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邪気眼少女の攻略法。

212心愛:2013/01/03(木) 18:57:11 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp







年上の意地と男の見栄が対立し、奢(おご)る奢らないで揉めた後。



「先輩は電車ですか?」



「や、迎えが来てるはずなんだけど……」



店を出れば、空はもう赤とオレンジ色の綺麗なグラデーションに染まっていた。


きょろきょろ辺りを見回す美空先輩が、やがて。



「あ、いたいた」



彼女の視線の先に、いかにも高級そうな黒塗りの外国車。

小市民の俺はつい気後れして後ずさる。



「え、あれですか本気で……なんか誰か出てきたんですけど!?」



運転席から降り立ったスーツ姿の若い男(イケメンだ)が扉を開けるのを見た先輩は平然と言う。




「執事だから気にしないでいいよ」




「執事ぃ!?」



どこの大富豪だそれってそりゃ結野家でしょうけど!




「うん、運転手兼あたし専属の執事。別名人間目覚まし時計」




社長令嬢ってみんなこんな待遇なのっ!?



「……はは……格差社会、か……」



なんかもう驚くどころじゃなくなってくるよ。
あれか、美羽のワガママが許されるのも高そうなのに毎日違う服着てるのもみんな金持ちだからか。はは、次元が違うわ。さすがブルジョア。




「じゃーね圭くん! 今日はありがとう!」




いつの間にか数歩離れていた美空先輩の声に、一人黄昏ていた俺はやっとのことで立ち直る。



「美羽ちゃんのこと、頼んだよ!」



「……はい!」



夕焼け空。
赤い光の乱舞を背景に、きらきら艶めく二房の黒い髪が軽やかに踊る。

小さく華奢な背中を向け、ゆっくりと歩を進めるその姿はまるで映画のワンシーンのように美しく、胸に迫る光景で―――




びったぁぁぁん!




……見たらだめだ見たらだめだ見たらだめだ。


せっかくのいいムードが台無しになりそうな、背後からの何かと何かの激突音を精一杯の努力をもって聞かなかったことにし、ダラダラ汗を滴らせながらも俺は反対方向へ早歩きで立ち去ったのだった。







☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜







「美羽、美空先輩のことどう思う?」



「な、なんだ急にっ」



次の日の休み時間。

もはや言うまでもなくゴスロリの美羽は、急な話に戸惑っていた。


黒い薔薇と羽根、レースをふんだんに使ったヘッドドレスのリボンが、主の動揺を表すようにひらりと揺れる。


「いいから」と押し切ると、渋々ながらも一応答えてくれた。



「……美空は……ぼくとは真逆にある存在だな」



唇に丸めた指を当て、



「ぼくが《闇》ならあれは《光》。正しくて、ぼくなんかが見るには眩しすぎる、圧倒的な……光」



でも、と前置きしてから。



「月が太陽に照らされて初めて輝くように、光があって初めて闇が生まれる。……なんとなく、そんな感じだな」



いつもの中二台詞だけど、言っていることはあながち嘘じゃないような気がした。



「でもその真逆の位置から、必死にぼくのために色々考えている。……たとえば、美空が勉強や運動を頑張って、やりすぎなくらいに目立つことは……半分くらいはぼくのためなんだ」



「美羽の?」



「ああ。潜在的な才能だって大きいけれど、それを日々努力して磨いているのは美空自身で―――『あの結野先輩の妹』という肩書きだけで、ぼくはいくぶん、周りから肯定的に見られてきたから」



美羽の言うとおり、きっとそれは美空先輩の計算のうちなんだろう。

自分は美羽に、ずっとつきまとうことはできない。
だから、少なからず間接的に、美羽を守ってきたんだ。

先輩が活躍していろんな人から注目と尊敬を集めれば自然と、その妹である美羽も一目置いてもらえる。
異質な存在である美羽への風当たりを、緩和することができる。


……先輩はやっぱり頭がいい。
その才と優しさを惜しみなく注ぎ込まれ、愛されている妹の方は。



「何をするにも派手で、なのにドジで、肝心なところで抜けているが」

213心愛:2013/01/03(木) 18:58:01 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp






ちょっとだけ恥ずかしそうに、はにかんだ。




「……たった一人の、ぼくの自慢の姉だよ」




多分、自覚はないんだろう。
顔を逸らすことも忘れて、小さく笑う美羽の柔らかな表情。


ああ、美空先輩に見せてあげたかったな―――と思った、
その瞬間。

俺のポケットで、ブーッブーッとバイブの音が鳴り響いた。


「電話か?」と怪訝な顔をする美羽に断って画面を確認。




「あ、美空先輩だ」




「…………は?」



通話、っと。



『もしもし圭くーん? 美羽ちゃん元気? 倒れてない? もーどんなに言っても朝ご飯食べてくれないからいつも心配で居ても立ってもいられなくてさー! 圭くんの電話番号聞いといてよかったよもー!』



「シスコンもいい加減にして下さいよ!」



繋がった途端にものすごい勢いで喋り出す美空先輩に心底げんなりする。



『だって美羽ちゃんに聞いたらうるさいって言われちゃうし』



「知りませんからそんなの……」



『大事なことだよ!』



電話口の向こうでぎゃんぎゃん騒いでいる先輩に嘆息し、それからふと思いついて、いくぶん息を潜めて言う。



「そういえば先輩、一つ聞きたいことがあったんですけど」



『んー?』



「昨日『高校生の恋愛反対』みたいなこと言ってたのって……もしかしてわざと俺を試してたんですか?」



美空先輩が一瞬だけ黙り込み。



『……さぁ?』



どうだろうね、と笑った。


『圭くんの判断に任せるよ。とにかく、今のあたしは圭くんを信用して、期待してるってこと』



「はぁ……」



上手くかわされた俺の隣では、美羽がさっきから必死な顔で何事か言っている。



「……ま、待てヒナ、君はいつ美空と知り合いに!? そういえば名前で呼んでるし……っ」



『あっ忘れてた! あとお昼も言わないと摂らないから無理矢理にでも食べさせて! 甘いもので釣るのもいいんだけど栄養的に考えて徐々に』



「先輩まで俺を美羽の保護者扱いするのやめて下さいませんかね!」



食事は大切だけど!



「だからなんの話だ!? 主に隠し事をするんじゃないっ」



「ヒナ、もしかして相手美空先輩? いいなー、私にも代わってよ」



「? みくせんぱい?」



「あー、夕紀は知らないか。美羽のお姉さんでダンス同好会の」



「うっそ結野センパイ!? あの!? ちょ、抜け駆けしてんじゃねーよヒナ!」



「お前ら全員黙ってろ!」



これだから人気者は……!



『なんか賑やかだねー。こっちは廊下出て歩いててさ、静かだからよく聞こえるー』



「転ばないで下さいよ……?」



ただでさえ絶望的なまでにドジなのに、電話に気を取られて不注意な状態はことさらに危険すぎる。



『あはは、やだなぁだーいじょうぶだっ《ゴンッッ》』



「言わんこっちゃねぇ!」



お約束だなおい!



『……う、……うぅ………こ、転んではないもん! 足滑らせて転びそうになったけど目の前にあった壁にぶつかってちゃんと止まったからセーフだもんっ』



「余計救いようないですよ!」



「救いようって……美空がまたなにかしでかしたのかっ? そうなんだな!?」



俺のツッコミ生活に、個性派すぎるメンバーがまた一人追加された。
……やっぱりサポートも当てにしない方が良さそうだ。うん。

214心愛:2013/01/03(木) 19:05:39 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんなわけで美空の話でした!

ここあキャラの基本ステータス「優しい」を備えつつ、頭良いからちょっと人より冷めたところもあれどドジのせいで全然決まらない・究極シスコン美少女美空先輩をこれからもどうぞよろしくヽ(≧▽≦)/


ちなみに美空はちゃんとヒナに協力していくよ!ドジなりに!

215ピーチ:2013/01/03(木) 19:11:25 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

みーくせーんぱーいっ!?

何をどうやったらそこまで綺麗にドジれる!?

……美羽ちゃーん、お姉様を呼び捨てはちょっと………

216心愛:2013/01/04(金) 18:05:25 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美空のアレはむしろ才能の一種w


まぁ、一つしか年離れてない姉妹なら、呼び方も含めて結構遠慮ないんじゃないかなっと。
美空は溺愛しすぎ?

217ピーチ:2013/01/04(金) 20:33:28 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、そう考えたら自然か←おい

なるほどねー、分かるかもw

でもそーいうのが未空先輩の長所の一つw

218心愛:2013/01/04(金) 21:32:16 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「美空」ね!
美空の「み」は「美しい」ね!
と細かいとこにうるさくこだわるここあでしたごめんなさい。


「未空」も可愛いけどw

219ピーチ:2013/01/04(金) 22:49:13 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

間違えたー!?

ごめんなさいここにゃんごめんなさい美空先輩!!

何か最近ちょー適当に変換してたので気を付けねば!←

220心愛:2013/01/05(土) 17:15:01 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいや大丈夫だよ!
細かくてごめんね!

間違って変換しちゃっててずっと気づかなかったことここあもよくあるよ(・∀・)


邪気眼少女も、苺花&夕紀の話とか美空の話とか書きたいから番外編やりたいんだけどなかなか余裕が←
とりあえず日常編を巻き気味にしてイベント多く入れることで対処っ(´・ω・`)

221心愛:2013/01/05(土) 17:16:45 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

『王子のお悩み』






「……わ」



「ラブレターですかはいはい良かったですねー」



靴箱の扉を開いて停止しているイケメン女に半眼で言う。
柚木園はこちらを向き、困ったように苦笑して、



「……ええと……果たし状とかもあるかもしれないよ?」



「ねーよ! 下手な慰めいらないから逆に傷つくから!」



相変わらずのアホみたいなモテっぷりで羨ましいことですねぇ!


予想通り、正方形の空洞の中に紙がみっちりぎっしり綺麗に詰まっていた。
漫画みたいにズザザザザッとは落ちないだろうけど地味に嫌だなこれ。
入れるのも大変なら取り出すのも大変だろ。
ってか今は放課後なんだから、朝から今にかけてこんなにたまったってこと? 怖くね?



「あはは、圧力で靴の形が変わりそう」



にこやかに笑いながら丁寧に封筒を抜き取って回収している柚木園。



「……にしてもいまどきラブレターって……」



しかも女が女に。



「気持ちは手紙で伝えてくれても嬉しいなー、ていつも言ってるからね。可愛い女の子たちが一生懸命私のために綴ってくれた手紙なんて最高でしょう?」



「犯人お前か! 毎回橋渡しさせられるこっちの身にもなれよ!」



「ごめんごめん」



黒糖みたいに甘い瞳を細めるだけで、さらさら爽やかなハーブ色の風が吹き抜ける。



「はー……。で、これからデートですか?」



「そう怒らないでってば。今日は大丈夫なんだけど、放課後はだいたい忙しいから、お誘いは全部断ってる」



「あれ、部活やってたっけ」



「やってないよ」



「へー。キャラ的には部活の助っ人に引っ張りだこ、みたいな感じだけど」



「なにそれ」



笑って肩を竦める彼女。



「確かに色々勧誘されたけどね。今は演劇部に、文化祭で手伝ってくれないかって言われてる」



「あー。王子役を?」



「うん」



やっぱりか。



「でも劇にはあんまり良い思い出がなくて」



「……それは意外。喜んでやりそうなのに」



「いや、楽しいよ? 楽しいんだけど」



柚木園は無駄に麗しい微苦笑で、



「私が参加するって決まった途端に、お姫様役を巡って女の子の血で血を洗う熱戦が展開されちゃうから」



「どんだけ!?」



「私としては、そういう女の子がみんなハッピーで終わる話がいいんだけどね―――そう、」



それからふっと遠い目をして。




「懐かしいなぁ、『王子様と27人のシンデレラ』」




「無茶苦茶すぎる!」



それ話として成り立つの!?



「王子との結婚条件である一足のガラスの靴を巡って女同士の陰険バトルが繰り広げられる」



「ドロドロだ!」



「最終的にはシンデレラは全員王子と結婚するんだけどね」



「まさかのハーレムエンド!?」



完結後の凄惨な修羅場を予感させるエンディングだった!

222ピーチ:2013/01/05(土) 23:13:50 HOST:EM49-252-160-154.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ち、血で血を洗う熱戦………?

怖いよ27人怖いよー!?

223心愛:2013/01/06(日) 10:53:34 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒロイン27人もいたら観客大混乱だね☆

ハーレムハーレムw

224ピーチ:2013/01/06(日) 19:15:33 HOST:EM114-51-207-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

観客も演じる方も混乱しそうな気が←

ハーレムーw

225心愛:2013/01/07(月) 09:55:25 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp






「幼稚園とか低学年だとゆるいからそういうのもアリなんだけど、だんだん融通利かなくなるからね。ラブストーリーとしては無理があるし」



「この年齢でやったら完全コメディ一色だな」



「それに練習する場所も、体育館とかを取ってもらわないと」



「運動部が使ってるんじゃね? 体育館じゃなくても普通の教室で別に―――」




「いや、噂を聞いて練習を見に来てくれた女の子の入りすぎで、教室のドアが壊れたことがあって」




「練習で!? 本番じゃなくて練習の段階で!?」



「あれは私が怒られたしね」



にこやかに笑っている柚木園に戦慄する。



「……ムカつくはずなのに全然ムカつないのは何故だろう……」



「あと、調理実習のクッキーやバレンタインのチョコの食べ過ぎでお腹壊して倒れたときも良く怒られたなぁ」



「あ、今純粋にイラッときたわ」



「保健医の先生も美人だったからむしろラッキー」



「先生の顔より自分の体調を気にしなさい!」



「だって私のために作ってくれたものなんだよ? 全部もらって一人ずつ感想を言わないと」



「少しは懲りろって! 気ぃ遣ってる場合じゃありませんから!」



「気は遣ってないよ?」



にこ。と笑い、



「みんなが一生懸命頑張って作ってくれたものは全部、どんなに刺激的な味がしたとしても、素直に美味しいって思う」



「なんつーか……すごいよなお前」



「そう?」



さらりと髪が揺れる。




「私は、この世のすべての花を愛しているだけだよ」




中性的で凄艶な美貌に甘い微笑みを湛える柚木園は圧倒的に、綺麗、で。


……なんて言うか。
性別を誤解してた俺が言っても、説得力はないかもしれないけど。




「……ちょっと工夫したら、普通に男にもモテそうなのに」




ちゃんとした女物を着て化粧の一つでもすれば、元の素材がこれなんだから相当の美人になるなんじゃなかろうか。
姫宮が言うような「可愛い」感じとはまた違いそうだけど、俺と並んでもほとんど変わらない背の高さだって、上手くすればモデルみたいに映えることだろう。



「…………」



思わず口に出してしまった言葉に、柚木園は驚いたように押し黙り、目を丸くして俺を見ていたけれど、



「……無理があるよ」



ぽつりと呟く。
力がないのに、不思議と本人の頑なさが感じ取れる声だった。



「そういう対象の、女として私を見る人なんかいないって。……ほら私、並みの男より格好良いから?」



おどけた笑みと共に告げられたそれは、本心からの台詞のようだった。



「……そうでもないんじゃね?」



「えー。そこそこ自信あったんだけどな」



「いやそっちじゃなく」



学年が違う美空先輩も、柚木園が女だってことを知っていたけど、その上で慕っていたみたいだった。

でも周りに集まってくる女子みんなは、まさか本気で柚木園を恋愛対象として見ているわけではないと思う。
もちろん容姿目当ての娘だっているだろうけど、でもほとんどの人たちはみんな、柚木園の人柄に惹かれてるんじゃないかな。
親しみやすくてさっぱりした性格は、男から見ても十分魅力的だし。


ただ、本人はそうとは思っていないどころか、女としての魅力がないと堅く信じ込んでしまっているようで。

何か事情があるのだろうか。



「悩みとかあったら聞くけど」



「……ありがとう」



あれ、ちょっと可愛い……か、も?
一瞬だけ浮かべたふわっとした微笑に、何故か顔が熱くなる。



「いや別に」



「でもたいていのことなら、悩む前に自分で何とかできるから大丈夫」



「かっけーなおい!」



やっぱり柚木園はイケメンだった。

226心愛:2013/01/07(月) 10:02:24 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ハーレムーw

苺花の女装回も近いようだねふふふ←


そんなわけで(どういうわけだ)ちょっとの間更新お休みします(=⌒ー⌒=)

227匿名希望:2013/01/07(月) 13:56:17 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
何の話ですかこれ・・?
ウンコしてもいいですか?

