[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
ソラの波紋
274
:
心愛
:2013/07/05(金) 22:17:17 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp
空牙を案じ、自らの身を投げ出したミレーユを無理矢理操り、空牙たちを攻撃させるという仕打ちを与えているサミュエル。
それだけではない。
怨敵に対しても気高く堂々とした態度で挑んだシルヴィアの、仲間に対する真っ直ぐな想いを利用し、誇りを踏みにじった。
たとえ己の悲願を達成する為だとしても、その手段は卑怯で、下劣で、赦されるべきことではない。
「……俺もいい加減、我慢の限界なんだよ」
身体の奥、魂の根源から、膨大な量の魔力が溢れ出す。
体内で熱を持ち暴れるそれを、空牙は一気に解き放った。
轟ッッッ―――!!!
妖気の放出。
空牙を中心として突風が激しく渦巻く。暴力的なまでに眩しい白に、空間と視界とが塗り潰される。
サミュエルが息を詰め、
ミレーユは警戒してか紅く染まった瞳を細めた。
シルヴィアとミレーユ。いや、もしくはそれ以前か。仲間が戦闘をしている間ずっと、空牙は密かに少しずつながらマナを溜め、魔力を練り込んでいたということだ。
しかも、空牙の足元に花が咲くが如く拡(ひろ)がった金の紋様は輝きを増し、次第に濃くなっていく。
彼を取り巻く妖気の勢いも衰えるどころか、ますます大きく、強まっていく。
「まさか」
魔力の源たる周りのマナが薄まっていく感覚に、ユリアスがはっとして目を見開いた。
この魔力は、空牙が溜め込んでいた量だけではない。
このホールに満ちた残り全てのマナを、吸収している……?
獣が獲物を喰らい尽くすように荒々しく。
空牙は絶え間なくマナを取り込んで魔力に変換し、妖気として空気中に出していく。
それは途方もなく、作戦とも呼べない、あまりに単純で、そして無理が過ぎる筋書きだった。
―――この場のマナを使い果たしてしまえば、ユリアスと綺紗、だが例に漏れず、サミュエルも戦闘不能になる。
「そんなっ、無茶だよ! 空牙くんの身体の方が……っ」
先に限界を来(きた)し、壊れる。
そう叫ぼうとしたユリアスを、綺紗がそっと遮った。
「私も兄様も、こう見えてエルゼリアの眷属です」
真珠色の髪が暴風に煽られて激しく踊り、兄を見つめる真剣な横顔を彩る。
「主と同じく行動力と度胸、そしてそれに見合う知能を備えています。相応の覚悟や自信がなければ、無理はしないはずです」
それに、と綺紗が続ける。口元にはごく淡い笑み。
「―――生身の身体能力に関しては、他の臣民を遥かに超越している」
とんっ。
空牙が軽く地面を蹴って助走、そこから徐々に加速。
風の悲鳴が耳をつんざき、周囲の光景が流れるように移り変わる。
サミュエルの指示を受け、ふわりと舞い降りたミレーユが空牙の行く手を阻んだ。
やはりサミュエルは相当手練れの術者だ、まだ余力があるのか。
シルヴィアとの戦いで消耗し、さらにミレーユを稼働させ続けた上にこの環境下でも動けるとは、驚異的な実力と言っても良い。
が、流石に派手な魔法は使えないらしい。ミレーユは傍にあった石柱を思い切り蹴りつけ、それを粉々に砕いた。
鎌鼬にも似た衝撃波。がら空きの腕、肩、脇腹、両脚に尖った破片が突き刺さる。
身体を貫通するかの如き激痛に、空牙が顔を歪めた。
異能も魔法も使えない、だからブロックすることはできない。
空牙はそれらを全て受け止め耐えていたが―――その刹那、全力で地面を蹴り、高く、高く飛び上がった。
宙で身を捩り、砕けた石の欠片のひとつを爪先で蹴る。
「な……っ?」
浮力も何もないただの小さな破片は、少年の体重を支えるには質量が足りない。
とんっ、その僅かな、一瞬の跳躍が次なる石へと空牙を届ける。
それが落ちるより早く、速く、空牙は飛ぶように足場を跳び移り、空中でひたすら前へと駆けた。
ついにミレーユの真正面に辿り着き、追い抜きざまに声を発する。
「ミレーユ」
直接攻撃を仕掛けようと構えていたミレーユの動きがぴたりと止まる。
感情の消えたはずの瞳の奥にごく弱い葛藤を見つけ、空牙は笑った。
「言ったよな? お前は俺の、ただ一人の相棒だって」
きっと声は届かない。
けれど―――想いは、届く。
「俺はお前を信じてる」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板