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24竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/23(日) 22:49:10 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 凪は都市伝説という存在になっていた。
 何処からともなく現れ、何かを探しているような所作を行う。大切な物を探している、と凪はいつも答えていた。
 その大切な物が、自分を受け入れてくれる人のことらしい。
 特定した誰か、というわけではなく、漠然とした答え。『自分を受け入れてくれる人』を探していたのだ。
 凪の言葉に霊介は息を吐いて、
「だったら、もう探す必要ねーだろ」
 え? と凪がきょとんとする。
 彼女が霊介に視線を向ける。霊介は自分の胸に手を当てて、
「俺がいる。それに、亜澄だっているだろ」
 凪は目を大きく見開いた。
 自分が探していたものが既に見つかっていたことに驚愕して、ではない。彼がそんなことを言ってくれたことが嬉しくてだ。
 今までの人は、自分にそこまで言ってくれる人はいなかった。ぬいぐるみを動かせば気味悪がられるし、好きこのんで近づいてくる人もいなかった。そんな彼女を、たった一日一緒にいただけで受け入れてくれた。凪は嬉しさで表情が綻ぶ。
 しかし、凪は顔を俯かせて、
「……でも、私は危険なんだよ。きっと、霊介や亜澄にも迷惑かけちゃうだろうし……」
 その凪の言葉に霊介は歌蝶の言っていたことを思い出す。
 彼女に限らず『繰々師(くくりし)』は世界を滅ぼせる。凪がいつそんな暴挙に打って出るか分からない。今が安全でも、この先ずっと安全だという保障はどこにもないのだから。
 だが、それなら彼女がこの世界を嫌わないような、そんな楽しい思い出ばかりを作ってやればいい。
 自分だけじゃ無理でも、亜澄がいたら不可能ではない。それに涼花や明日香にも手伝ってもらおう。歌蝶には二人を近寄らせることを禁じられたが、このまま隠し通せる自信もない。後で下手に言い訳するよりも、今本当のことを言っておいた方がいいだろう。明日香の反応が怖くなりそうだが。
 俯いている凪の頭に手を置いて、霊介は優しく語り掛ける。
「お前が危険なんて知ったことかよ。そんなのどうでもいいんだ。お前はずっと俺達の家にいていいんだよ。亜澄もきっと喜ぶ」
「……霊介……」
 凪は思わず霊介に抱きつく。
 いきなり抱きつかれた霊介は戸惑うものの、安心したような溜息をついて優しく彼女を抱き返す。
 そこへ、

「いんやー、そうなるとこっちゃ結構困るんすよー」
 明るく、それでいてどこか危険性を孕んだ声が二人の耳に届く。
 
 勢いよく声の方向を振り返る霊介と凪。
 そこに立っていたのは一人の少女だ。年は大体十七歳程度。赤い髪と目が特徴的だ。後ろの方で結ばれた、太ももに到達する長さのツインテールがさらに特徴となっている。服装はへそが露出する長さのキャミソールに深緑色の短パン。ニーソにローファーのような靴を履いている。中でも特に違和感を放つのが、腰のベルトに挟まれた短剣だ。
 赤髪の少女はくすっと、小悪魔的に笑ってみせ、
「その娘、『繰々師』っすよねー。そちらの男の人に質問です。貴方はその娘の危険度を知っている。イエス? ノー?」
「な、何なんだよお前は! いきなり出てきて! 質問する前に何者か答えやがれ!」
 霊介の言葉に少女はきょとんとしたかと思うと、急に冷徹な瞳に変わる。
 彼女の声が低い声色になり、
「いいから質問に答えてくださいよー。イエスかノーか言うだけでいいんすよー」
 その声に霊介の背筋に寒気が走った。
 単純に怖いと思ってしまった。言うと大袈裟だが首元にナイフを突きつけられているような感覚がした。
 霊介は『イエス』と答える。少女の返答を待たずして霊介が続ける。
「だが、俺はこいつが危険だと思わない! お前はどう思ってるか知らないけど、こいつは一人で寝るのを怖がるような、ただの普通の女の子なんだよ!」
 霊介の言葉に少女は呆れたように嘆息した。
 彼女は前髪をかき上げると、
「いや、知らないっすよ。その娘がどうとかじゃなくて、私は世間的に言ってるんです。さっさと退いちゃってくださいよー。じゃないと、私は貴方も殺すっすよー?」
「退くかよ!」
 霊介は凪を庇うように、彼女の前に立つ。たとえ、相手がどんな人間でも、霊介は凪を守ると決めたのだ。


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