228匿名希望:2013/01/07(月) 13:57:28 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
ウンコしますよウンコ
ウンコスレ

229ピーチ:2013/01/08(火) 14:43:40 HOST:EM114-51-155-248.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ハーレムー!w

いや女装じゃないでしょ女でしょ!?

お休みですか、りょーかいでーす!←

230心愛:2013/01/12(土) 10:51:34 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

『日永彩』





「お兄ちゃんやほー!」



ざわっ。


昼休みの教室に不穏な波が立つ。


長めのボーダーTシャツの上に毛足の長い白のニットカーディガン、トレンチ風ミニスカートという出で立ち。
入り口に立っていたその娘(こ)が「いた!」と笑顔になってこっちに寄って―――




「彩(あや)っ!?」




……俺の妹、なんだけどね。



「そのとーり! お兄ちゃんの救世主彩ちゃん参・上っ☆」



「語尾に星マークつけてる場合か! ちょ、学校どうしたんだよここ高校だから!」



「あれ、言ってなかったっけ?」



首を傾げると、シュシュを使って頭の左側でまとめた髪がふわふわ揺れる。



「彩、今日創立記念日だから学校休みなの」



「……それで?」



「暇だから南高に私服潜入してみた! てへり」



「出てけぇ―――――!!」



この学校の警備緩すぎですから!



「ひどい……っ! お兄ちゃん、彩のこといらないんだっ! 飽きた女の子はみんなポイッてするんだぁああー!」



「悪意百パーセントの泣き真似やめい! 誤解されたらどうするんだよ!」



教室の隅を陣取って談笑していた女子たちは「誰だろ」「かわいー」などと比較的好意的な目を向けている、けど。



「……ヒナ、そちらのお嬢さんはどちら様かな?」



グサグサ突き刺さる男子のどこかじとっとした視線。


嘘をついても仕方ない。

ここまできたらもう腹を括ることにし、ため息をついて正直に白状する。




「……妹」




しーん。




「…………もしもし警察ですか」




「誰だ今通報した奴! やめんか!」



『犯罪者の通報、被害者の速やかな保護は市民の義務』



「安心しろ、犯罪者でもないし被害者でもないから! これは俺の妹なんだってば!」



『嘘だっっ!』



「お前らチームワーク抜群ですね!」



驚異のシンクロ率だった!



『ヒナの妹がこんなに可愛いわけがない』



「ラノベか!」



「お兄ちゃん、そのツッコミはどうかと思うよ?」



冷静に訂正してから、彩はにこにこっと余所行き用の笑顔を浮かべる。



「彩、ほんとにお兄ちゃんの妹です! うちのバカ兄がお世話になってる皆さんに会いたくて来ちゃいましたっ」



『失礼致しました彩様。ようこそ愉快な動物園へ』



「あっさり色々なもん捨てやがったこいつら!」



この手のひらの返しよう!




「うっそヒナの妹ちゃん!? かわい―――――うがッ」



ガスッガスッガスッ


武闘派男子生徒、ついでに参加した柚木園の奇跡的な連携プレーによって、春山が登場三秒で袋叩きにされ、五秒で簀巻きにされてベランダに転がされた。



「アッこの絶妙な締め付け具合……ッ! はぁはぁ」



「お兄ちゃん、彩の気のせいかな。チャラい金髪不良攻め風の美形さんが今集団で暴力を奮われた上に教室を放り出されたように見えたんだけど……」



「気のせいだ」



ぽかーんとしている彩を諭していたら、青い顔をした美羽がおそるおそる近づいてきて。



「……ひ、ヒナ……誘拐は犯罪だぞ?」



「まだ疑ってたの!? 妹だよ! 正真正銘実の妹だよ!」



「ゴスロリってことは美羽さんですよねっ? マっジっ美っ少っ女! 写メっていいですか?」



「いいわけあるかい!」



「ひぅ」



目をキラキラさせてかぶりつかんばかりに身を乗り出した彩に怯え、美羽は俺の後ろに隠れてしまう。



「ふ……わ、我が眷属の肉親ということは、君も《赤闇》の血を分けた者というわけか……」



「リアル中二病発言きたぁああ―――!」



「ひゃ、ぅぅ」



「美羽泣かせてんじゃねぇよボケ」



「おおっ、お兄ちゃんが顔に似合わないイケメン台詞を!」



「ひでぇ!」



と、次に騒ぎを聞きつけた女子が寄ってくる。



「学校どこ?」



「西中です」



「あ、じゃあ結構近いねー。何年生?」



「当然のように受け止めんなよ! こいつ中学生!」



「お兄ちゃん頭固いね、彩ちゃん」



「はい。彩も困ってます」



「嘘つけっ!」

231心愛:2013/01/12(土) 10:56:46 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女装女装w
ハーレム王子はむしろいつも男装してるからね←

そのわけは苺花目線でいつか書こうと思う(o^_^o)

232矢沢:2013/01/12(土) 11:05:24 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
聖詞置いてくね。

233ピーチ:2013/01/12(土) 13:25:24 HOST:EM114-51-186-68.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの学校来ちゃった!

確かにすげぇシンクロ率!

……そんなに似てないの?←

234名無しさん:2013/01/12(土) 17:14:29 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
何だこのスレは・・?
変なスレ来てしまったな〜

235名無しさん:2013/01/12(土) 17:15:11 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
何なんだこの変なスレは・・?
名無しさん・・しっかりしてくれよ

236たっくん:2013/01/12(土) 17:25:34 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
jj

237心愛:2013/01/12(土) 20:33:31 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp







女の子が来たときたら、こいつが黙っているわけがない。



「初めまして」



白い歯をキラリと光らせた、爽やかスマイルの柚木園である。
イケメン大好き(主に二次元でだけど)な彩はもちろん大興奮。



「ほわぁー! 最高レベルのイケメンですねテンション上がるぅ! 柚木園さん、で合ってますか」



「うん。ヒナから聞いてる?」



「ほぅ……見た目的には鬼畜美人攻め把握」とか何とかぼそぼそ小声で呟いてから、ぱっと顔を上げる。



「はい! いつもお兄ちゃんと仲良くして下さってありがとうございます!」



「こちらこそ。……でも私としては」



すっと顔を近づけ、色気漂う妖しい笑み。



「君とも色々、仲良くしたいな……?」



「でも柚木園さん、女の人ですよね?」



よしよし。
うちの妹はそう簡単にオチないようだぞ柚木園よ。

と思ったら、柚木園はにこ。と笑って一言。



「恋愛に性別なんて関係ないよ」



「で す よ ね !!!」



「やべぇオチたっ!」



ものすごいチョロかった!



愕然としていると、



「初めまして! 僕、姫宮夕紀です。よろしくね」



柚木園の後ろからひょこっと顔を出した姫宮がにこにこして挨拶。



「こ、これが男……」



彩も驚きを隠せないようだ。
色々な角度からパーフェクト美少女ルックスの高校生男子を眺めては、「ほへー」と呆ける。



「天然なんですよね」



「? うん」



姫宮はサラサラした栗色の髪を一房つまみ、



「確かに茶色っぽいけど染めてないよ。……でもなんで急に髪の話?」



「これぞ本物の天然!」



彩が驚愕していた。



「……やー、凄いキャラばっかりの方々ですねー。本当に―――」



美羽、柚木園、姫宮、ついでに床を匍匐前進している春山を見て、最後に俺に向けて哀れみの眼差し。



「美形ばっか……お兄ちゃん可哀想……」



「余計なお世話だちくしょぉぉおおおおお!」



承知してるわ! 悲しいくらい承知してるわっ!



絶叫する俺に「うん、彩はこれで満足したからー」と悪魔のような笑みを浮かべ、彩はそれから声を張り上げる。




「皆さん聞いて下さい! 彩、小学校五年生までお兄ちゃんと一緒にお風呂入ってたんですよー!」




「急に話の流れ完全無視の暴露しやがったこいつ―――!」



何がしたいんだよこの悪魔! 人でなし!

238心愛:2013/01/12(土) 20:35:25 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

来ちゃった☆


うん、似てるのは髪の質くらいじゃなかろうか。
彩は美少女でも美人でもないけど普通に可愛い系です←

239ピーチ:2013/01/12(土) 21:27:41 HOST:EM114-51-132-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

来ちゃったよー!

髪だけか似てるの←

普通兄と可愛い系妹かー、何かいーなーw

240心愛:2013/01/13(日) 09:02:59 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp






「―――これより刑を執行する」



『はっ!』



「またこのパターン!」



すちゃっとサングラスを装着した男子数十名によってすぐさま取り囲まれる俺。何これ新手のイジメ?



「待てってば! つか一番責められるべきなのは俺じゃなくて勝手に高校に侵入してるあいつだから!」



「本来なら即絞首刑の運びだが」



「無視? ねえ無視?」



「仕方ない。武士の情けだ」



「お前武士だったの?」



「特別に選択権をやろう。ありがたく思え」



カカカカカッと鮮やかにチョークの白い軌跡が黒板の上に踊る。



“切る”
“もぐ”
“砕く”
“折る”
“潰す”
“焼く”
“刺す”
“煮る”
“刻む”



おかしい。俺が生き残れる選択肢がない。



「何その夢のような選択肢ッ!」



「失せろドM!」



尺取り虫みたく這って来た春山を迷わず蹴り飛ばす。
人間じゃなくて変態だからセーフのはずだ。



「って違う! 俺を美味しく調理してどうすんだよ死ぬから! 死ぬから普通に!」



「では、屋上から命綱なしのバンジージャンプで手を打とう」



「人はそれを死刑と呼ぶ!」




「……はわ……」



「美羽さん美羽さんっ」



かくして、クラス中の注意をまんまと逸らした彩が、苦笑いして俺たちに見入っている姫宮と柚木園からすっと離れて美羽に接近。



「レンオー好きなんですかっ?」



「え……ま、まさか君も?」



マイナーなお気に入りを共有したヲタクは急速に仲良くなるの法則、発動。



「好きなキャラは?」



「……シルヴィア」



「やっぱりー? 絶対そうだと思ったんですよ! かっこいーし可愛いですもんねシルヴィア!」



「……ん」



嬉しそうに頬を赤らめて、喋りたいのに自制してる様子で口を小さく《△》の形にしてる美羽。
……おいおいなんかすげぇ好感度上げやがったぞうちの妹。

彩はによっと笑うと、



「彩、美羽さんともっとお話したいなー。……」



軽く屈み、美羽に何事か囁く。



「……ヒナの?」



「はい! 嫌じゃなかったら、ですけど。来週の―――」



「……ふ、ふん、奇遇だな。偶然、その日は《純血の薔薇(Crimson)》の任務も会合もない」



「やたっ」



「やたっじゃなくて助けろよそこの腐れ女ぁ―――!」



結局、クラスメイトとの心温まるスキンシップは「あ、やば予鈴鳴った」と全ての元凶が帰るまで続いたのだった。



……ほんと、何のために来たんだよこいつ。

241心愛:2013/01/13(日) 09:06:15 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

カッコいい兄と普通の妹、だったら妹可哀想だけどね←

彩の行動原理はお兄ちゃんにあり! ついでに面白いものにあり!

242たっくん:2013/01/13(日) 11:04:29 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
最新情報・・・
1992年発売のビジュアルアドベンチャー
孫悟空を落札しました。
今後も落札しますので宜しくお願いします

243名無しさん:2013/01/13(日) 11:38:20 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
>>1
とっとと金よこせ
持ってるんだろ?
お年玉もらったんじゃないのか?

2、3万でいいから持って来い

俺は夢を決してあきらめない そう教わった

244名無しさん:2013/01/13(日) 11:38:44 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
とっとと金持ってこいよ
脅しじゃないぞ

245ピーチ:2013/01/13(日) 21:03:49 HOST:EM114-51-209-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

至って普通の兄に普通の妹も可哀そうだと思うぞ!?

人はそれを死刑と呼ぶ! 台詞が面白いw←

246ちー:2013/01/13(日) 21:23:51 HOST:p3078-ipbf1807marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
やっぱいいね^^
何回も読みなおしちゃう^^
比喩とかうまい具合に使ってるしね^^
普通の人が、うまい小説書こうとすると、ツンデレっぽくなるんだけど、ぜんぜん、つんでれっぽくないしね^^
(それいぜんに、ふつうのひとでもないかw神だねw)

247ちー:2013/01/13(日) 21:24:13 HOST:p3078-ipbf1807marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
なんか上から目線でごめんなさい><
悪気はなかったので…

248心愛:2013/01/14(月) 09:59:54 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

まあね!
ただ劣等感の問題だよね(´ー`)
ここあ、基本美形ばっか書いてたから主人公が平凡ってちょっと新鮮w

ヒナのツッコミはリズム感を大切に書いてますありがとう!(ぇ



>>ちーさん

こっちにまでコメありがとうございます!
いやいや、自分なんてまだまだですよ←
アホなんだかシリアスなんだか良く分からない話ですが、ご愛読戴けたならとっても嬉しいですw

249ピーチ:2013/01/18(金) 20:10:56 HOST:EM114-51-30-88.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

劣等感w

あたしだったら美形か思い切って平凡以下にするかも←え

いやリズム感ありすぎだよね!

250心愛:2013/01/18(金) 20:52:14 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>ピーチ

平凡以下いっちゃうかw
美形に囲まれる平凡またはそれ以下っていうのはけっこう定番かもね←


ツッコミ担当には常識だけじゃなくリズム感……音楽的才能まで求められるのかもしれない(笑)

251心愛:2013/01/18(金) 20:52:44 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

『ドッジボール』





そういや昔、“ドッチボール”と“ドッジボール”の違いが分からなくて混乱したっけ。
“ドッチ”は“ドッジ”の訛りらしいけど。
でも、俺だけじゃなく周りもよく混同してるのは田舎だからなのか、それとも全国でも普通のことなんだろうか―――なんてことは、今はどうでもよくて。



「結野さんベンチ座ってなよ」


「本番もみうみうは応援係でよろしくね」



「う……ではありがたく」



「お前ら美羽に甘すぎるだろ!」



来週から昼休みを使って、クラス対抗のクラスマッチが全学年で行われる。
その中でも、ドッジボールは男女とも強制参加の種目なので、休み時間にこうしてクラスで集まって、自主的に練習をしようということになったわけだ。



「えー、だって結野ちゃんにボール当たったら骨折れそうじゃん?」



「それはない。……多分」



へらへら笑っている春山。

……まったく、こいつは紳士なのか、ただの変態なのか。


ピーッ!


試合開始を告げる(特に必要ないけど、気分を盛り上げるための)ホイッスルが鳴る。



「よっしゃあかかってこい柚木園! お前の熱い思い、俺が全身で受け止めてやるぜ!」



……間違いない、ただの変態だ。



春山の敵サイドに立つ柚木園は『イラッ』と爽やか王子にあるまじき表情を浮かべ、



バシィッ!



