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『邪気眼少女』 *Another Story*
156
:
心愛
:2013/08/14(水) 19:19:53 HOST:proxyag004.docomo.ne.jp
「それで、そのとき美空がさー」
「ちょっと、やめてよ小百合(さゆり)ー!」
一日の授業が終わって、放課後。
同好会の活動は休みのため、あたしは荷物をまとめると、友達二人と昇降口を出た。
学校前にまで来られて目立つのが嫌という理由で、昴には歩いて十分ほどの距離にある駅に、迎えの車を停めてもらっている。
あんなことがあっても、あたしたちの関係は変わらない。
あたしの失敗を昴がフォローして、あたしの策略に昴が困った顔をしながら協力して、そんな、いつも通りの日常。
……歪んでいると思う。
それでもあたしたちはお互いに、こうして誤魔化しあうしかできないんだ。
「ほんっとに、美空のドジは―――おうわっ」
突然視界に見慣れないものが現れ、陽気に喋っていた友達が唖然として立ち止まる。
校門を出てすぐのところに、大型の高級車が停まっていた。
ドアが開き、きっちりとスーツで固めた男が出てくる。
「えっ、なにあれ」
車にも彼にも見覚えはないけど、あたし絡みと見て間違いない。
……面倒なことになりそうだ。
美羽ちゃんはまだ学校にいたはず、とこんなときにも先に妹の安全確認をする自分に呆れながら、あたしは大人しく彼が近づいてくるのを待った。
「お引き留めして申し訳ございません。結野美空様、ですね?」
「そうですが」
腰の低さからどこかの使用人だろうと推測する。
あたしの学校を調べてわざわざ待ち伏せしていたのだとすれば、何か目的があるはずだ。
「お手数ですが、こちらをご覧戴けますか」
真意を探ろうと黙考していると、無地の封筒を手渡された。
怪訝に思いながらも開封し、中身を取り出して確認した途端、サッと全身の血の気が引く。
あたしは意識してやや大げさに驚きを露わにし、小刻みに震える手で元の状態に戻して突き返した。
「これからお時間、よろしいですか?」
「わ……分かり、ました」
こんなものを見せられて断れるわけがない。
脅迫に屈したあたしは“怯え”に顔を青ざめさせながら、こくりと頷く。
……さて、どうしようかな。
「ちょっと美空! 大丈夫なの!?」
「何今の、写真? 変なことに巻き込まれてないよね!?」
……巻き込まれてる、どころか。
あたしは深刻な表情を崩してへらりと呑気そうに笑うと、詰め寄る二人の肩を叩いた。
「大丈夫大丈夫ー。知り合いだから」
「そ……そう、なの?」
「そうそう」
そう言って笑ってから、あたしは今まで頭の中で考えていた台詞を早口でまくし立てた。
「あ! ほんとごめん、美羽ちゃん……えっと、これから来ると思うんだけど。ゴスロリ着た子に、先に帰っててって伝えてくれる? ちょっと寄り道したいから、って」
できるだけ美羽ちゃんにこういう事態を悟られるのは避けたかったけど、これはさすがに仕方ないかな。
美羽ちゃんだって馬鹿じゃない。メールでも電話でもなく友達に伝言を頼んだことに、不信感を抱くはずだ。
訳あってケータイを使えないのだと解釈して、あいつに言ってくれれば、それでいい。
後はあたしと、あいつの仕事だ。
向こうの目的はあたし一人、美羽ちゃんが危害を加えられることは考えにくい。
危険な目に遭うのはあたしだけで十分だ。
……友達からは運がないって思われるけど、あたしはやっぱり、最高に運がいい。
あたしが長女に生まれてきて、本当に良かった。
美羽ちゃんがこんなつまらないことなんて関係なく生きて、安全なところにいることができて、本当に良かった。
心からそう思う。
―――……さて、駆け引きといきますか。
あたしは現状を打破すべく頭を巡らせながら、男性に恭しい動作で導かれ、車に乗り込んだ。
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