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3竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/07(金) 23:37:34 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第一章 噂の少女との邂逅 -boy and girl-

 1
 
 朝だ。
 漠然と少年はそう思った。カーテンを閉めているため、ほんのりと部屋の中に差し込む朝日。その朝を告げる日差しが丁度少年の目を照らしている。はた迷惑な朝日だ、と少年は思いながら目をごしごしと擦る。
 すると部屋のドアの前で中学生らしき少女の声が響く。
「おにーちゃん、朝だよ! 早く起きないと遅刻さんになっちゃうよー! ほら、起きた起きた!」
 言いながら少女はドアを開けてずかずかと上がりこんできた。
 ベッドから上体を起こしたままの少年は、欠伸混じりに返事を返す。お玉を持ったままの少女は、起き立ての少年の服の袖をぐいっと引っ張りながら下の階へと連行していく。そんな強引に連れて行かんでも、という少年の思いは彼女には届いていない。
 リビングのテーブルには二人分の朝食が用意されていた。目玉焼きが乗ったトーストに、小さな器に入った緑色の野菜の中にプチトマトが入ったサラダ。そして白いマグカップにはコーヒーが淹れられている。マグカップの側面に『R』と書かれているが、恐らくは少年のイニシャルだろう。一方で、妹である少女のマグカップの側面には『A』が記されている。
 彼女の名前は澤木亜澄(さわきあすみ)。黒髪を肩にかかるツインテールにしたあどけなさを顔に残した少女だ。縛っている髪を束ねているのはピンク色のゴム。彼女が小学六年生の頃に、少年が誕生日に買ったプレゼントである。意識はしてなかったものの、こうやって自分があげたものをちゃんと使っているのを見ると嬉しい。彼女は黒基調のセーラー服を着ている。恐らく彼女の学校の制服だろう、現在の彼女は中学三年生である。
 一方で、そろそろ暑い季節になってきたためブレザーを着ずに、制服の長い袖を二の腕辺りまで捲っているのが、彼女の兄である澤木霊介(さわきりょうすけ)だ。二人の両親は離婚しており、母方に引き取られた。しかし、二人の生活のために母は仕事で忙しいため、家には二人しかいない時がほとんどである。
 霊介はトーストを食べながらテレビに視線を移す。やっているのは政治系の話題ばかりで、そういうのに疎く、興味の無い彼にはさっぱりの内容だ。
「目玉焼きの黄身ってさ、ぎりぎりまで潰したくないよね! たっぷりの黄身に包まれた白身がおいいくって―――って聞いてる、おにーちゃん?」
「お前はちょっと黙れ。朝くらいゆっくりさせろよ」
「ぶー、おにーちゃんの意地悪。でもさ、そんなにゆっくりさんでいいのかな?」
「は?」
 彼の疑問を解消するように、亜澄が壁に掛けてある時計を、ココアを飲みながら指差す。
 時刻は八時十分。学校の始業時間は八時三十五分。家から学校までは、もうダッシュして十五分前後。
 完全にまずい。
「―――ッ、早く言えよッ!!」
「気付きなよー。もう高校生になって一ヶ月近く経つのにさー。あ、玄関のとこのゴミおねがーい」
 ふざけんな、と叫びながらもしっかりとゴミを持って家を飛び出す霊介。あんなに急いで出かけたくせに朝ごはんをきっちりと食べて行ってくれている。空になった器ににんまりする亜澄。しかし、彼女がふと視線を移した先にあったのは霊介の弁当箱だ。
 お昼ごはんを持って行き忘れた兄に、新婚のサラリーマンか、と思いながら亜澄は肩をすくめ、
「……もう、おにーちゃんってば。仕方ないなあ」
 彼女は彼の弁当箱も鞄の中に入れて登校する。彼女の学校は自転車通学オーケーなので、亜澄は自転車で通っている。彼女の学校から霊介の学校まで、自転車で約二十分。先生にわけを話したら外出させてくれるだろう、こういうときに成績優秀でよかったと思う亜澄であった。
 どうせ昼休みになって弁当がないことに気付くんだろうなー、と思いながら亜澄は学校へと向かう。


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