待て待て待て当たったら美羽じゃなくても確実に致命傷だよねこれ!



「ふっ、甘い!」



爽やか王子を挑発したバカは、バビュンッと恐ろしいコントロール力でまっすぐ飛んできたボールを余裕のツラで避ける。いや取れよ。


さらに、妙な気を利かせた外野が再度ボールを柚木園に返し。



「……次こそ仕留める」



「いーねいーね燃えてきたぁ! 思いっきり抉るようによろしく!」



ボールよ割れろと言わんばかりのスピードで繰り出される攻撃を、これまた人外の動きでことごとく回避していく春山。
二人の争いに巻き込まれてたまるかい! とひたすら逃げ惑う内野。


あれ、おかしいな。ボールがナイフか何かの凶器に見えるよ。



「……まいちゃんと春山くん、仲良さそうだね」



「どこが!?」



あちこち走り回りながらも、むー、と何故か面白くなさそうな顔をしている姫宮。
……正気か?



大分息が苦しくなってきたところで。



「ストーップ! 柚木園対変態の試合になってるから!」



俺はたまらず全員に聞こえるようにストップをかける。



「怪我人出る前に二人退場! お前ら絶対練習いらないくらい上手いだろ!」



「えー! まだ一回も喰らってないのに!」



「まあいっか。あっちで美羽と話してこよっと」



そんなこんなで超不満顔のドMとまんざらでもなさそうな柚木園が抜け、『(ほっ)』という心の声を聞きつつ普通にゲーム再開。



「っと」



そこで飛んできたボールを腕を伸ばしてキャッチする。
とりあえず近い相手にぶつけようと振りかぶった俺と目が合ったのは、



「ひっ」



女子の集団、である。



「………」



投げれば普通に当たる。いくら俺がド下手だったとしても、絶対に、当たる。


でもさぁ!



「………うん無理」



あきらめた俺はげそっとした顔で外野にパス。



「ヒナやさしー!」



「かっこいーよ!」



途端に沸き上がる女子のおだて。
うん、悪い気はしない。


そんな感じでみんなが女子を避けるので、男子同士の潰し合いが続いた結果、どちらの内野にも女子しかいなくなってしまった。


仕方なく俺たち男子は力を加減して、軽く転がすようにして脚を狙ったりふわっと優しく投げたり。

そのうち、ボールが姫宮の手にぽすっと収まった。
外野の男子が、内野に向けて口々に叫ぶ。



「やばい姫にボール行った!」



「女子は普通に投げてくるぞ、逃げろみんな!」



『きゃー!』



「問題発言が聞こえたような気がするのは僕の気のせい!?」



そういや姫宮が残ってるのに、俺もサラッと『女子しかいない』って片付けちゃったよ。


結局、何回かゲームを繰り返しても、相手側に女子が何人いるかが勝負の分かれ目となっていた。練習も何もない。

……ドッジボールってこんな競技だったっけ?

252ピーチ:2013/01/18(金) 23:01:17 HOST:EM49-252-50-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いや違う何か違うぞ!?

あたしドッジボール大っ嫌いだけどそれでもなんとなく違うぞ!?

253心愛:2013/01/19(土) 12:18:41 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

これ半分実話w

ここあの学校の男子はレディーファースト精神に溢れたジェントルマンさんなので、女子にボール当てられなくてね(´ー`)
男子がボール持ってるときは女子は完全に安心しきってるという。


ここあは体育全般壊滅的だけどひたすら逃げるのだけは得意(~_~;)

254ピーチ:2013/01/19(土) 23:51:26 HOST:EM114-51-41-177.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いーなーいーなー←

あたしの学校じゃ男女お構いなしだよ一部の女子が無茶苦茶強いから!

そのせいで男子のボールに当たっても女子のボールに当たっても基本的に痛いというw

255心愛:2013/01/20(日) 10:04:43 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女の子でも男子顔負けなくらい強い子っているよね(^-^;
かっこいいけど当たると痛い←

256ピーチ:2013/01/20(日) 17:09:47 HOST:EM114-51-128-112.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かにw

でもかっこいいより先にやっぱり痛い←

257心愛:2013/01/22(火) 20:17:38 HOST:proxyag069.docomo.ne.jp

『日永家のお客様』






「ようこそいらっしゃいましたー美羽さん! どぞどぞ」



「……お邪魔します」



薔薇のコサージュがくっついた小さな靴をきちんと揃え、緊張している様子でぺこっとお辞儀するゴスロリ少女。



「狭くて悪いけど」



「いや……良い家だと思う」



「そか?」



何故、生粋のお嬢様たる美羽が庶民感漂う俺の家なんかに来ているのか―――という話、なのだが。



「じゃあ彩は飲み物とか持ってくよ! ……その後は空気読んで若い二人に任せますしねむふふ」



「お前何歳だよ」



「ぇ、と……お気遣いなく?」



この彩が、いつの間にか勝手に美羽と“遊ぶ”約束をしてしまっていたらしく。

……全く行動が早い妹だ。

特に理由もないので反対することもなく、学校であらかじめ美羽に家の場所を教えておき、そのまま日曜の今に至る。



二階にある俺の部屋に行くために階段を上ると、数歩ぶん遅れて、遠慮がちでごく小さな足音がついて来る。



「で、ここが俺の部屋。適当に座って」



「……ん、む」



ちょこん、とミニテーブルの前に正座する美羽。


行儀が悪いことはもちろん承知だろうが、ちらっちらっと落ち着かなげに視線を走らせている。
お決まりの中二病台詞も出てこないらしい。


俺も、『自分の部屋に彩以外の女の子がいる』という状況は、なんか異常に緊張する。


とりあえず美羽の対面に腰を下ろし、胡座(あぐら)をかいてみた。



「……」



「……………」



……で……何、しろと?



「え、えーと……」



嫌な汗が噴き出てくる。

え、何こういうときどうすればいいの? 普通何するもんなの?



「……あー……課題でもやるか」



ピリピリと顔を引き攣らせていた美羽が、ほっとしたように息をついた。



「ぼくも古典の予習が済んでいなくて、ちょうど気になっていたところだった」



「あ、そうなんだ。俺は小テストの勉強してないけど」



「どうせ毎日あるんだし、小テストはそんなに真面目にやらなくてもいいんじゃないか? 授業前の休み時間で十分間に合うだろう」



「確かに……じゃあ英語の問題集でもやるか。古典の教科書貸す?」



「心配には及ばない。さあ―――我が呼び声に応じ、闇の淵より顕現せよ……!」



大仰なことを言いながら、持ち主の趣味を反映しまくった黒レースやリボンたっぷりのバッグから教科書やノートに文法書、電子辞書を取り出す美羽。
わざわざ持って来たのかよ。


カリカリカリカリ。


静まり返った部屋に、シャーペンを走らせる音とページをめくる音が心地良く響き、



「こ、これだから南高生は……っ!」



「彩? 何してんの?」



ドアを微妙に開けたまま、廊下でトレイを抱えた彩がガックリ膝を付いていた。

かと思えば、くわっと目を見開いて声高に主張。



「優等生にも程があるよ! テスト明けくらい勉強やめて遊びなさい!」



「いや、遊んでたら授業についていけないし。つーかすることないし」



「友達と遊ぶときにすることなんて、勉強以外にもいっぱいあるでしょ!? 雑談でもいいしさ!」



俺と美羽は顔を見合わせ、



「「―――まず他人と遊んだことがないから分からない」」



「悲しすぎるっ!」



彩、絶叫だった。



「一度も!? 休み時間とか最低限のお喋りはするよね!?」



「まず、クラスメイトとまともに話せるようになったの高校からだし。休み時間はずっと本読んでたし」



「ぼくもだな。勉強していても良いんだが、『さっすがガリ勉(笑)』などと陰で言われるのが嫌で」



「そうそう! 受験のときとか、図書室とかで隠れて勉強したなぁ」



「ああ、図書室はぼっちの《聖域(ファンタジア)》として相応しいと思う。五月蝿くないのと、ぼくの悪口を言ってくる低レベルな馬鹿がいないのがいいな」



「教室にいると気になるんだよなー。聞こえてないふりか寝てるふりしてやり過ごすけど、やっぱりねぇ」



「ふっ。ぼくも、寝ているふりから授業のチャイムが鳴って初めて目覚めたように起き上がるという流れの演技だけはプロ並みという自信がある」



「そんな話題で盛り上がるのやめてぇ―――!」

258ピーチ:2013/01/23(水) 20:41:10 HOST:EM1-115-14-104.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そんな悲しい話題で盛り上がんないでぇー!?

分かるよっ彩ちゃんの気持ちよくわかるよっ!

いっくらあたしでも最低限の言葉くらい交わすよ!←

259心愛:2013/01/24(木) 16:50:18 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩が常識人に見えるというw
悲しい話題は結構すらすら出てきちゃうここあです←

260心愛:2013/01/24(木) 16:51:10 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp







何故か彩がぎゃーぎゃーうるさい。



「や、だってすらすら長時間話せることってそれくらいだし……」



「どんだけ悲しい人生送ってるの!?」



俺の人生全否定された。

ちょっと落ち込んでいる俺の対面で、「話題か……」と考え込んでいた美羽がふと顔を上げ、顎に指を当てる。



「今までの学校生活といえば。今はもう関係ないが、給食のとき班で机をくっつける制度の是非について、なんてどうだろう」



「あー、俺の周りだけ不自然に隙間が開くんだよな。六人グループの真ん中の席とかになっちゃうとマジ地獄」



「給食は体育や英会話のペア活動、調理実習などに並ぶ一日で最も憂鬱な悪夢の時間だったな……」



「修学旅行とかの班決めもじゃね? 中途半端に優しい奴が『えーと……日永くんも、入る?』みたいなこと言ってくれちゃったりすると、そいつの周りから一斉に『は? お前ふざけんなよ』みたいな目で睨まれてんのとか見るとほんと罪悪感に駆られて」



「ダメだ……! この人たちほんとダメだ……!」



頭を抱える彩。



「とにかく自虐ネタ禁止! 普通の雑談しようよ!」



「普通に雑談してただけなんだけど……」



「同じく」



語れるレパートリーが貧困な上に偏ってるんだよ……。


「普通の話」って意識するとなんか逆に難しいような気がするのは俺だけ? 俺だけなの?



「……ちっ、二人きり作戦はあきらめるしかないかー。まぁ何しろドヘタレ世界代表のお兄ちゃんだし最初から期待してなかったけどさー」



「なにげに今小声で酷いこと言われなかったか俺」



「気のせいだよ気のせい! それじゃあ彩も加えたこのメンバーでガッツリトークしようぜ!」



「いや、お前まで来たらそれこそ共通の話題が」



彩が『にぱっ』と笑う。

……ああ、こういう顔するときのこいつは絶対にろくなこと言わな―――




「レンオーのアレクの見た目が微妙に柚木園さんに似てる件について!」




「分かるっ!」



「まさかの食いつき!?」



美羽が赤い瞳をキラキラさせて身を乗り出していた。
俺はちょっと引いて後ろへ下がる。



「さすがに体格や声は違うものの、雰囲気や顔立ちがそっくりだと前々から思っていたんだ」



「あとあと黒髪とか頭身の高さとか、大人の色気的なものとか!」



「今度は俺がアウェーかよ!」



分からない! こいつらが何言ってるのかまったく全然分からない!



「絶対アレクは鬼畜で美人な総攻めですよね!?」



「……攻め……?」



が、そこで美羽が眉間に皺を寄せる。

そして約三秒後、彩の正体をあっさり看破。



「君、さては腐女子か」



「はい、腐ってます! 納豆並みにねちょねちょに!」



「誇るな!」



「ちなみに、レンオーではアレユリ派ですよ〜」



「……ユリアスは男だろう」



うわ、なんか良く分かんないけど美羽がまともに見える。すげぇ。



「だからいいんじゃないですか! ……くぅ……! この勢いで一気にコッチの道に引き込めれば……」



「断固として阻止する!」



美羽まで彩の同類にさせてたまるかい!


と、その本人がこうきっぱり言い切った。



「そういった趣味に偏見はないが、これに関しては譲れない。アレックスの相手は主のシルヴィアだ」



「お、CP論争いっちゃいます?」



「いかないよ! 話すなら俺も分かるアニメにしろ―――!」



そんなこんなで、お菓子食べながらダラダラお互いの好きなアニメやらゲームやら漫画やらのことで喋っていたら、あっという間に時間が過ぎていった。


なんかヲタヲタしい話だけで何も特別なことやってないけど、こんなんで良かったのかな。



「ヒナ、今度来たときは布教用のBlu-rayを五巻まで持ってくるからコミック版で良く予習しておけ!」



「いえ結構です」



……ま、美羽が楽しかったならいっか。

261ピーチ:2013/01/25(金) 06:12:27 HOST:EM114-51-162-116.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの食いつきかw

てか彩ちゃん入ったらヒナさんの分かる話がなくなるんだー←

262心愛:2013/01/27(日) 11:23:58 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp


『学活』





「今日の話し合いでは文化祭の出し物を決めてもらいます。後は春山君、お願いしますよ。……切実に」



「はいはーい!」



幸薄いオーラを纏った担任(50代前半、既婚。そろそろ頭頂部の環境が気になるお年頃)がものすごく心配そうな顔をしながら教室を出て行く。

それをビッシリと背筋を伸ばして座った皆が黙って見送り、足音が聞こえなくなるのを確認してから。



「はい自習タイム突入ー! 同時進行でテキトーに決めてくから、最低でも多数決だけは参加するよーに!」



『はーい』



実は文化祭実行委員である春山の指示にお行儀よく返事しながら、席を立つ音だったり筆記用具を取り出したりする音だったりが立て続けに響く。

実にこなれたものだ。



「去年までの出し物リストからパクるってことで異論ないっすかー? ないなら黒板に書き出してくよー」



『ないでーす』



……その中で、明らかに心ここにあらず状態の生徒が一人。

―――柚木園である。

頬杖をつき、ぼ――っと焦点の合わない瞳が虚空を泳いでいる。
悩ましげに寄せられた眉や、僅かに開いた唇からはいつにもまして壮絶な色香が立ち上っていた。



「まいちゃん? 大丈夫?」



隣の姫宮が心配そうにその顔を覗き込むと、パッと身を退いて取り繕うように笑う。



「だ―――大丈夫だからっ」



「……そう?」



一瞬だけ、妙に寂しそうな表情になる姫宮。
なんとなく気になって、俺も椅子を回転させて二人に向き合う。



「どしたの」



「あー、いや、なんでもないよ……ただ、ちょっと風邪引いちゃって」



柚木園は答えながら、安堵したように頬を少し緩めた。



「土日で治ったんだけど、まだ本調子じゃないのかも」



「無理すんなよ」



「ありがと。でも、劇の練習もあるから無理しないわけにはいかないんだよね」



「あ、結局やることにしたんだ」



「うん、部長さんに押し切られちゃって」



姫宮から逃げるように、柚木園は頑と俺だけを見ている。
美羽がちょっと心配そうに、姫宮を窺っていた。



「そこー、なんか意見あるー?」



そこで絶妙なタイミングで、春山が話を振ってくる。
柚木園も今日は特に火花を散らすことなく、「んー」と考え込み。



「メイド喫茶とかないの?」



「自分の欲望隠す気サラサラないだろお前」



クラスメイト女子のメイド姿が見たいだけなのは確実だ。



「喫茶店は学校全体で三クラスしかできないんだよね。それに準備も当日も大変だからおすすめはしない」



「えー」



黒板に書き連ねてある(意外なことに達筆だ)候補に目を通す柚木園。
アトラクションがメインらしいけど、お化け屋敷や劇、映画などの定番なものも―――



「……縁日?」



と、一つの項目を見て姫宮が首を傾げた。
春山はすぐに反応。



「お祭りみたいなのらしいよ。ヨーヨーとか射的とか、いくつか屋台出してさ。食べ物扱わなければ面倒もないんじゃねーかな」



「へー。楽そうじゃん」



俺の中学は文化祭なかったから分かんないけど、最近よくあるらしいしね、縁日。



「ヒナもこう言ってることだし、縁日でいーですか」



『異議なし』



こだわりゼロのクラスだった。

263心愛:2013/01/27(日) 11:25:01 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp






