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ソラの波紋

297心愛:2013/07/18(木) 19:30:39 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp







「……ふざけるなっ!」




彼の服を掴み、声の限り怒鳴りつける。
が、無意識のうちにその声音が震えた。



「君という奴は……! どうして、そんな……っ」



「別に不自然な代償ではないよ。シィがあのとき家族を生き返らせてたら、そのまま地獄に連れて行くつもりだったし。女の子一人の命なんて、いくつ要求しても足りないからね」



「そういう問題じゃない!」



悲鳴じみた叫びを上げるシルヴィアの瞳には、小さな雫が溜まり始めていた。
目の前で惨劇を見せつけられても涙一つ落とさなかった鋼の心が、今、確かに揺らいでいた。



「そんな顔しないで、シィ。これは俺が望んだことなんだから」



彼女の滑らかな頬に指を滑らせ、アレックスが淡く微笑む。



「俺は、永劫に続く苦しみから解放されたんだよ」



「、…………?」



困惑して見上げてくるシルヴィアに、そっと語り聞かせるように。
いつも本心を見せようとしない彼が、胸の内をさらけ出す。



「愛する者が死んでいくのを、何度も見てきた」



愛。
この男と無縁なように思われる単語が口から出たという事実にシルヴィアが一瞬固まると、「そこ、驚くところじゃないんだけど?」とアレックスが笑った。



「地獄で意地汚い罪人ばかり見てると、たまに気分が荒むんだよね。昔から良く、気分転換を兼ねて魔族や人間を眺めていたよ」



血のように紅い双眸が、懐かしげに細められる。



「……でも俺が恋した女の子は皆、他の男と添い遂げて、すぐに老いて。俺のことを知らないまま、儚く消えていくんだ」



それが悔しくて、つらくて……少しだけ、羨ましかったんだよね。


少し照れたように、唇の端を上げる。



「数千、数万、数億。面倒だから一々数えてもいないけど、気が狂いそうになるような年月を、俺はそうして生きてきた」



不死とは、孤独。
何度地獄の業火に灼かれても、その身を滅することはない―――裏を返せば、どんなに望んでも死ぬことができないということ。
大抵のものが手に入っても、本当に大切なものは、その両の手から滑り落ちていく。



「悪魔は愉悦を感じることはあっても、嬉しさ、喜びを持つことは滅多にない。幸せというものから遠ざけられた種族なんだよ」



シルヴィアの瞳に溜まりかけていた雫は、いつの間にか綺麗になくなっていた。
耳を澄ませ、一言一句を聞き逃さないように声を拾う。


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