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『邪気眼少女』 *Another Story*
152
:
心愛
:2013/08/13(火) 19:29:57 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
―――幼い頃から、汚い大人に囲まれて育った。
権謀術数が渦巻く環境で幼年期を過ごしてきたあたしには、相手が信頼できる者かどうか瞬時に見極める直感が備わっていた。
その点、昴はパーフェクトと言ってもいい。
真面目で口が堅く、ある程度融通も利く。
清涼感のある面差し、穏やかな声。女性的な優美さのあるシルエット。
優しく誠実そうな瞳。
自分は庶民の出だし学がない、と謙遜するけど、どんなところを連れて歩いても決して恥ずかしくない容姿。
駐車場所に向かって隣を歩く、いつになく険しい表情をした昴を、ちらりと横目で見上げる。
社交辞令だらけのパーティー。
穢れた世界で共にすべてを見てきながら、それでも優しさを、人間らしい愛情を忘れない昴が羨ましい。
あたしは狡猾な人間だ。
表面上は社交的に振る舞っていても、いつだって冷徹に損得を計算し、巧く本性を隠している。
今まで結野は華々しい業績の裏でいくつものライバル他社を潰し、成り上がってきた。
あたしにも、優雅に微笑みながら同じことをやる日が必ずくるのだから。
見せかけだけで打算的なあたしと違って、まっすぐで純粋で、触れたら壊れてしまいそうに繊細な美羽ちゃん。
誰より愛しい存在を巻き込まないために、あたしは今日も嘘をつき、自分を偽りの笑みで飾りつける。
昴が、こんな一癖も二癖もあるあたしを何故か恋い慕っていることも、身分違いの恋に葛藤し、必死に隠そうとしていることも、観察力に長けたあたしには手に取るように解る。
……たまに、可哀想になるくらい。
「ね、昴」
あたしは可愛らしく作った声をかけ、こちらを見た昴に無邪気な笑顔を向けた。
「あたしが結婚したらさ、昴はどうする? あたしとしては、ずっと付いてきてほしいなぁ」
昴を傷つけ、それによって彼を立ち直らせる目的で、あたしは残酷な言葉をつらつらと吐く。
「あたしのドジも上手く助けてくれるし、あたしの愚痴聞かせられるの昴くらいだし」
静謐さを感じさせる淡いブルーの双眸が、闇の中淋しげに輝く。
あー……これは、ちょっと本気で堪(こた)えてる、かな。
あたしは『真面目な昴はまだ、裏がありそうな西條のことを気にしているんだ、と解釈した』風を表面上だけ装いつつ、周りを意識して声のボリュームを落とした。
「あはは。だから、西條は有り得ないってば。条件としては文句なしに合格だけどね」
わざとらしい笑い声を上げ、昴をさらに、じわじわと追い込んでいく。
いつもと違って美羽ちゃんみたいに下ろした髪が、夜風を孕んでふわりと広がった。
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