「そんじゃ浴衣だけは各自用意ってことで。男子は甚平とか、最低法被(はっぴ)でも可」



「ゆ、浴衣!?」



美羽が顔色を変える。



「浴衣は本来湯帷子(ゆかたびら)といって風呂上がりに着る寝衣のようなものだぞ!? そんな破廉恥なっ」



「いつの時代の話だよ!」



「とにかくぼくは絶対に嫌だ!」



ぷっくーと不満げに膨れっ面。
勢いよくそっぽを向くと、長くて綺麗な黒髪がふわりと揺れる。


……なんて言うか。




「……美羽、絶対可愛いと思うんだけどなー。浴衣」




それでも、好きな子の、いつもとは違う姿を見てみたいっていうのが男心ってもので。
普段ふわふわしたゴスロリばっかりの美羽だけど、清楚な和装だって絶対似合うと思う。



「え」



カチンッと美羽が硬直。



「……………」



言葉が出ないらしく、あうあうと口をぱくつかせ、



「美羽?」



「ぅく……っ! 君はなぜそういう恥ずかしいことを素面で言えるんだ……!」



「え!? 嘘、なんか言ってた俺!?」



「なんでもないっ」



熟した林檎よりも赤い顔で、こほんこほんっとわざとらしい咳払い。


……え、マジで俺何言ってたの? 気になるんだけど。



『(……にやにや)』



「なっ、そっその目をやめろーっ!」



こっちを凝視したクラスメイトたちに向かって美羽がキレていた。
どうしたよ急に。



「ってそうじゃない! ぼくが言いたいのはだな……」



クラス中に注目されたまま、恥ずかしそうに俯いた美羽が打って変わってぽそぽそと小さな声で。



「……その……実は、家が衣料品関係の会社をやっていて」



本当は俺以上に、大人数に向き合うことが苦手だろう美羽は、四方八方から注がれる視線にスカートの裾をぎゅっと握り締めながらも、こう申し出た。



「衣装類なら、浴衣でもなんでも―――試作品で良ければ無料で提供することも、できなくはない」



おおっと教室が沸いた。



「ゆいのんそれマジでっ? 助かるわー」



「……ん」



満面の笑顔の春山から、照れたように視線を逸らす美羽。


……まさか、この美羽が学校行事に進んで協力するなんて。
やるじゃん―――と、俺もつい口元が緩んでしまう。


にわかに活気を帯び始めたクラスに便乗するように、柚木園が拳を握って立ち上がる。




「とにかく女子は全員浴衣ね! 絶対ね!」




あの憂いのポーズはどこ行った。
テンション高くのたまう柚木園に、姫宮がにこにこ笑いかける。



「楽しみだねっ、まいちゃん!」



「それはもう!」



爽やかオーラ全開、キラッキラした笑顔の柚木園。



「……うわぁ、墓穴掘りまくってるぅー……」



「今は言わないでおこう。当日……後には引けなくなるまで誤解させておいた方が面白い」



「黒いっすね美羽さん」



「ふん、彼女には色々と借りがあるからな」



衣装を全面的に美羽が用意するとなれば、奴も抵抗はできまい。



「くくく……今こそ、誉れ高き我が力を解き放つ刻……!」



「うん、可哀想だから手加減して解き放ってね……」



悪どい微笑と痛い台詞が初めてマッチした瞬間だった。

264心愛:2013/01/27(日) 11:49:52 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

腐女子妹と平凡男子と中二病女子だから仕方ないw


そろそろ苺花の話書きたいから、邪気眼少女の短編集作ろうと思います! 短編になるかは分かんないけど! 同時進行できるのか疑問だけど!
浴衣浴衣ーw

265ピーチ:2013/01/27(日) 14:30:33 HOST:EM49-252-73-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ちょっと待て美羽ちゃん苺花ちゃんに何着せるつもりだー!?

………とってもとっても珍しい組み合わせ、だよね…

浴衣ーw

266心愛:2013/01/28(月) 22:56:49 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

男っぽい娘が女の子らしくなる話は結構好きだからがんばる←

…次からなんとまたまた新キャラ登場だよ! ただし超サブキャラだよ!


ソラの波紋はちょっとだけお休みします(o^_^o)

267心愛:2013/01/28(月) 22:59:39 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp


『結野邸』






「……美空先輩」



『んー? あ、次の角を左に曲がると見えるよ』



「俺、今ものすごい後悔に襲われてるんですけど」



高い塀に囲まれた、高級そうな邸宅が聳え立つ住宅街―――をさらに抜けた場所。
一応余所行きの服を引っ張り出してそれなりにお洒落してみたとはいえ、ド平民な俺が上品な風景から浮きまくっているのは明白だった。


やっとのことで結野家の敷地内に入っても、目の前に広がるのはだだっ広い庭園ばかり。
そして、その向こうに点みたいに見えるは長方形の洋館らしきもの。



「なにこれ家ですか? 家なんですかほんとに、美術館かなんかの間違いじゃなくて」



歩いて一周すんのに何時間かかるんだろう。



『あはは、確かに普通よりちょっと大きいかもだけど』



「ちょっとの基準おかしくないですかねぇ!?」



「お兄ちゃん、噴水が! 噴水があるよ!」



スマホを耳に当てる俺の隣では、シュガーピンクのマキシワンピース姿の彩がはしゃいできゃっきゃしている。
一人でこの豪邸に侵入するのはものすごく不安なので、正直彩がいるのは心底ありがたい。


……で、なんで彩と二人して結野宅をお訪ねしているのかと言いますと。

『今日家に来い』という主旨の、絵文字顔文字満載でやたらと小文字と改行を多用したメールが美空先輩から突然届いたのだ。
この前美羽が俺の家に来たから、今度は自分たちの所へ遊びに来たらどうか、ただし驚かせたいから美羽には内緒で―――という誘い。
迷っていたところ、それを嗅ぎつけた彩が自分もついて行きたいと名乗りを上げ、



『ちょうど文化祭で使う衣装、見てみたかったんでしょー? これくらいで動揺してどうするの』



「すみませんね小市民で」



と、こういう目的も含めて一大決心したわけだ。
ちなみに最初は運転手さんを寄越してくれるという話だったのだが、それについては丁重にお断りしておいた。だからこうして苦労しているのも自業自得といえば自業自得である。



『……っと。そろそろ切るけど大丈夫だよね?』



美空先輩がこう切り出したので、見えないことは分かっているけど小さく頷く。



「ええまあ、あとは家本体まで行くだけなので」



『頑張れ! 待ってるよー』



通話を切ってから十五分弱、時折視界を横切る噴水やら巨大な花壇の迷路みたいなのやらを見なかったことにしつつ、彩と二人してなんとかそれらしき白亜の建物に辿り着いた。


……でかい。とにかくでかい。



「お、お邪魔しまーす」



「マジでな……」



首が痛くなりそうなので見上げるのを諦め、アールヌーヴォー式のステンドグラスが嵌め込まれた両開きの扉を恐る恐る開ける。




「あ、圭くん! いらっしゃい!」




するとすぐに、トレイに数個のグラスを乗せた美空先輩がツインテールをさらさら揺らして、たたっと走ってきた。


可愛い、と綺麗、のちょうど中間くらいの、十代の少女の理想が具現化したような絶妙に整った顔立ち。
リボンがついたサテン地のショーパンにドットが飛んだパフスリのブラウスを合わせ、薄色が女らしいデニムのジャケットを羽織っている彼女はやっぱり問答無用に愛らし―――


って違う!



「そっちが彩ちゃんだよね? 初めまして」



「先輩危ない! 危ないから待っ!」




「……あ」




《とんっ》




ぎゃあ―――――!?




間もなく展開されるだろう惨劇から目を逸らそうとしたそのとき―――



黒い影が飛び出した。



しゅたっと華麗に跳躍、その人物は腕を伸ばして空中を舞っていたトレイを掴む。

空中で燕尾服に包まれたしなやかな肢体を捻り、アクロバット並みの身の軽さでバランスを取って。

トレイをくるりと鮮やかに反転させて構えると、まるで吸い込まれるかのように、とととととんっとグラスがその上に整然と乗っかっていく。



「ひゃ……わ」




「―――お怪我はありませんか、お嬢様」




最後に絨毯の上へ着地すると同時、前のめりに倒れ込んだ先輩自身をその胸で受け止めた。

268心愛:2013/01/30(水) 21:07:39 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp







「昴(すばる)!」



「ですから、私が致しますと申し上げましたのに……」



ため息をつく青年。

年の頃は二十代前半、すらりと伸びた痩身を黒の燕尾服で包んでいる。
柔らかに額へ掛かった漆黒の髪、ギリシア彫刻のように整った優美な顔立ちには適度な神経質さや誠実さが滲む。
透き通った鼻梁は涼しげで、淡いブルーに似た煌めきを放つやや細い双眸の印象も相俟ってか、どこか清潔感を感じさせる美貌の持ち主だった。



「「……か……かっけぇ―――!」」



思わず彩と二人でぱちぱちぱちと拍手喝采。
魔法のような神業をしてみせた青年はそれに我に返ったようにはっとして、端正な顔を赤らめる。



「お、お嬢様? あの、そろそろ……」



「あは、ごめんごめん! 助かったよ、ありがと」



恥ずかしそうに先輩をそっと引き離した彼は、一呼吸おいてから丁寧に腰を折る。



「大変失礼致しました。私、結野家にお仕えしている執事、一ノ瀬(いちのせ)と申します」



執事。
ということは、前に美空先輩を車で迎えに来ていた人だろうか。
遠目に見てもイケメンだったし、悲しいことに最近美形は見慣れてきたけど、近くで見るとまた一段と眩しい。キラキラだ。



「お嬢様と美羽様がお世話に―――」



「イケメン執事キタァ―――っっ!」



彩が唐突に絶叫。
興奮気味にハァハァ息を荒げて執事さんに迫る。



「ああっ白手袋と袖の隙間のチラリズム! 手袋を外す男の艶っぽさってもうたまんないよねってゆーかこの顔で執事とかもう狙ってやってるとしか思えないんですけど執事×主人萌えぇぇぇえええええ」



「あの……?」



「ただの持病なので気にしないで下さい」



困惑したように立ち尽くす一ノ瀬さん。
うん。この人には、俺と同じカテゴリー……貴重な常識人キャラの気配を感じるよ。



「は、はあ……そうですか」



曖昧な笑顔で頷いた後、一ノ瀬さんは急に怪訝そうな顔になって手にしたグラスを覗き込む。



「ところでお嬢様。こちらは」



「アイスコーヒーだよ。ちゃんとミルクもつけたし」



胸を張る美空先輩を疑わしそうに窺いながら、鼻を液体へやや近づけ、パタパタと白手袋に包まれた手で仰ぐ。
教科書通りの、正しい薬品の嗅ぎ方だ。


そして綺麗な弓なりの眉を寄せ、



「……失礼」



おもむろに立ったままグラスを一つ掴み、口元に寄せてくいっと軽く傾ける。
その様は完璧に優雅、思わず惚れ惚れしてしまいそうに上品だったが、



「けほっ!?」



むせた。


しばらく喉に手をやって、うっすら涙を浮かべて苦しそうに咳き込み。




「―――めんつゆではないですかっ!」




「「めんつゆぅー!?」」



めんつゆってあのめんつゆ!?
しかも原液ってこと!?



「う、嘘でしょ……っ?」



「お嬢様……皿を持てば必ず落とし、未だに十分の九の確率で砂糖と塩をお間違えになるお嬢様に過度な期待はしておりませんが、せめて容器で判別できるようになって下さい……」



沈痛な表情で額に手を当てる一ノ瀬さん。

なんだろう。近寄りがたい雰囲気の二枚目なのに、何故かすごい親近感わく。



「ごめん……」



さすがにしゅんとしてしまう先輩。
一ノ瀬さんは慌てたように頬を火照らせ、



「い、いえ、私もつい言葉が過ぎました。申し訳ありません」



僅かに視線を逸らして謝罪して、それから気分を入れ替えるようにすうっと小さく息を吸ってから。



「ではお嬢様、お客様にお出しする飲み物は私にお任せ下さい。お嬢様は―――」



「だ、大丈夫だよ! 今度はちゃんとやるから!」



「いやいや絶対大丈夫じゃないですって! もう少しでめんつゆにミルク掛けて美味しく戴くところだったんですよ俺たちっ!?」



一ノ瀬さんが犠牲になってくれていなかったらどうなっていたことか!

269心愛:2013/02/01(金) 23:46:17 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp






揉め出しそうになったとき、すかさず彩がぴょんっと手を挙げた。



「じゃあ、彩が美空さんをお手伝いするってことでどうですか? お話ししたいこともありますし」



さすがは彩、美空先輩の残念な特性をこの短時間できっちり把握したようだ。



「いえ、お客様にそんなことをして戴くわけには」



「本当!?」



一ノ瀬さんを遮って先輩がパッと顔を輝かせる。



「あたしも、彩ちゃんと色々お話ししたかったの!」



「これから長いお付き合いになりそうですしね〜」



「ねー!」



初対面にもかかわらず謎の意気投合を遂げる二人。
一ノ瀬さんが嘆息する。



「では、お言葉に甘えて。申し訳ありませんがお嬢様をよろしくお願いしますね」



「りょーかいです!」



「あたしの方が年長なのに……」



ちょっと不満そうな先輩の台詞にはノーコメントだ。



「……お兄ちゃんお兄ちゃん」



「んだよ」



と、彩が爪先立ちをして、小さく『あること』を俺の耳に囁いた。
それから顔を離して、黙ってにこっと笑う。



「……お前やっぱこういうときだけは鋭いよな。怖いくらい」



「失礼だなぁ」



「彩ちゃん、行くよー! 昴、圭くんの案内頼んだからね」



「確かに」



「はーい!」



美空先輩の後について、へらへらした笑みを残して彩が歩き去る。



「それでは日永様、美羽様のお部屋の前に衣装部屋へとご案内させて戴きますね」



「あ、はい」



サッと細身を翻す一ノ瀬さん。
シャンデリアや鮮やかな壁画、足元の絨毯に白塗りの階段―――なんて一般人離れした豪奢な光景に自然と溶け込んでしまっている彼は、やっぱり文句なしに格好良い。


そんな一ノ瀬さんに―――俺は極力小さな声で、ぼそっと訊いてみる。




「一ノ瀬さんって……美空先輩のこと、好きなんですか?」




「……………」



みるみるうちに、綺麗な肌全体がぶわわっと赤らんでいく。
イケメンは赤面してもイケメンだ。



「あ、やっぱりですか」



「お、お願いします! どうかこのことは口外なさらないで下さい……っ!」



声を潜め、真っ赤な顔で必死に頼み込んでくる一ノ瀬さん。
クールなデキる大人の男、って感じの見た目とのギャップがものすごいことになっていた。



「このことが旦那様に知られれば、私は解雇されてしまいます……!」



「大丈夫ですよ。約束します」



使用人さんってのも大変なんだなぁ。



「……それで、あの。実は私も気になっていたのですが」



動揺を隠せない様子のまま、一ノ瀬さんが遠慮がちに言葉を発した。



「ご自身の世界に籠もりがちでいらっしゃる美羽様にご学友ができたのは喜ばしいことなのですが……日永様は男性ですし、お嬢様は妙にはりきっていらっしゃいますし……」



勘ぐってしまい申し訳ありません、と軽く頭を下げてから、そっと俺の目を窺い見る。



「失礼ながら……日永様も、もしかして、その、美羽様のことを……?」



「……まあ、そんな感じです」



肩をすくめ、苦笑いを返す。


普通の人が相手なら反発するところなのかもしれないけど、そういった感情は全然沸いてこなかった。
この人は良い人だっていう直感から、少なからず好感を持ってしまっているんだと思う。


究極ドジ天才娘と邪気眼電波娘。

厄介な姉妹に惚れてしまった仲間だ。


思わず握手を求めると、笑って応じてくれた。



「昴さん? って呼んでいいですか。 俺も圭で」



「もちろんです、圭様」



「お互い絶対苦労しますけど頑張りましょうね」



ついハイテンションになってしまった俺に、




「……ええ……私の方は、報われることはありませんけれど」




昴さんは、ふっと大人びた、寂しげな微笑を向けた。
声が切なさを帯びる。



「お嬢様は頭のよろしい方。何もないように振る舞っていますが……私の感情など、とっくの昔から察していらっしゃるでしょう」



拒絶、ですよ。と自嘲の笑みの形に口端が上がる。

270ff:2013/02/02(土) 00:01:21 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
↑お前ホントバカだな
何のスレこれ?頭悪いんじゃないか?

