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ソラの波紋

22心愛:2012/09/21(金) 18:54:13 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp





「……何か言いたいことは?」


「「こいつが悪いんです」」


それぞれ後ろ手に縛られて床に正座している空牙とミレーユは、お互いを睨みつけて視線でバチバチと火花を散らす。


「ミレーユは空牙の命令通り動きましたです。ミレーユは悪くないのです」


「嘘つけ、森で好き放題に暴れ回ったのも駆けつけた警備兵を叩きのめしちまったのも全部俺の話を聞かなかったお前だろうが! 俺はちょっと兎とか鹿とか猪とかを頂戴しようかとしただけで」


「……多様な精霊が宿るミュシアの《精霊の森》では、狩猟は禁止されているのだがね……」


「すいませんでした……」


ダークエルフと思われる老爺に怒りの滲む口調で諭され、空牙は素直に頭を下げる。


「干し柿みたいなツラの小煩(こうるさ)いジジイの言うことを聞く義理はミレーユにはないのです」


「あっははははどーもすいませんこいつ常識に疎いところがあって!」


空牙は引き攣った笑顔を浮かべ声を張り上げて、敵意剥き出しのミレーユの冷罵を掻き消そうと涙ぐましく尽力。


空牙とミレーユが連行されて来たのはミュシアの王宮。
森の一部を破壊した上に、無駄に抵抗して罪のない警備兵を傷つけてしまった件について、二人してこってりとお説教を食らっているところだった。


「君、その人形のお嬢さんは危険だぞ? 責任を持って管理してくれたまえ」


「肝に銘じます……」


そのやり取りを見て、ミレーユが不満げに唇を噛んで俯く。


「……ミレーユは―――」




「―――あ、あの、《精霊の森》で暴れたっていう人たちは此処かな……ってああっ!?」




そっと扉が開かれる音がし、一人の青年が姿を現した。
色素の薄い金髪を肩まで伸ばしたその貴公子は声を上げるや、慌てた様子でぱたぱたと此方に走って来る。


「ユリアス様!?」



「き、君たち大丈夫っ? もう、駄目だよこんな乱暴なことしてっ」



二人の後ろに回り、不器用そうな手つきで、一生懸命縄を解いてくれる青年。


「ユリアス様、その者たちに近寄ってはいけません!」


「でも、このままじゃ落ち着いて話もできないし……」


青ざめる老人に柳眉を下げ、ね? と頼み込むように小首を傾げてみせて見事に彼を黙らせた青年は、そのまま空牙の背中に貼られていた、彼の魔力を封じる呪符を迷いなく剥がす。


「んと……これでよし、と」


淡い紅の瞳を和やかに細め、柔らかく微笑む。
中性的に整った美貌は何処までも麗しく何処までも清らか。
キラキラ輝く光の粒子を纏っているかのような錯覚さえも覚える。


「あ、有難う御座います……」


「ううんっ、気にしないで! 怪我はない? ……ああ、やっぱり」


空牙とミレーユの手首についた微かな傷を見て、青年は痛ましげに長い金色の睫(まつげ)を伏せる。


「いや、このくらい、俺もこいつも自然治癒できますし、全然大丈夫ですよ」


「でも、あう、えと、……ちょ、ちょっと待っててね。君も」


青年が瞼を閉じ、ほっそりとした手を二人の掠り傷に翳(かざ)すと、ぽぅ……、とあたたかな輝きが生まれ、



「―――彼らに眩(まばゆ)き祝福(ひかり)を与えよ……《福音(シュテルン)》」



「「な……っ」」



空牙とミレーユが、同時に息を呑む。



傷はみるみるうちに塞がっていき、一筋の線も残さず、まるで何事もなかったかのように二人の肌から綺麗に消え去った。



「今のは、回復魔法です……!?」



「うん。ごめんね、僕なんかが生意気だよね……」



受け継がれた異能ではなく魔法を使える魔族は、魔女(ヘクセン)が亡き今、ほんの一握りの数に過ぎない魔術師(ツァウベラー)しか存在しないはず。


「まさか、魔術師……?」


この青年が?



「えええ!? ち、違……っ」




「―――もう。無知にも程がありましてよ、空牙」




ふくよかな甘い声が、面食らったように瞬(まばた)く青年の言葉を遮った。


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