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ソラの波紋

182心愛:2013/03/22(金) 20:19:23 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp





ミレーユの消耗はたいしたことはないが、彼女に魔力を供給する空牙の方が限界だった。



「ごめんね、アレクってばドSで、つい愉しんじゃうんだよね……。刺突剣(レイピア)を持ち出さなかっただけましだけど」



「まだ何かあるのかよ……」



「あはは。それにしても、相手がぼくじゃなくてよかったよ」



シルヴィアは手に持っている銀色の十字架に唇を押し当て、柘榴石(ガーネット)の瞳を妖艶に細めた。




「―――うっかり殺しちゃうかもしれないから」




ゾクッ―――と冷たいものを感じ、空牙とミレーユが一様に顔を引き攣らせる。



「でも、アレクとこれだけやり合うなんてすごいよ。冥界でも五指に入るんじゃない?」



「……あ、はは……そ、そうかな」



最強の名を冠するシルヴィアに誉められた嬉しさより、純粋な恐怖が勝る空牙だった。



「仕方ないですね。今日のところは勝ちを譲ってやるですよ」



「うん。君はかなり強いけど……今度も負けないよ」



敵意の火花を散らすミレーユに、アレックスは悠々とした笑みで応える。



「ふう。空牙が役立たずな所為で不本意な結果になりましたが、思い切り暴れてゴミ虫との二人旅の間のストレス発散ができたですから、良いとしますですか」



「酷い言われよう……」



空牙が回復してきたとほぼ同時にミレーユの毒舌も復活。
ふわりと浮き上がり、ミレーユは空牙のコートを引っ張って彼を急かす。



「さっさと行きますですよ、空牙」



「そんな急に!? み、ミレーユさーん? 俺、まだ動きたくないなー、なーんて」



「このまま引きずって行くです?」



「やめてお願いだから!」



渋々立ち上がった空牙に、シルヴィアがにこやかに微笑んでみせる。



「二人から奪っちゃった仕事については、目を瞑ってくれるようリリスに頼んでおくよ」



「それは助かる。……あー、ところでアレックスさん、最後に訊いておきたいことが」



「俺に?」



アレックスが器用に、片眉だけを上げる。
空牙は、己を打ち負かした彼をしっかりと見て言った。



「はい。貴方はかなりの才人のようなので」



「……へぇ。逢ったばかりなのに、案外良く見てるね」



アレックスが感心したように。



「その通り。永い刻を生きているから、それなりに物は知っているんだ」



「それじゃあ」



不思議そうにしているシルヴィア、ミレーユ。
同時に彼女らの反応をも窺うように―――




「―――“ネクタル”って、ご存知ですか」




瞬間、悪魔の双眸に不穏な光が輝いた。



「何処でその名を?」



「姫―――リリス姫から聞いたんです。気をつけろ、って」



アレックスはしばらく黙って考えている様子だったが、



「……なるほど」



やがて、納得したように呟く。



「そういう、ことか。流石は彼女」



「アレク? どうしたのさ」



「……ああ、ごめん。話の途中だったね」



何もない風を装い、空牙に再度向き合う。




「ごく小さな魔術組織だよ。機械人形(マシンドール)の生産や開発に関わっているらしい」




「機械人形……!?」



空牙は息を呑む。


あのリリスが、意味のない忠告をするはずがない。
おそらく―――いや、間違いなく、ミレーユに関係があると考えるべきだ。



「ネクタル? 機械人形? ……何の話です?」



当のミレーユは何も知らないようで、金の瞳をぱちくりさせている。



「どうする、空牙」



アレックスは、にやりと野性味溢れる笑みを浮かべた。
上品さが漂う絶世の美貌も相俟ってか、そのような表情も妙に様になる。



「本部の研究所は、此処から割と近いよ?」



彼がつらつらと述べた座標は、確かにこの地点から遠くはない。



「……ミレーユ」



空牙は訝しげな顔のミレーユを見つめた。



「お前の謎が、分かるかもしれない」



ミレーユが緊張で身体を強ばらせる。


―――圧倒的な美しさと機能性、さらには確固たる自我の所有。激しすぎる魔力の消費量。

彼女を取り巻く、数多の謎。


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