271ff:2013/02/02(土) 00:01:58 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
俺がこれから面白いスレ立ててやるよ
このサイトの住民を出演させてな

272ピーチ:2013/02/02(土) 12:47:28 HOST:EM114-51-61-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

めんつゆー!?

ちょっと待て美空先輩何をどうしたらめんつゆとアイスコーヒー間違えられるんですかっ!?

一ノ瀬さん頑張ってくださーい! 美形ならいける!←

273心愛:2013/02/02(土) 14:23:10 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ピーチー!(涙)
最近いないなー…いないなー…って寂しかったんだぞ! 実はそんなに時間たってないけど!


めんつゆw

昴は美空の超絶ドジのほぼすべてをフォローしてる哀れな奴だよ(*^-^)ノ
レイさんが空気系残念執事なら昴は苦労系万能執事?(´ー`)

どっちも苦労してますがw


昴は超脇役なんだけど、美空と昴の話も番外編でちゃんと書きたいなぁ←
これが完結してからだけどね!

274心愛:2013/02/02(土) 23:05:45 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp







「いずれ旦那様の会社を継ぐお嬢様はいつか、しかるべき婚約者をお持ちにならねばならないのですから。執事如きのくだらぬ懸想などを一々気にとめる訳にはいかないのです」



昴さんは重苦しい息を吐き出し、眉を下げて笑った。



「……つまらないことを話しました」



スッと型に嵌った一礼、再び顔を上げて微笑する。



「申し訳ありません。お嬢様だけでなく、私も少々浮かれていたようですね……お許し下さい」



この話はこれで終わり、というサインだ。



「いえ……そんな、全然」



大事なとこで抜けてるけど、その実自分―――または美羽―――の利を優先して動くことができる、一種の狡猾さを併せ持つ美空先輩。
そして、彼女を陰で支え、一途に赦されない想いを寄せ続ける心優しい昴さん。
婚約だの会社だの……その事情は、俺なんかには到底想像できないくらい複雑なんだろうけど。


それでもこの二人には、どういう形であれ、幸せになってもらいたいな―――なんて、こっそり勝手に思ってしまった。



「随分とお待たせしてしまいましたね。行きましょうか」



「あ、お願いします」



頭を本来の目的へと切り替える。



時折すれ違うメイドさん(!)と挨拶を交わしながら階段を上がり、高い天井の廊下を歩くことしばらく、一つのドアへと辿り着いた。


昴さんが鍵を開け、中に招き入れてくれる。



「うーわ……!」



思わず声が上がった。


室内を埋め尽くす衣桁には、所狭しと掛けられているおびただしい量の華やかな着物の数々。
この衣装部屋の面積だけで、俺の部屋の何倍あることか。



「浴衣と帯はこちらに。どうぞお好きなように、お手に取ってご覧下さい」



「や、俺は良く分かりませんから……」



必要なさそうだけど、一応クラスで使える代物かどうか軽くチェックしてみる。


鮮やかな色とりどりの染糸で描かれるのは桜、椿春蘭、梅、牡丹、藤、菊、楓。
花以外にも小鳥、霞、月、金魚、揚羽蝶と趣向が尽きることはない。

紺や黒、薄墨を基調に青竹、露芝などの模様が織り込まれた男性用の浴衣の種類も驚くほど豊富だ。



「……やっぱレンタル料とか払った方が……」



「まさか。あくまで試作品で売りに出せるようなものではありませんので、こんなもので良ければお好きなようにお使い下さい、と旦那様も仰せです」



「そ、そうですか」



これが全部試作品……。
普通に売っちゃえばいいのに、とか考えてしまうのは俺のたゆまぬ庶民感覚ゆえか。



「……あ、昴さん。ちょっと訊きたいんですけど」



「はい」



「昴さんの主観で、この中で一番可愛いって思うのとかあります? 深く考えなくていいんで」



「……は」



ぽかんとしてしまう昴さん。



「か、可愛い……ですか?」



おろおろと視線を彷徨わせ、昴さんはたっぷり迷った末に、「これ、でしょうか……」とある一着を差し出す。


俺はそれを受け取って確認。



「―――なるほど、じゃあ早速美空先輩に着てもらうように頼んで来ますね!」



「圭様っ!?」



瞬く間に真っ赤に茹で上がり、ちょっと涙目になってしまう昴さん。

いやぁ、大人の男性でこんなにいじりがいがある人もなかなかいないんじゃなかろうか。



「冗談ですって、そもそも俺美空先輩の居場所知らないし」



「心臓に悪い冗談はおやめ下さい……」



すみません、と笑いながら謝って。



「文化祭で女装コンテストっていうのがあるらしくて、友達が出るんですよ。本人には可哀想だけど、クラスの宣伝のためにもとにかく可愛さ重視の浴衣を探してて」



「は、はぁ……。女装……」



昴さんがコメントに窮している。
今は体格的に無理があるかもだけど、俺たちと同じ年頃だったならキレイ系の彼にさぞ似合いそうだ、女装。



「最後まで抵抗してたんですけど、ファンクラブの皆さんと実行委員長に土下座して頼まれて、結局押し切られちゃったんですよね」



「そ、それは……大変ですね」



「むしろあいつなら超テキトーな部屋着で立ってるだけで優勝間違いなしですけど、念のためってことで」



「……どうやら美羽様のご学友には、愉快な方が多いようです……」



遠い目をした昴さんの呟きは聞かなかったことにした。

275ピーチ:2013/02/03(日) 09:37:40 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

ここにゃーん! あたしも来たかったよー!

ごめんね最近休みの日でないと来れなくなっちゃってるよー!

…ヒナさんが誰かをいじってるの初めて見た気がする……←

276心愛:2013/02/03(日) 16:18:51 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そっかー(つд`)

無理しなくていいけどいつでも待ってるよw


いじられ役からヒナ脱却……はならないけどね!

277心愛:2013/02/03(日) 16:19:48 HOST:proxy10018.docomo.ne.jp







《コンコンッ》



「美羽様、失礼致します」



「……一ノ瀬か? ちょうど良かった、ロイヤルミルクティーを持ってき―――」



お姫様みたいな天蓋付きのベッド、白レースのカーテンなどのふわふわした可愛らしい家具が目を引くだだっ広い部屋。

その中心で折れそうに細い足をぱたぱたさせ、ソファにうつぶせに寝っ転がった状態で超巨大なスクリーンから目を離した小柄な美少女―――美羽が、昴さんの隣に立つ俺を見るなり赤い瞳をいっぱいに見開いてフリーズした。

やっぱり家でもゴスロリなのね……。分かってたことだけど。



「……な、……っんでヒナが家にいるんだ!?」



薔薇色の唇をわなわな震わせて勢い良く跳ね起きると、辺りに散らばっていた艶めく黒髪がぴょんっと踊る。



「美空先輩に呼ばれて。……え、嫌だった?」



なんかすみません。



「い、いや、では、ないが……っ、こっちにも心の準備というものがだな……!」



何故かソファの上で後ずさり、顔を赤くして膝を抱え、拗ねたような声色で小さく何事かを言う。



「美空も美空だ! ぼくに黙ってヒナと……なんてっ、一体何を考えているんだかっ」



「俺と?」



「うるさい!」



理不尽にキレられていると、にぎやかな二人分の声がだんだん近づいてきた。



「彩ちゃん、やっぱりあたしが持っ」



「いいんですいいんです、このくらい任せて下さい! ……あ、お久しぶりです美羽さん! お邪魔してます!」



「美羽ちゃんやっほー! お姉ちゃんが遊びに来たよー」



今度はちゃんとした飲み物らしきグラスを持った彩と、シスコン全開の美空先輩だ。
昴さんが道を譲り、一歩後ろへ下がる。



「誰が遊ぶかっ!」



「ちぇー。じゃあ彩ちゃん、さっきまでの話の続きでもしてよっか」



「りょーかいです! じゃあじゃあ美空さんからどうぞ」



「はーい。美羽ちゃんってば五歳のとき、お風呂にボディーソープを大量に入れてお母さんにすっごく怒られたの! 『だってお姫様気分になりたかったんだもん!』って泣いちゃって……可愛かったなぁ」



「な―――」



美羽が絶句する。
続いて彩が軽いノリで挙手。



「ではでは次は彩の番ですね! お兄ちゃんって小さいとき、コンビニとか色んなお店に入ったら必ず、『お邪魔します』って言ってたんですよ〜。店員さんが良く笑ってました」



「あははは何それ圭くんかわいー! ……あ、そうそう、美羽ちゃんもねー、いまだに猫さんのぬいぐるみと一緒じゃないと眠れな―――」



『身内の暴露大会開催するなぁぁあああああ!?』



何この公開処刑ふざけんなし!

278心愛:2013/02/03(日) 16:21:05 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp







「つ、付き合ってられないな……!」



「全く同意見」



まだ楽しそうに喋りまくっている二人は全力で無視することに決め、居たたまれない空気を何とかしようと口を開く。



「……何見てたの? DVD?」



「……ん」



スクリーンに映った制止状態のアニメには、見覚えのある銀髪の少女の姿。



「あ、好きなんだっけ。このキャラ」



こくんと頷き、リモコンを操作する美羽。

無言の視線に気圧されて、俺もちょっと離れてソファの隣に座る。観ろ、ってことらしい。


すぐに音と台詞が流れ出し、画面が切り替わる。



『汝、奈落の淵より来(きた)る者。我への従属を誓え』



『―――仰せのままに、俺の姫君』



少女が差し出した血が滲む指先を、跪いた青年が口に含む。
微妙にエロいシーンだけど……もしかしてこれが美羽が言ってた、契約の儀とかなんとかってやつかな。


……ほんと、握手で済んで良かった……。

しみじみと己の名案のありがたみを噛み締めていると。





「―――強いから」





画面を見たまま、美羽がぽつりと呟いた。




「……だから、好きなんだ」




不思議なくらいに凛と冴えた横顔は、妙に綺麗で、儚くて―――きゅっと胸が締め付けられる。
アニメに夢中になってるだけで、今の台詞に深い意味なんてないはずなのに。


どうしてだろう。
一瞬―――昔の“ミウ”の笑顔を、思い出した。



「圭様」



ぼんやり考えていると、いつの間にか近づいていた昴さんが、軽く屈んで囁いてきた。



「この春から、美羽様はまるで別人のように明るくなられました」



目が合うとにっこり笑って、美羽に気取られないように小声のまま。



「圭様や、クラスの方々のお陰です」



「……だと、いいんですけどね」



本当に、そうだったらいい。
ダラダラしたり、喋ったり、笑ったり。



一緒と過ごすこの時間を、美羽が本当に楽しいって思ってくれるためだったら。


俺は多分、どんなことでもできる。……そんな気がするんだ。



「ふっ……同じ吸血姫(ヴァンパイア)の姿を見たら、何だか血に飢えてきたな……」



「トマトジュースでも飲めば?」



「あんなもの飲めるか! 全然甘くないじゃないかっ」



俺たちは今日もバカみたいにふざけあう。



「美羽様、ジュースはともかく野菜類はきちんとお摂りになるべきです」



「そうだよ美羽ちゃん! ただでさえ全然食べないんだから、またすぐ倒れちゃうよ!」



「貧弱少女萌え……うぇへ……」



「うるさい黙れ!」



「最後の以外は正論なんだからちゃんと聞き入れなさい!」



―――こんな他愛なくて愛しい日常の、終わりがずっと、来ないことを願って。

279ピーチ:2013/02/03(日) 17:30:27 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん目指せいじられ役脱却!←

あれ、何でだろう…何か美空先輩と彩ちゃんがソフィア様に見えるぞ……

一ノ瀬さんもいい人だよねー!

280心愛:2013/02/03(日) 17:42:55 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ちょいブラックソフィア降臨?(笑)
昴は分かりやすくいい奴だよ!


新しく始めたんで、苺花主役の番外編もよろしくお願いします(o^_^o)
ちょっとこっちは後回しかな。
あとソラの波紋も更新やんなきゃ(´ー`)

281ピーチ:2013/02/03(日) 17:57:02 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんのちょっとだけ降臨?←

昴さんいい人だよー! みんないい人だけど一際いい人だよー!

苺花ちゃんの番外編もソラの波紋も気になるっ! 待ってるねー!

282心愛:2013/02/03(日) 21:12:20 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昴はユリアスと同類かなw いい人!


ありがとうごぜぇます…!(涙)
ごゆっくりお待ちを( ^-^)_旦〜

283名無しさん:2013/02/09(土) 10:02:57 HOST:EM114-51-170-28.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ユリアス様優しいよねっ! 分かるよ!

