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ソラの波紋

129心愛:2013/01/18(金) 20:44:16 HOST:proxy10038.docomo.ne.jp






『大したものだよ、君は。まだ幼いのに、こんなにも強い心を持っている』



『……わたしを愚弄しているの?』



『まさか』



不愉快そうに眉を跳ね上げた少女を宥めるように。



『君の覚悟に敬意を示して、一つだけ良いことを教えてあげる』




悪魔は彼女の耳に、その薄い唇を近づけて低い囁きを落とす。




『随分と酷い亡くなり方だったみたいだけど、君の御両親と兄上は、無事に天国へ運ばれたよ。これから永久に、神に愛されて幸せに暮らし続けるだろうね』




『……当然、よ』




ほっとして一瞬だけ緩んだ表情を誤魔化すように、少女はわざとらしく声を取り繕う。


宙に浮いた青年が微笑ましそうに表情を和らげ、空中で頬杖をついた。





『……それで? 君の、本当の望みは何?』




少女が顔を上げる。





『――――強さを』





悪魔の瞳が、濁った血の色から、熾火(おきび)の色に変わった。
鈍い光が灯る。




『兵の本隊が到着するまで、父も母も、兄も勇敢に戦ったと聞いたわ。それでも、敵を倒すには及ばなかったの』




おぞましい魔獣。
愛しいひとたちの命を奪ったあの化け物の姿を思い起こす。
怒りに狂い、哀しみに沈みたくなる過去の自分を必死に心の奥へと封じ込め、少女はさらに言葉を紡ぐ。




『……わたしは―――』




言いかけて。
少女は首を横に振り、




『―――ぼくは、兄に代わって、ファローズの家督を継承しなくてはならない』




今は亡き兄の、屹然とした口調を真似る。


いずれは王位を継ぎ、立派な王となるはずだった兄。
少女は、彼の務めるべきだった役割を全て引き受け、完璧に彼の代わりを果たそうとしていた。




『だから、託されたもの……ファローズの民を守れるだけの―――あの化け物を、滅すことができるだけの、強さを』




復讐の姫と化した少女は、凛然とした決意が輝く瞳を上げた。




『……大それた夢だね、と笑いたいところだけど』




優しく、悪魔が笑む。




『君なら案外、難しくないことかもしれないな。魔力的な強さ、とは、本人の精神力に左右されるから―――鋼のように強靭な、不屈の心を持つ君なら、ね』




悪魔が窓枠に腰掛け、巨大な翼を広げる。
黒い羽根がひらひらと舞い散り、少女の胸を軽く叩いた。




『俺はその成熟を早める手伝いをしようか』




少女の頬に手を伸ばす。
ぐい、と自分の方へと引き寄せ、口元を綻ばせた。




『絶対的な、この世界で一番の“強さ”を君に与える』




尖った爪が滑らかな肌に微かな傷をつけるが、少女は眉一つ動かさず、目の前の美しい青年を見据え続ける。




『じきに、この世界の誰もが君に跪くだろう』




『……そうなるよう、期待しているよ』




不敵な笑みを返す少女。


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