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『邪気眼少女』 *Another Story*
162
:
心愛
:2013/08/16(金) 22:17:33 HOST:proxy10012.docomo.ne.jp
「何でも彼は、美空さんの結婚に反対するようなことを叫んでいたとか」
これはどこからどう見ても、お嬢様と使用人の危険な関係の証拠写真だ。
昴の想いに気づいてからずっとあたしが危ぶんでいたことが、今現実となってしまったことになる。
「これは立派なスキャンダルです。流出しては、困りますよね?」
社長令嬢が執事と恋仲にある、などとでっち上げた情報と共にこの写真をばらまかれたら、あたしと昴個人どころか、結野家だって一巻の終わりだ。
だから、写真のデータを西條が握っている限り、あたしは下手に動けない。
そもそもこれを校門前で見せられたのも、付いて来なければこの画像を良いようにする、と暗にあたしを脅すためだ。
「……一ノ瀬が私にそういった感情を抱いていたのは事実ですが、私もこの後厳しく叱りました。私に、彼との交際関係は一切ありません!」
「たとえそうだとしても、黙って提供する分には変わりませんよ。向こうで勝手に、センセーショナルな記事に仕立て上げてくれるでしょう」
「、……っ」
絶望に打ちひしがれるあたしを見て、西條がつらそうに顔を曇らせる。
「そんなお顔をなさらないで下さい、美空さん。あなたが苦しむ様を見ると、心が痛みます」
嘘つけ、と詰りたいところだが―――案外、そうでもないかもしれない。
自分の容姿が抜群という自覚はあるし、誰からも好かれる淑女に見えるように努力してきた。
西條が作り物の“結野美空”に対してそれなりに愛着を持っていることは、普段からの態度、そしてこんな思い切った手段に打って出たことからも分かる。
「こちらの要求はひとつ。簡単なことです」
西條の顔が近づいた。
「私との婚約を約束して下されば、データはこの場で破棄、今日のことは口外しないとお誓い戴いた上で帰りの車を用意します」
……そうくると思った。
こいつが欲しているのは、あたしの心じゃなくて会社の跡継ぎとしてのあたしだ。
容姿、身分、全てに秀でた才女は西條の御曹司の相手として申し分ない。
他の誰かに取られる前に無理にでも約束させ、家系に結野の血筋を取り入れる。
あたしを都合良く利用してこちらの経営に色々口出しし、最終的には結野の権力の一端も掌握する。
それが、こいつの目的。
「一言、一言だけ、そう口に出して証明して下されば良いのです」
さあ、と促され、あたしは不安げに瞳を揺らす。
落ち着け。
落ち着いて、頭を冷やせ。
もっと冷淡に、冷徹に、冷酷に、状況を分析して最善の方法を弾き出せ。
まず、婚約すると言うだけでいい、なんて嘘。
その場の口約束で終わらせるわけがない。
録音されていると考えるのが妥当―――とすれば、この部屋のどこかに仕込んでいるはずだ。
本当に素直に消すとは到底思えないけど、仮に写真のデータがなくなったとして、あたしが西條を裏切るようなことがあれば録った音源を持ち出されるだろう。
不本意だったのだと訴えようとしても、不都合な箇所は捏造し放題。証拠があると丸め込まれてしまう。
「そんな……こと……」
動揺に躊躇うふりをしながら、あたしは不自由な手をこっそりと動かしてみる。力を入れれば引きちぎれそうだけど、まだそのときじゃない。
あたしの狙いは写真のデータを破棄させ、上手く煙に巻いてここから脱出すること。
でも西條に迫られているこの状況で、そんなことができるはずもなく。
「どうしても嫌だと仰るのなら……そうですね。あの執事を愛人として迎え入れても構いませんよ」
「……ですから、一ノ瀬は―――」
せめてあそこのバッグまで辿り着ければ、それでなくとも何か理由をつけて持ってこさせるとか……いや、それだけではまだ条件として弱い。
だとしたら、今は第三者が介入してくるまでの時間稼ぎを兼ねて―――先手を打っておくか。
ほんの僅かでも、その可能性に賭けるほかない。
逆境を覆して優位に立つには、何においても運と度胸は必要不可欠だ。
「―――西條様、」
ひとまずの方針を決めたあたしは、企みを悟られないよう細心の注意を払いながら、その作戦を開始した。
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