あれ、レイさんもいい人のような気がしてたんだけど……←

284心愛:2013/02/09(土) 17:56:47 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、レイさんもいい人だよ!
っていうかみんないい人なんだけど、それぞれキャラがみょーに濃いからね(つд`)

レイさんは影薄いって特徴が大きすぎるからつい「いい人」のカテゴリーに入れ忘れるw

285心愛:2013/02/11(月) 11:27:58 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp


『文化祭』






「第63回、南高文化祭っ!」



「はっじまっるよーっ!」



『うぉぉおおおおおおおおっっっ』



オープニングセレモニー……なんて名前だけ妙に格式張った開会式。
約千人が集う体育館は、大変な騒ぎとなっていた。


これだけのエネルギーがどこから沸いてくるのかと不思議に思うくらいの熱狂ぶり。
あちらこちらで誰か(うちのクラスではとある変態男)の煽りによるウェーブが生まれ、拳を突き上げ足を踏み鳴らす男子生徒たちの絶叫が、体育館を壊しそうなほど激しく揺さぶる。

いつもは男子のテンションに苦笑い気味の女子も一緒になって叫び、笑い、手拍子で壇上の実行委員長と司会者を応援。



「……熱気だけで死にそうなんだが……」



「死ぬなよ貧弱娘!」



が、この異様な空気に溶け込めていない人物が一人。

人混みに酔ったらしく、美羽が虚ろな目でふらふらしている。
さすがに真夏で長袖ゴスロリじゃ無理があるよ。



「ひゃ」



「大丈夫!?」



振動によろけて倒れ込みそうになったが、小さな身体は柚木園の腕にぽすっと収まった。



「わ、悪いな……」



そそくさと離れようとする美羽に、柚木園は至近距離で妖しい笑みと共に囁く。



「今だけじゃなくて、ずっとこのままでもいいんだよ……?」



「謹んで遠慮させてもらおう!」



今日も王子様全開の柚木園は、この前の物憂げな様子に比べて少し吹っ切れたように見える。
それはこの場に、『あいつ』がいないことと関係……あるのだろうか。



隣でも怒鳴りあわなければ声が聞こえないほどの喧騒の中、漫才みたいなノリの二人の司会がボケつつツッコミつつ式を進行していく。



「校長講話ぁーっ!」



『フォォ―――ウ!』



……なんかもう、何でもいいらしい。
校長が席を立っただけで拍手が巻き起こり、会場が無駄に盛り上がる。



「えー、みなさん」



しーん。

これだけ生徒が熱心に校長の話を聞くことって、正直もうないんじゃないかな。




「この場で長い話をしても仕方ありませんので、一言だけ。……南高の歴史に恥じない、最高の文化祭にしましょう!」



『ヒャッホ―――ウ!』



空気を読んだ彼が速やかに退場するのを「校長先生ーッ」「愛してるーッ」とか歓声を上げて見送り、むしろ生徒より暴徒という表現の方が適切なんじゃなかろうかと思うくらいにテンション最高潮になったみなさんがさらにエキサイト。

生徒会長挨拶と実行委員長挨拶も、こんな感じで進んでいった。

かく言う俺も、冷静に分析しているように見せながらも実はちょっとわくわくしてたり。
会場全体の「お祭り気分」に呑み込まれてしまったらしい。

美羽も文句を言いながらもそれなりに楽しそうだし。



「では続いていきましょう、軽音楽同好会とダンス同好会のみなさんでーす!」



『ヒュオオオオオオオ―ウッッ』



―――が、すぐに「……」と微妙な顔になった。



ステージに上がった数十人のうち、前に進み出た一人の少女の名が叫ばれる。



『MI・KUッ! MI・KUッ!』



もちろん、頭の両側に艶やかな黒髪を流す彼女は美空先輩。
チアガール風の衣装に包まれた愛らしくも美しい姿を見せつけるように堂々と立ち、華やかな笑顔を振りまいてひらひら手を振ってみせる。


足場もしっかり、マイクを力を込めてその右手で握り。

ぺこっとお辞儀はするものの、いつぞやのようにマイクに額をぶつけたりはせずに一定の距離を保ったまま。


……これはいけるかも、と思わず拳を握ったそのときだった。





「―――みなさん、こっっ」




突然美空先輩が片手で口を押さえ、上半身をくるりと回れ右。



「…………〜〜…っ!!」



……舌、噛んだらしい。



涙目で声にならない悲鳴を上げる彼女は、何というか、とても痛々しかった。




「がんばれ美空ちゃんー!」



「めげるなー!」



が、観客の女生徒からの温かい声援が飛び、男子もそうだそうだと大合唱を始める。



「……ありがとうございますっ! ええと、今から踊る曲は―――」



それを受け、恥ずかしそうに顔を染めた美空先輩が明るく笑った。

286心愛:2013/02/11(月) 11:30:08 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp






短い説明が終わると、軽音楽同好会のみなさんが演奏する曲が流れ始める。


すかさず俺はムービーモードにしたスマホを掲げた。……機会があったら昴さんに見せようっと。



スッ、と先輩が黒に透き通る双眸を細めた。
セクシーで大人びた表情。
手や脚を滑らかに伸ばし、細い腰を女豹のように揺らす。


全員がぴったり綺麗に揃った身振り手振りはまさに圧巻。


激しくカッコいいロック調のリズムに陶酔させられているうちに、やがて曲が終わりを迎える。



……なんと転ばなかった!




『おおおおお……!』




驚嘆のどよめきが沸き上がる。


どや! と頬を火照らせ、美空先輩は美羽そっくりの得意げな笑みを作った。



「ありがとうございましたー! ダンス同好会は明日、ホールで発表を行います! ぜひ来てくださいね!」



ダンス同好会のみなさんが一斉に礼をし、美空先輩が喋っている間にぞろぞろと退場。


脇にスタンバイしていた実行委員にマイクを預け、大歓声を浴びながら笑顔の美空先輩がステージの階段に足を掛けたその瞬間、





《ずるっごろごろびった――――――んっっっ!》





『…………』



……やっぱり美空先輩は美空先輩だった。



美羽が痛ましげに顔に手を当て、柚木園がリアクションに困ったように立ち尽くし、春山が「救急箱救急箱っ!」と慌ただしく叫ぶ。

俺は色々悟りきった物悲しい思いを胸に、今までの様子を撮影していたスマホをゆっくりと下ろした。


主に部活仲間による手厚い介抱を受けてひとまずダメージを回復した美空先輩が半ば引きずられるようにして消え去った後、気を取り直すようにしきりに汗を拭きながら司会が再度登場。



「え、ええーっと! それでは時間も少なくなってきたことですし、毎年恒例のこの行事、いってみましょうか!」



本当にピンチに陥ったとき、人間は本能的に結託するらしい。
司会の精一杯の努力に応え、『おおおー!』と若干無理矢理ながら、会場をもう一度盛り上げる。



「みなさんご一緒にー! せーの、」




『女装コンテストー!』




「女装が恒例の学校なんて嫌だーっ!」



俺の叫びは鮮やかかつ華麗に無視された。


ちなみに正確に表記すると『じょーそーうーこーんーてーすーと〜!』である。
某国民的キャラクターの不思議ポケットを持つ青いタヌキみたいな生物の声を思い起こさせるノリだった。



「なんで男装コンテストがないんだろ」



もしそうだったら優勝確実なイケメン女が不満そうにぼそっと呟く。



「やっぱ男女比の問題じゃね? 男装は女子にしか需要がないだろうし」



美羽が苛立たしげに床を蹴った。



「ほら、そんなことより『彼』が出るだろう。見なくてもいいのか?」



「そうでしたねー……」



ステージに視線を移す。



意外なことに、そんなに気持ち悪くない。
思いっきりネタに走っているガタイのいい男もたまに混じってるけど、どこから調達したのかちょっと気になるセーラー服や、喫茶店の制服らしいメイド服、劇の衣装。
本当に女の子みたいに小柄な子とか、思わずドキッとするくらい綺麗な人が予想外に多い。

アピールタイムでは自分のクラスの出し物を宣伝する人が大半で、恥じらった感じで手を振ったりなんかすると体育館が熱い叫びで満たされる。




「それではいよいよ大本命のこの方!」




「一部から圧倒的な支持! エントリーナンバー8・姫宮さん、どうぞっ!」




……空気が、変わった。



情欲を誘う、ちらりと覗く細い足首。
やや俯き、何かに耐えるようにきゅっと唇を噛んだ『彼』が一歩を踏み出すたび、紅潮した頬を栗色の髪が柔らかに撫でる。
白菊、紅牡丹、桜の花片が散る薄紅の浴衣がまた、その可憐さ、愛らしさを助長していた。



……ごくり。



司会までもがアピールタイムを告げるのも忘れて見惚れる中。
マイクを両手で握りしめ、ぎゅっと目をつむって一言。





「―――僕は女の子じゃありませんっ!」





―――こうして、優勝、金賞、銀賞、審査員特別賞を根こそぎ一人でかっさらった男・姫宮夕紀は、南高の伝説となった。

287名無しさん:2013/02/14(木) 05:27:12 HOST:EM114-51-138-2.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空先輩ー!? 痛いよそれ絶対痛いよっ!?

…優勝に金賞に銀賞に審査員特別賞……凄いですね、うん

288心愛:2013/02/14(木) 18:14:23 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

階段でつまずく→転げ落ちる→顔打ちつける(´ー`)

ここあも小学校の卒業式の練習で、全校生徒の前で体育館の入り口に突っかかって思いっきり顔面からコケたことがありますけどねw
あれは恥ずかしかった…w


夕紀、優勝の中の優勝でございます(o^_^o)

289心愛:2013/02/14(木) 18:15:11 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp







1日目の今日、一般公開は11時から16時半。


南高伝統の文化祭は、毎年二日間で6000人以上が来校するというなかなか大規模なものだ。
いかにもテキトーな雰囲気で始まったとはいえ、本番前では否が応でも気合いが入る。


縁日ということで、教室の周りに黒幕を引き、風鈴や折り紙、団扇(うちわ)などで飾り付けることでなんとかそれっぽさを演出。
ヨーヨー掬いや射的、輪投げにくじ引きなどの出店が壁を埋めるようにずらりと並ぶ。
景品はコストを抑える目的で、お菓子の詰め合わせが中心となっている。


一般公開の時間が刻々と迫る中、俺たちは最後の仕上げに取りかかっていた。



「お待たせー」



「ヒナー、みうみうってば可愛いんだよ見て見て!」



「な、なんなんだ君たちはっ」



……っていうのは着替えタイムのことなんだけどね。



教室に入ってきた、浴衣姿が華やかな同級生に抱えられてじたばたしている美羽が目に入る。

もちろん、普段は誰に何と言われようと自分のこだわりであるゴスロリを貫き通す彼女も、今日ばかりはきちんと浴衣を身に着けていた。


銀糸と白、茜、黄金(こがね)の染糸を使った色とりどりの揚羽蝶が桜草に戯れる、深い瑠璃紺の逸品。
レースとフリルをこよなく愛する美羽らしく、珊瑚珠色の帯や袖には繊細なラッセルレースが縫い取られている。


でも何よりも強調したいのは―――ふさふさした黒い猫耳。
カチューシャなんだろうけど、彼女の黒絹のように光沢のある髪と同化して、本当にひょっこりと頭から生えているみたいに見えた。



こ、これは……。




「……私、実はぬいぐるみとか大好きなんだよね」



「わ、も、もふもふするなっ! ぼくはぬいぐるみじゃないぞっ!」



小声で何か口走り、キラキラした目で猫耳浴衣娘と化した美羽を捕捉したかと思えば、ぎゅーっと抱きついて撫でまくる柚木園。……いいなぁ。


「浴衣が崩れるっ!」と暴れて抵抗、なんとか柚木園の手から脱出した美羽は、それだけで体力を使い果たしたらしくぜぇぜぇ荒い息をしながら俺の後ろへと退散。


それでも近づこうとする女子共に、シャーッと毛を逆立てた猫みたいに威嚇する。



「……似合ってるよ、それ」



「……………ふん」



正直可愛すぎて困ってますなんて本心を包み隠さず暴露したらまず引かれるので、とりあえず当たり障りない感想を言ってみる。
美羽は背後でもそもそと身じろぎし、



「君も悪くないんじゃないか?」



「そう?」



まあ、調達したのは美羽だしね。

ちなみに浴衣が入っていた段ボールに、大してお洒落にお金を使わない俺でさえ知っているような、ここ数年で一気に台頭した某・超大手アパレル系会社のロゴが入っていたのは気のせいということにしておいた。俺の精神衛生上よろしくない。



「ゆいのんかわいーね! ヒナもかっこいいよ」



そんな嬉しいことを言ってくれるのは姫宮だ。
彼が身に着けているものといえば桔梗色の染めに白の細い縦縞―――明らかに男物である。



「あのままでよかったのに」



「ぜっったいにいや!」



ぷっくーと膨れる姫宮。
でもやっぱりいかにも女の子が無理して男装してみた、みたいな感じでとても可愛らしい。


今日は店番ではないので実行委員オリジナルTシャツのままの春山が、美羽にニカッと笑いかけた。



「やー、結野ちゃんマジ感謝っ」



「……別に、当然のことをしたまでだ。君に感謝される覚えはないな」



「美羽は謙虚だね……あれ、そういえば私のぶんは?」



まだ着替えていなかった柚木園が空の段ボールを見て不思議そうな顔をすると、廊下から入ってきた人物の元気な声が聞こえてきた。




「はい、王子はこっちねー!」




「美空先輩?」



見れば、ついさっき舞台で盛大なドジをやらかした美少女の姿が。



「え、怪我はっ?」



「うん……。ありがと、大丈夫」



「美空のドジに対する回復力は驚愕に値すると思う」と美羽が小さく呟いていた。



「いいから早く!」



「え? え?」



いまだに状況を理解していない柚木園は、黒い笑顔の美空先輩にしっかり腕を掴まれ、女子更衣室に引っ張られていった。


……ご冥福を心からお祈りします。

290心愛:2013/02/16(土) 11:02:07 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp







「きゃ、……ちょっ、やめ―――……っ」



柚木園のものとおぼしき悲鳴が耳に届く。



「おー、なんだ、いい肌してるじゃん王子! 見せなきゃ損だよ」



美空先輩は対照的に楽しそうだ。



「や、……だめ、ほんとにだめですってばっ」



漏れ出てくる声が、やたらと色っぽく聞こえるのは気の迷いか。



「あのフェミニストが、まさか美空相手に腕力で抵抗できるとも思えないからな。着付けを頼んでおいたんだ」



「わー、すっげぇ策略行為ー」



このへん、美空先輩との血の繋がりを感じる。


姫宮をはじめ、クラスのみんなで顔を見合わせてからそおっと更衣室の前に忍び寄った。
いつもと違って、今日使わせてもらってる二年生の教室はちょうど、女子更衣室の真ん前にあるからね。



「……ん、我ながら惚れ惚れする出来映え! 鏡見てみなよ、ほらほら」



どうやら着付けは済んだらしい。
美空先輩のものに続き、切羽詰まった声が耳に届く。



「絶対に嫌ですっ」



「なんで?」



そりゃ、いつもの格好からして抵抗があるのは分かるけど、あまりにも頑なに言い切るその調子に、俺は少し違和感を感じる。


柚木園は女だ。


自ら好んで男みたいな言動をしている彼女に、何か事情があるのかどうかは知らないけど。
でも、全部ひっくるめて、俺は―――もちろん変な意味じゃなくて、あいつのことが好きなんだ。
女とか男とか、そういう問題じゃなくてさ。


だから、何をそんなに柚木園が弱気になっているのか分からない。
まだ付き合いの短い俺でも、どんなに見た目が変わったって、そんなこと関係ないくらいに……あいつは魅力的な奴なんだって確信できる。



「自信持ちなよ、王子。似合ってるよ?」



「……どうせ、気持ち悪いだけですから」



ひっそりと紡がれた、弱々しく、なのに強く、拒絶するような声音。
姫宮が顔を強張らせた。



「似合うわけないんです。こんな……みっともない格好で、みんなの前になんか出られません」



扉の向こう側で、俺たちは黙り込む。
居心地が悪そうに俯く美羽が、きゅっと袖を握ってきた。



「せっかく手間をかけてもらったのに申し訳ありませんけど、やっぱり着替えますね。……私には、耐えられないから」



「王子……」



困り切った様子の美空先輩。
たまらず、俺が何か声を掛けようと声を出しかけたとき―――




「まいちゃんは女の子だよっ!」




驚いて、少し下にある栗色の小さな頭を見る。

姫宮は怒ったように、いつも和やかな表情を険しく引き締めていた。



「僕は、まいちゃんのことを全部知ってるわけじゃないし、何をえらそうにって感じだけど……これだけは言わせてもらうよ」



周りが呆気にとられているのも構わず、扉に向けて叫ぶ。



「理由を作って、あきらめて、逃げて、また同じことを繰り返すの!? それで本当にいいのっ!?」



異様な迫力。
その立ち姿には、普段の愛らしさなんて微塵もない。


そこにいるのは、紛れもなく……一人の、男だった。




「逃げてるだけじゃ、いつまでたっても変われないんだよ!」




「……っ」



美羽が息を呑んだ。
苦しげに、綺麗な顔を歪ませる。



同じように、扉の裏側でわずかに身じろぐ気配を察し、姫宮が柔らかに微笑んで。



「まいちゃんは、女の子だよ」



語気を和らげ、静かにそう、繰り返した。



……気が遠くなりそうな沈黙が立ち込め、俺たちが『やっぱり無理か』と半分あきらめかけた頃。



そろ、と恐る恐る扉が開かれ、中の人物が、ゆっくりと姿を現した。



思わず、ぽかんと口を開けてしまう。




―――……凄い美人がいた。




美人―――いや、麗人?



