[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
『邪気眼少女』 *Another Story*
170
:
心愛
:2013/08/19(月) 20:00:15 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp
「いやー、まさか昴があんな声出す日が来るとはね。なんだっけ、『この野郎』?」
「……情けないところをお見せしました」
あのときの鬼気迫る形相とは似ても似つかない、文字通り情けない顔をする昴。
「つい、頭に血が昇りまして……。ですが、お嬢様がご無事で、本当に良かった」
「……ふーん」
眉を下げて微笑む顔を何故か直視できなくて、ついと視線を逸らした。
あたしは曖昧な返事をすると、どうしてこんなに早くここに辿り着けたのか尋ねる。
「ご学友の方にお話を伺ってすぐ、車の目撃情報を辿って飛ばして来ましたので。見張りもかなり少なくて助かりました」
さらりと言うが、異常事態だと察知し、迷わず動ける決断力と実行力はかなりのものだ。それを実際にやってのけるのだから凄い。
「ですが……少し、意外でした」
「うん?」
「お嬢様のことですから、許す代わりに結野家が有利になるような条件を提示なさるのかと」
そんなことか、とあたしは苦笑する。
「十分すぎるくらい有利になったじゃない。とんでもなく大きな“借り”を作ったんだよ? あの西條を傘下に入れるとか、身体張った甲斐があったよね」
「……あなたという方は……」
でも、あたしの陰謀だって、昴がいなければ全部成り立たなかった。
いくら危険な賭けでも、昴なら絶対来てくれるって、あたしは信じてたから。
……言ってはやらないけど。
「で、西條のことは誰にも知られてない?」
「はい。旦那様には連絡しておりませんし、ご友人たちにもとっさに誤魔化しておきました」
それなら美羽ちゃんにも上手く言っておいてくれたのか、とほっとする。
こんな目に遭ったなんてこと、できるだけ誰にも内緒にしておきたかったから。
昴は穏やかに笑み、足を止めて車のドアに手をかける。
「―――ただ、ご友人とお話ししている間にお会いした美羽様と圭様には事情を説明した上、そのまま同行して戴いておりますが」
「は」
暗いから遠くからではよく分からなかったけど、後部座席にふたつの影。
「美空!」
「美空先輩っ」
あたしはぐるりと首を捻ると、昴に噛みついた。
「騙したね!?」
「何のことか分かりかねます」
いつになく反抗的な態度で、そっぽを向く昴。
……お、怒ってる。
あたしが一人で敵地に乗り込んだこと、絶対怒ってる。
って、あたしが脅迫されたのはそもそもあんたのせいなんですけど!
「良かった……。通報しようか本気で迷いましたよ。昴さんは着いてすぐ出て行っちゃうし」
後輩の圭くんが胸を撫で下ろす横で、美羽ちゃんがわなわなと身体を震わせている。
待って、まだ心の準備できてない。
「あ、あのね、これは」
「このバカ!」
悲しいかな、あたしはこの妹にだけは弱いのだ。
涙目で怒鳴りつけられれば、黙って口を噤むしかない。
「いつもそうだ! 美空は勝手に、ぼくの知らないところで無茶をするっ」
「み、美羽……ちゃん?」
すん、と洟をすすり、おろおろするあたしを睨む。
「……昔から、美空の背中が目標なんだ。届くことは決してないと分かっていても、ずっと、ひたすらに努力してぼくを守る背中に憧れを抱いていた」
でも、と美羽ちゃんが声を張り上げる。
「美空が家やぼくを守るために危険を冒すなんて、ぼくはちっとも望んでない!」
「……美羽、ちゃ……」
「心配をかけさせるな、何もかも一人で抱え込んで強がるんじゃない! こんなときくらい、家族を頼れ、バカ……っ」
ぼろぼろと涙を落とす美羽ちゃんを見て、目頭が熱くなる。
「ごめん……」
無理をして押し込めていた、恐怖や不安、一気に色んなものが遅れて押し寄せてくる。
「ごめんね、美羽ちゃん……!」
美羽ちゃんをぎゅうぎゅうと抱きしめながら泣き崩れるあたしの耳に、こんな声が遠く聞こえていた。
「それにしても……美空先輩って、結構普通の女の子だったんですね」
「そうですよ。人より少しだけ、強情で見栄っ張りで―――とても、優しい方です」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板