄った昇を見て、天音が念を押すように。
『柊のことも、色々と教えててね。闇夜に入ったって言ってるから』
『闇夜!?』
『だから言ってるんじゃない。よろしくね』
それだけ言い残し、天音と柊一がさっさと歩き去った。
『え、えと……闇夜ってほんと?』
『え? え、えぇ…』
昇からだからどうしたと言うわけでもないが、何となく聞いてしまう昇である。
『…え、っと。これから、よろしくお願いします』
ぺこんっと頭を下げた彼女に、昇がしばらくうーんと唸って。
『やっぱ駄目だな…』
『え?』
『よし決めた』
一人でぶつぶつと呟いて、彼は言った。
『今日から、俺のことは呼び捨てで。ついでに敬語もなし』
さらりと言ってのけた彼に、あおりは数秒間たっぷり固まって。
『………はぁぁっ!? ちょ、何考えてっ』
『嫌なんだったら先輩命令』
何が嫌なんだったらなのか分からないが、それを言われるとうっと言葉に詰まる。
『返事は?』
『……分かりました』
『はいー? 今なんつったかー?』
『分かった!』
開き直ったように答えると、昇が満足げに笑った。
『それでよし。それと、俺のことはこれから昇ね』
そう言って笑い、彼女を家の前まで送り。
『じゃ、明日な』
そう言って去ろうとした彼の言葉に引っ掛かりを覚え、少女が問い返す。
『え?』
『あいつのことだから、たぶん俺と柊一の交代で送ることになるよ。嫌ならそれで構わねぇけどさ』
それだけ言い残し、少年がすっと踵を返した。
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