ひんやり透き通る硝子のように、青ざめた頬。
後悔と羞恥、怯えが入り混じった切れ長の瞳。
黒々とした睫、口紅なしでも鮮やかな薄い唇が力なく震えている。

291心愛:2013/02/16(土) 19:49:04 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp






しっとり落ち着いた黒の地に、燃えるような緋色の鬼灯が映える。
絽の白の帯には茜や梔子の染料で、真緋(あけ)と金朱の夕雲がごく淡く描かれていた。

ワックスやスプレーを使ったのか軽くふんわりとした印象になった髪には、薄絹でできた赤い珊瑚色の花のコサージュが、耳の上辺りにさりげなく留められている。



「い……」



びくっ、と本来の華奢さが浮き出た肩が跳ね上がった。




「いいじゃん!」




なんだよ、女バージョンでも普通に美人じゃんか! 心配して損したよ!


全力で叫ぶ俺を見て、ぷるぷる震えた末にドアの向こうへ引っ込みかけていた柚木園が、へっ? と目を丸くした。


あまりの変貌ぶりに言葉を失っていたクラスメイトたちも、我に返って興奮気味に騒ぎ始める。



「マジだ!」



「やべぇ、今普通にドキッときたわ俺。柚木園なのに騙されそうだわ」



「毎日そのカッコしてくればいいのに!」



そんなアホかつ非現実的な提案が出たところで、



「薄紫に白芙蓉か、藍に枝垂れ桜かと最後まで迷ったのだが……ふん、ぼくが見立てた通りだな」



満足そうに美羽が頷いた。



「結野ちゃんさっすがー!」



「ダテにゴスロリ着てないね!」



「それは関係なくね?」



口々に、意外なことにまともだった美羽のセンスを褒め称える。



「え、……?」



まさに茫然自失、何が起こっているのか分からないとでも云うように、瞬きすらも忘れて突っ立っている柚木園。

姫宮が近づいて、正面からその顔を覗き込み。




「綺麗だよ、まいちゃん」




ふわっ、と優しく微笑みかけた。




「それに、すっごく可愛い」




「………っっ」



言葉に詰まった柚木園の頬が、急速にカァ―――ッと赤く染まっていく。



……ん?



そんな謎のやり取りを目撃してしまった俺が首を傾げていると、続いて更衣室から出てきた美空先輩に肩を叩かれた。



「ほーら圭くん、そろそろ一般公開始まっちゃうよ!」



「え、もうそんな時間ですか!?」



「もうあと10分切ってる。急いだ急いだ! 王子もいい加減男らしく覚悟決めなさい!」



「この格好させておいて!?」



そんなこんなでけらけら笑う美空先輩と別れ、



「ヒナー、あとは頼んだ! ……あ、アブなそーな兄ちゃんとか来て暴れ出したら呼んで、俺だったら殴られてもなんともないから!」



「言うのがお前じゃなかったら責任感溢れるイイ台詞になってたかもしれないな」



サラッと欲望丸出しな台詞を吐いて、春山も実行委員会本部に向かう。

するとすぐにアナウンスが校内に響いた。



『一般公開開始の時間となりました。ご来客の皆様、―――』



「まあ、そんなすぐに客も来ないよな」



「……やっぱり、この間に着替えてきても」



『却下』



壁に寄りかかって余裕をかましていると、



「あーっ、女装の子っ」



「来ちゃったっ!?」



姫宮目当てだったらしい先輩方が入ってくる。
彼は「不本意な呼び方っ」と涙目だった。



「写真撮っていいですか?」



「コスプレ会場の楽しみ方ですよねそれ」



縁日の趣旨どこ行った。



「わー、そっちの子も可愛い! すごい綺麗な人もいるし……って、は!? え、まさか柚木園くん!?」



「嘘でしょ!?」



あっという間に先輩さん方に取り込まれ、可愛い可愛いともみくちゃにされ、写メを撮られまくる女性陣(ただし一部男)。
それにつられるように、次第に射的や輪投げなどのコーナーも賑わい始めた。



「……夕紀と美羽ならともかく、なんで私が……」



こんな目で見られるのは初めてなのだろう、やっとのことで抜け出してきた柚木園がため息をつく。
いつにもまして色香が凄まじい彼女に、笑って言った。



「たまにはいいんじゃない? こういうのも」



……こうして、縁日じゃなく浴衣ショーとかに名前を変えた方がいいんじゃないかという素朴な疑問を生みつつも、何かと忙しい文化祭第一日目は大繁盛で幕を閉じた。

292ピーチ:2013/02/20(水) 05:52:53 HOST:EM1-114-47-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさーんっ!? ご冥福じゃないってー!

苺花ちゃん似合うじゃん! 男っぽくしなくていーじゃん!←

293心愛:2013/02/20(水) 22:41:17 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp





二日間に渡る文化祭も、最終日を迎えた。


今日の一般公開は9時半から14時半で、3時に閉会式がある。
完全下校は18時。それまでに全ての後片付けを済ませるというなかなかに過酷なスケジュールだった。



「それにしても、なんでこんなに混んでんだよ……」



「少なくとも約八割は彼女目当ての者だろう、おそらく」



大混雑の体育館。
パイプ椅子はとっくに足りなくなり、後方で立ち見をしている人がほとんど。

スポットライトで照らされたステージからは、演劇の有名すぎる台詞が聞こえてくる。



「“ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?
さっきわたしに語りかけた優しい言葉、あの愛の台詞が本当なら、名前はロミオでもいい、せめてモンタギューという肩書きを捨てて”」



劇の項目はシェイクスピアの名作、『ロミオとジュリエット』。
高校の文化祭としては無難なチョイスと言えるだろう。


……ジュリエット一人だし。



「ふん……。17歳と13歳という設定なのだから、高ニ男子と中一女子が恋に落ちた翌日に結婚―――現代日本ではとても考えられない上に教育委員会で問題になりそうな話だな」



「やめていらないからその予備知識」



「へー。ジュリエットって13歳なんだ」



今日はほとんどクラスの当番がないのをいいことに、主役のクラスメイトを観に来ている俺、美羽、姫宮が、ステージをしっかり見ながら小声で言葉を交わす。ちなみに宣伝のために浴衣は全員着用。



……そして、舞台袖には輝くばかりの我らが王子の姿が。



「“このまま彼女の独り言を聞いていようか、それとも―――”」



シャツにベスト、パンツを合わせた柚木園は完璧にイケメンだった。

昨日の印象を掻き消そうとでもするように、いつもよりもさらに気合いを入れて“そう”振る舞っているのがよく分かる。


ふっと瞳を憂いたっぷりに霞ませ、甘く切ない表情を見せるたびに観客席からため息が漏れた。


もう完全に一人舞台。
その艶めく危うさは、演劇部で一番の美人だというジュリエット役の女の子が軽く見劣りしてしまうほど。



「―――“ジュリエット、実力行使だ”」



熱く濡れた眼差しを注ぎ、ジュリエットの手を取る。



「“僕たちが先に婚約を果たしましょう。
結婚式を挙げて、指輪を交換して、婚礼の儀式を済ませてしまいましょう……”」



怖いほどガチな演技。
さすが、昔から劇の主役に引っ張りだこだったというだけはある。



「“あなたが本当に僕を信じてくれるなら”」



キラキラキラキラ。


きゃあっ、と小さな悲鳴が上がり、客席の女生徒たちまでが頬を染める。



「……“信じるわ、ロミオ”」



真っ赤に茹で上がり、今にも卒倒しそうなジュリエットがなんとか台詞を吐く。



「さ、さすがだな……」



「うわ、なんか俺までドキドキしてき…………? 姫宮?」



「……んー」



姫宮だけが、何故か不満そうな色が宿る瞳で舞台を見ていた。








*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*








「あれ!? 美羽?」



ちっこい背丈はすぐに人混みに呑まれて消えてしまう。
慌ててきょろきょろ探すと、



「潰れる……っ」



「わ、す、すいませんちょっとすいません!」



苦しげにもがいている美羽を、人の波を掻き分けながらやっとのことで救出。
いつもの人を寄せ付けない毒々しさがないため、自分から人を避けて歩くのに苦労している様子である。


友人と約束があると言う姫宮と別れ、美羽と二人で歩くごった返した廊下。
客引きや宣伝の怒鳴り声がそこかしこで交わされ、アトラクションの順番待ちの列に進路を阻まれ、ろくに身動きもできない状態だ。



「本当にここ、南高だよね?」



そんな声を聞き、思わず笑いそうになる。


なにしろ県随一の進学校だ。
勉強第一主義の生徒が主体となって催す行事なんだから、自然とマジメで堅苦しいものなんじゃないか、と勘違いされやすい。


でも、そんなことは全然なくて。


とにかく自由なんだ。教師も口を出さない決まりだから、なんでもアリ。

未成年者の出し物としては相当クオリティが高いと思う。
自己満足だけで終わらない。来客への配慮が行き届いた、そういう祭り。

294心愛:2013/02/20(水) 22:47:09 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう、でも苺花に普段から女の格好させるのは至難の業だなw

次回は久々に美羽主役でいきます!
…サラッと書いてるけど、文化祭を男女で回るってそれだけでリア充認定されるんじゃないか←

295心愛:2013/02/21(木) 18:37:11 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp






パンフレットで行事予定表と校内マップを確認。校舎一階校舎一階、っと……。

視界を横切るのは壁にびっしり貼り付けられたチラシ、休憩所、映画、メイド喫茶にアトラクションの数々。



「とりあえず、近いとこに適当に入っちゃおうか。うろうろしてても仕方ないし」



美羽がこくんと頷く。
さてどうするか、とまたパンフレットに目を戻すと、




「恐怖の館へ、よくぞいらっしゃいましたァァアアア」




そんな声が耳に入った。
見れば、ゾンビに扮した男子生徒が、一つの教室の前でプラカードを手に接客している。奇跡的なことに、待っている客はいない。

『ゾンビ屋敷・恐怖の館』。
……ふむ。



「面白そうじゃん」



「え!?」



美羽が「君は正気かっ?」という目で見てくる。



「……もしかして怖い?」



「はっ、笑えない冗談だな」



笑ってる上に膝が爆笑してますよとか突っ込んじゃいけないんだろうな、うん。



「仕方ない。孤独を愛し闇を僕(しもべ)とする吸血姫(ヴァンパイア)であるこのぼくが、君の束の間の戯れに付き合ってやろう」



お決まりの中二台詞も、浴衣姿のままでは説得力皆無だった。


ちょっとした悪戯心も手伝って、あえて彼女に気は遣わず、ゾンビに近づいていく。
ゾンビはニタァと凶悪な笑みを作って一言。




「恐怖の館へ、よくもいらっしゃいましたァァアアア」




「おい待て今『よくも』って言わなかったかこのゾンビ」



「ウフフ気のせいだよォウ……。中は暗いから、この懐中電灯を持って行ってね」



びっくう! と早速涙目になっている美羽には普通に接した後、案内役のゾンビは室内に半身を入れ、



「こちら山中。良く聞け、今から一年坊が入るが、奴は……女連れだ」



『(任せろ。一撃で仕留める)』



「物騒なっ!」



さすが南高男子、先輩とはいえいっそ清々しいほどにカスである。
はびこる悪事は見逃せど、他人の幸せは見逃さない。これぞモテない男の真髄。



「き、君が先に行け。主を守るのは眷属の義務だ」



「はいはい」



ゾンビに見送られ、懐中電灯で照らしながら暗い道を歩いていく。


壁にこびりついた血潮(絵の具)や転がっている生首(紙粘土。無駄にリアル)を見るたびに、「ひ……っ」と美羽が竦み上がって背中に張り付いてきた。

気にとめていない風を装ってあげつつ順調に進む。


なんだよ楽勝じゃんか、と思った瞬間―――暗闇から蠢く影が飛び出した!



『うぼぁあ゙あ゙ー……』




「っっっきゃ―――――――――――――!!!」




美羽が唐突に絶叫!



「え、美羽!?」



「ひゃぅ、うううう」



しゃくりあげながら、美羽がぎゅーっとしがみついてくる。
どうしよう、ラブコメではお約束のパターンだけど嬉しさとか恥ずかしさとか感じてる余裕ないんだけど。「きゃーこわーい」みたいなレベルじゃなく、相方マジ泣きなんだけど。



『(……ど、どうしよう)』


『(おいバカ泣かせてんじゃねーよ最低だなこのクズ!? 人間のクズ!)』



ニ体のゾンビが喧嘩していた。……人間じゃないだろお前ら。
それにしてもなかなかシュールな光景だ。



「………! ………〜〜っ!」



後ずさろうとしてその先にあった蛙や蛇の玩具にビビりまくり、ついには「ひっ、ひっ、」と泣きじゃくり出す。



「さ、さっさと行くか」



ささやかな罪悪感にちくちく痛む良心に耐え、一歩を踏み出そうとしたとき。



《ズルッ……ズルッ……》


床を這ってきた三体目のゾンビが、美羽の足首を掴むように手を伸ばした。



『おじょー……ちゃァん』



「いやぁああああああああああああああ!?」



体裁も構わず俺にひっついてガタガタ震える美羽へ、
そのゾンビは床からゆっくりと手を掲げ、



『わ、忘れものだよゥ……?』



「ゾンビのくせに超親切!」



可哀想なゾンビが差し出してくれたのは、浴衣と同じ生地でできた小花の髪飾り。

とりあえず俺が代わりに受け取っておく。



『ケケケ……浴衣、似合ってるよー』



「ふ、ふ、ふん……っ、い、一応、礼は言っておく……っ」



お礼を述べるときには、ちゃんと人の顔を見て言いましょう。

296たっくん:2013/02/22(金) 01:01:34 HOST:zaq31fa4bcb.zaq.ne.jp

またウンコスレッドか。
もうちょっと面白いスレ立ててよ

297たっくん:2013/02/22(金) 15:04:52 HOST:zaq31fa4bcb.zaq.ne.jp
        【1984年〜2013年まで】

人生を振り返ります。
ちなみにカードダスが発売したのは
1988年です。

ドラゴンボールZ
ナメック星編は1991年です。


ではスタート!

298ナコード:2013/02/22(金) 19:32:17 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 >>296 人の作品を兎や角言える立場ではないと思いますけど?

 >>297 人の作品場に自分の作品を載せるのは馬鹿のすることだと思いますよ?
 荒らしは他のサイトでして欲しいんですけど?

299心愛:2013/02/25(月) 07:51:57 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp






閉会式では、最後の挨拶で実行委員長が男泣きして、みんなで労いの拍手をしたり。
受賞したクラスが狂気の沙汰みたいにはしゃぎまくったり。

開会式以上の大盛り上がりで、華々しいフィナーレを飾った。



「あー、やっぱ私服って楽ー。つか腹減った」



「一日中帯締めてたら全然お腹すかなかったのにね」



「ダイエットによくない?」



―――後片付けも終え、打ち上げの料理店の予約時間までうだうだやっている教室。
完全下校時刻が一時間引き伸ばされたせいで、外はもうほとんど真っ暗だ。



「柚木園くん劇観たよ、かっこよかったー!」



「ありがとう」



女子の一人に言われ、にこやかに柚木園が微笑する。
やっぱり男の格好の方が落ち着くらしい。……なんだかなぁ。



「なーなー柚木園、それなんだけど!」



そんな彼女に、春山が軽いノリで声を掛けた。



「劇、俺観れなかったからさ。良いシーンとか、もっかい再現してみてよ。暇だし」



「え、王子の劇?」



「私も観たいー」



春山に同調し、ぱらぱらとみんなが手を叩く。

気前よく荷物から台本を取り出しながら、柚木園が笑った。



「一人でやるの?」



「んー、相手は姫宮ちゃんでよくね?」



……春山と姫宮の目が合った。


一瞬間の後、姫宮がしっかりと頷く。



「……うん」



……えーと?


