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『邪気眼少女』 *Another Story*

187心愛:2013/08/26(月) 15:52:24 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp






「で、そんなことはどうでもいいの。圭くん、美羽ちゃんからチョコもらった?」



「いやまさか」



即答する俺。



「え、だってあの美羽ですよ? あいつがバレンタインに参加しようとするわけないじゃないですか」



「そう思うでしょ?」と美空先輩は楽しそうに笑う。



「それがね、実はそうでもないの。美羽ちゃんのパソコンの履歴漁ったら、面白いくらい大量にチョコの作り方調べた形跡が」



「それやっちゃダメですよ!」



ツッコミを入れながらも、俺はあの美羽が? と内心戸惑っていた。


……う、うーむ。



「あの様子だと悩んでるうちに渡せずに終わるだろうから、圭くんから動いてあげて」



「先輩ってほんと過保護ですよね……」







゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚







「やー、今日はいい日だー」



「ふん……君は案外、女子に好かれるようだな」



二人での帰り道。
今日一日中機嫌が悪い美羽が、面白くなさそうに言う。


なんとなくその理由を察した俺は、にこりとして用意していた一言を放った。




「一番ほしいやつはもらえてないんだけどね」




美羽が立ち止まる。
きょとんとし、ゆっくり意味を噛み砕いて、それからだんだんと頬に朱が差し始めた。

俺が笑って歩き出すと、



「……ふんっ」



「ぎゃあっ!?」



パーカーのフードに後ろからずぼっと手を突っ込まれ、バランスが崩れて軽くよろめく。

そのまま方向転換して脱兎の如く逃げ出そうとする美羽の首根っこをとっさに掴んだ。



「ぅ、い、息が……っ、離せ!」



「うわごめん!」



猫みたいに髪を逆立てながら、涙目でぜえぜえ荒い呼吸をする美羽。

俺はそんな彼女に謝って、ひょい、と背中に腕を回してフードの中に入ったものを掴み取る。


黒地に白レースのリボンという、なんとも美羽らしい箱。



「ち、違う。これはだな……っ」



息が整うやいなや、赤い顔で言い訳を早口でまくし立てる。



「たまたまチョコを作りたくなったのが2月で、たまたま上手くいって、たまたまそれを間違えて学校に持ってきてしまって、たまたまヒナがそんなことを言うから捨てるのも勿体ないかと思って」



「あーうん分かった分かった」



「嘘じゃないぞ! 吸血姫(ヴァンパイア)の血統、リルフィーユの名に賭けて誓う!」



「分かったって」



いつまでたっても頑なに認めなさそうな美羽の扱いは、もう心得ている。



「ありがと。感想、あとでメールするよ」



「……ひ、必要ない」



そわそわっと視線をさ迷わせる美羽。



「ただ、君は、」



「ちなみに俺は、甘いのも苦いのも、どっちでもいけるから」



「……そうか」



その、少しほっとしたような横顔を盗み見て。

俺は早くも、なんだか甘ったるい気分になったのだった。


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