勢い余って天井を突き抜けそうだったテンションはなりを潜め、何故か周りに妙な緊張感が漂い始める。


隣に座る美羽も、急変した空気を察したように表情を強ばらせた。

な、なにこれ。急にどうしたよ。
ただの暇つぶしを兼ねた遊び、って感じじゃなくなってない?


だいぶ混乱し始めた俺の視線の先、姫宮がにっこり首を傾げた。



「じゃあ、まいちゃんがジュリエットやってね」



「は!?」



あっさり言ってのける姫宮に、柚木園が顔を引き攣らせ声を上げる。



「なんでそうなるの!?」



「……だめ?」



うるうる潤んだ瞳で見上げられ、うっと言葉に詰まる柚木園。
しばらく見えない何かと葛藤するように視線をさまよわせ、



「……わ、分かったよ! ただし、台詞読むだけ、だからね」



「うん!」



すかさず増えた拍手に背中を押され、柚木園は姫宮に予備の台本を渡し、渋々といった顔で彼と向かい合う。


一旦引き受けたことはやる、という責任感が仇になってしまったみたいだった。



「電気消した方が雰囲気出るかな」



パチン、という音と共に生まれた、即席のささやかなステージ。


月光を浴び、窓辺に立つ二人の姿が暗がりの中に浮かび上がる。



沈黙が支配する闇を優しく押しのけるように。
姫宮が柔らかい表情で、そっと告げた。



「―――“ジュリエット、大好きなあなたが名前を呼んでくれた”」



演技とは程遠い、ただの台詞の読み合わせ。
なのに深々と降り積もる雪のように、情の籠もった、心に響く声色だった。



「―――“あの木々の梢を銀色に美しく染めて輝いているあの祝福された月にかけて、僕は誓います”」



月明かりの下、姫宮の台詞を受けて俯く柚木園の頬が、微かに赤らんでいる。



「………“いいえ、月にかけてお誓いなさってはいけません。
あの不実な月、丸い形をひと月ごとな変えてゆく、変わりやすい月にかけてはいけません”」



震える唇が紡ぐのは、弱々しい拒絶の言葉。



「“あなたの愛がそれと同じように変わってしまうといけませんもの”」



「“それでは何にかけて誓えばよいのです?”」



すっと真剣な顔つきになり、姫宮が言いながら一歩前へと進んだ。
それに気づいた柚木園の肩が跳ね上がる。



「……“誓いなどされないで”」



俺は完全に、二人の雰囲気に呑まれていた。
言葉が出てこない。


何かを確信したように、柚木園へとまっすぐな眼差しを注ぐ姫宮の横顔は、まるで別人のように凛々しく、淡い光に縁取られていて。



……これじゃあ、まるで―――……

300心愛:2013/02/25(月) 07:53:12 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp







「まいちゃん」




そのとき。


姫宮が軽く背伸びして、
そっとその唇を、驚いたように一瞬硬直した柚木園の耳元に近づけ、



―――何事かを、囁いた。




「―――――ッ」




凍りついたかの如く、黒い瞳が見開かれる。

その奥に一瞬よぎったのは、


……恐怖?



ばさ、と台本が床に落ちる。



「柚木園っ!?」



「王子!?」



弾かれたように長身を翻した。


驚いて立ち上がる俺たちにも構わず、そのまま教室から走り去ってしまう。


姫宮は黙ったまま、静かに澄んだ瞳で彼女を見送り、



「………」



やがて睫を伏せて、面差しを暗く蔭らせた。


寂しそうな、哀しそうな、切なそうな―――そんな色が、小さな顔に浮かんでは次々に消えていく。




「……行ってあげなよ、姫宮ちゃん」




痛ましい沈黙を破ったのは春山だった。

場違いなほどに明るい笑みを零して言う。




「打ち上げは無理しなくていーからさ。ゆっくり話してきな」




「……ありがとう、春山くん」




硬い面持ちで頷いてみせ、姫宮がぱっと駆け出した。



「待っ、俺も」



「ダーメ」



あの様子はただごとじゃない。
後を追おうとした俺を、春山が声で制す。





「これで決まるから」




にやっと片頬を持ち上げて。



「どういうことだ?」



「おー、結野ちゃんってばそんな睨まないでよ、ゾクゾクしちゃう俺ー」



いつもと同じくへらへら笑い、何でもないような口調でこう宣う。




「どういうこと、かぁ。俺が言えるのは―――機会(チャンス)は作った。だから後は姫宮ちゃんの頑張りにかかってる、ってとこかな」




「……なんだよ、それ」




「あと一歩なのに、柚木園の方にちょっとわだかまりあるみたいだったんだよね。何だかは知んないけど、だいたい予想はつくじゃない?」




俺と美羽を除く級友たちが、『……やっぱり』と顔を見合わせて頷きあう。




「多少強引にでもだよ? 誰かが背中押してやんないといつまでもあのままだからさ」




柚木園と、姫宮のあの様子。
さらに、春山の遠まわしな言葉を冷静に噛み砕いてみれば。




「……まさか、」




「気づくのおせーよヒナ」




軽薄な―――見ようによっては、『そう取れるように』作られたような―――そんな笑みを湛える男。



「最近、明らかにおかしかったじゃん」



言葉が出ない。


……こいつは。
柚木園と姫宮の気持ちを察していて、こういう状況を作ったら姫宮が動くことも予想していて。

だからわざと、あんなことを言い出したのか?




「ほら、俺ってドMだから? 虐げてもらうには柚木園に元気になってもらわねーと調子狂うワケ」




「……君は……」




「あはは、とか言っても大したことはしてないけどねー」




多分、俺も同じみたいな顔、してると思うけど。
信じられない、という表情の美羽に、春山がニカッと歯を見せて。




「俺が仕掛けて、姫宮ちゃんは乗った。それだけ」




そして、ぱん! と大きな音を立てて手を叩いた。




「はいこの話終わり! みんな打ち上げ行くぞーッ! 店の予約7時半だから!」




春山慎太郎。


チャラくて変態で、どうしようもないバカで。


でも本当は、もしかしたらだけど―――



俺たちの誰よりも、賢くて。



仲間思いな奴、なのかもしれない。

301矢沢:2013/02/28(木) 17:03:34 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
匿名マジキモイよね。
名無し=たっくん&ffは、ガキなので矢沢の予言通りに死んでしまったけど。
セバスチャンも見下すレベル。

302心愛:2013/02/28(木) 18:51:43 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp






「せっかくの食べ放題だ! 店の経営に差し障る勢いで食って食って食いまくれーっ!」



『おお―――――!』



南高生の常連が多いと聞く、駅前に店を構えたお好み焼き屋の二階にて。

視界の隅で店長と思しき壮年の男性が青ざめてブルブル震えているような気もするけれどそんなものお構いなしで、食べ盛りの高校生40人弱がジョッキ(もちろん中身はノンアルコール)を突き上げる。



「春山ー、こっちオレンジジュース足りないんだけどー」



「ありゃ、こっちもウーロンしかないわ。すみませーん、オレンジジュース追加でー!」



二人ぶんの空席を補うように明るく声を張り、春山が率先して場を盛り上げる。
それに気づいてても、彼に応えるように全力で騒ぎ、楽しもうとするみんな。



「……いいクラスだよ。本当」



黒塗りのテーブルに肘を付いて苦笑すると、向かい側で畳にこぢんまりと正座している美羽も黙って表情を和らげた。



『春山のー、ちょっといいとこ見てみたい! ……いっき! いっき!』



「えー、マジかよー。じゃあここは俺がこの特製ミックスジュースを」



『お好み焼き用ソースいっき!』



「ドMでも真っ青のリクエスト来たっ!?」



とか言いながら、春山が本当にテーブル備え付けのソースのボトルを傾けて喉に流し込んでいた。
男女入り混じった、盛大な歓声が弾ける。



「……正直、あれはやりすぎだと思うが」



「……うん」



良い子は真似しちゃだめだからね。
や、もちろん悪い子でもだめですけれども。



「こちら、豚チーズ玉とミックス玉でございます」



「あ、ども」



注文したお好み焼きの玉が届いた。

ボールを手に取り、さっさと玉を混ぜて鉄板の上に生地を流し込む。よし、適量。



「……ずいぶんと……慣れているな」



「家では俺が焼く係だからね。彩もみんな丸投げだし」



もちろん俺だけじゃなく、女子しかいないテーブルには自然と男子が一人二人派遣され、代わりに焼いてあげている。
テンションがいかにおかしかれ、紳士の心は忘れないのが我がクラス。


頃合いを見てひっくり返すことしばし、形も、焼き加減もそこそこのものが出来上がった。
四等分に切り分け、一枚を皿に乗せ、ついでに適当に味付けもしてやって。



「できたよ」



「………ぅ、む」



妙に容姿が店内に馴染まない美羽は、戸惑ったように数回瞬きして皿の上の物体を見る。


もしかして生粋のお嬢様は、こういう庶民的なものは食べたことがないんだろうか。
それとも、美空先輩から嫌になるほど聞かされてる偏食ぶりが発揮されてる?

……そういえば昼休みの弁当も、持参したサンドイッチ以外全然見たことないけど……。


こっそり心配していたら、箸で物珍しげに生地をつんつん突っついていた美羽は、



「………悪くは、ない」



ちょっとだけかじって、ぶっきらぼうにだけどそう言ってくれた。



「ほんと?」



「ふん……吸血姫(ヴァンパイア)は嘘はつかない」



無理してるのかな、とも思ったけど、そうでもないみたいだ。

ほっとして、自分のぶんにマヨネーズやソースをかけ始める。
お好み焼きの上でふよふよ動くかつお節に、びっくりした顔をする美羽がちょっと面白かった。



「モダン焼き早く来ないかなー」



「まだ何かあるのか……?」



ちまちま具を口に運ぶ美羽が軽く顔を引き攣らせていた。

それ、まだ一枚の四分の一だからね。一人前じゃないからね。

303心愛:2013/02/28(木) 19:09:54 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp






「それにしても暑すぎないか、この部屋」



「そんなの着てるからだよ」



もう夏だというのに、黒い長袖のゴスロリ姿を貫く美羽はなんだか見てるだけで暑くなってくる。
でも本人は首を横に振って否定。



「装束の問題ではない。クラスのテンションが暑苦しいんだ」



「……確かにね……」



『春山ー、いっき! いっき!』



「げふ……えっちょ、まだやんの?」



『しょうゆいっき!』




「さすがに勘弁して下さいませんかねぇ!」



赤ら顔で悪ノリするクラスメイトたちに、春山がとても見事な土下座を繰り出していた。


……このドリンク、アルコール入ってないよね?



『……チッ』



「あれ、俺めっちゃ嫌われてる!? ……く、悔しい、でも感じちゃう……」



「きめぇ」



ハァハァする春山を横目に吐き捨てたところで、




「待っ……なんで!? なんでこれ外れないの!?」




「僕、握力強いんだよ? ちゃんと手加減してるし」




「確かに痛くないけど……って違う! 早くしないとみんなに見られ―――」




だんだんと近づいてくる声。
俺たちは誰からともなく視線を交わし合い―――



満面の笑顔を、入ってきた二人へと、向ける!




『ひゅ―――――ひゅ―――――!』




「遅かった―――っ!?」




柚木園の悲鳴に腹を抱えて爆笑する面々。



「笑いごとじゃない! ……ああもう、夕紀!」



「えー」



嬉しそうに頬を火照らせた姫宮と、彼に引っ張られる形で入ってきた柚木園。

二人の間で何があったかは分からないけど。



「おかえり」



祝福の笑みを含んだ俺の何気ない言葉に、一瞬驚いたように声を詰まらせて。
柚木園はそれから視線を逸らし、恥ずかしそうに小声で答えた。



「……ただいま」



いつもの調子を崩して、女の子らしく照れる様子は、やっぱりなんか……可愛らしい。
多分、これが本来の柚木園なんだろうけど。



「で。君たちは今まで、具体的に何をしていたんだ?」



「あの台詞の最後、姫宮なんて言ってたの?」



「んーとねー」



「夕紀!」



「はぁい。まいちゃんに怒られちゃうから、内緒」



俺と美羽が座るテーブルの、空いた席につく二人。



「ねーねーまいちゃん、おかえり、ってもう一回言ってみて」



「? ……おかえり」



「ただいま! えへへ、なんか夫婦みたいだねっ」



「ふ、ふぅーっ!?」



……負けてらんないなぁ。

初々しい二人の様子に触発されて、とある考えを思いついた俺は美羽に向け、少し大きな声を出した。



「あの、さ!」



ぽけーっとして姫宮と柚木園を眺めていた彼女が、こっちを見る。




「ちょっと付き合ってほしいとこがあるんだけど……その、次の日曜とか。お昼、一緒にどうかな」




今度は意識してボリュームを落とし、噛みそうになるくらい緊張して、なんとかそれだけ言い切った。


や、白状すれば、そんな場所なんてないんだけど……とにかく誘う口実がほしくて。


内心ドキドキしながら様子を窺う。


美羽は大粒の赤い瞳をさらに大きくし、数秒間呆けたように黙り込んでから、




「し、仕方ないな! 君がどうしてもと言うのなら……たまには眷属の我儘に付き合ってやるとしよう」




頬を染めて、いかにも傲慢そうに、顎をつーん! と突き上げた。



「よし……っ」



すんなり了承をもらい、テーブルの下でこっそり拳を握る。
これで、俺も一歩進んだ……か、な?



「いちゃついてんじゃねーよそこ!」



「これ以上リア充が増えるのはごめんだ!」



「「いちゃついてない!」」



慌てて反論すれば、クラス中からけらけらと笑われる。
そのタイミングを見計らって、春山が声を張り上げた。



「全員揃ったことだし、乾杯するぞー!」



彼の音頭を聞きながら、再び全員でジョッキを持つ。



「じゃ、シンプルに! ……文化祭お疲れっした! かんぱーい!」



『かんぱーい!』



ガラスのぶつかり合う涼やかな音が、熱気の立ち込める室内に大きく響いた。

304ピーチ:2013/03/02(土) 10:45:33 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃんと夕紀ちゃん(?)成功!←

これ以上リア充増やすなー!!w

春山君は馬鹿っぽいけどいい人だった!

305心愛:2013/03/02(土) 19:05:12 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

主人公出し抜いてちゃっかりカップル成立させやがりました←
これに至る経緯はこれから、番外編でちゃんと書くよー!

「そこそこ勉強ができる上でのバカ」が隠れテーマなんだけど(ぇ)、
バカっぽく振る舞いつつも実は! みたいな演技派もここあは結構好きなのですw
見せ場はあと一回くらいしかない予定だけどね!

306ピーチ:2013/03/02(土) 21:40:59 HOST:EM49-252-124-211.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんとに主人公出し抜いてるしねw

やったー! めっちゃ楽しみだー!

優しいよね! 春山君以上に馬鹿なあたしが言えることでもないけど!

307心愛:2013/03/03(日) 18:37:42 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとーうっ!
苺花編は文化祭が終わるまで、もうちょい続くよーヽ(≧▽≦)/
そしたらヒナと美羽のデート(?)だなw


第一印象最悪だっただろう春山のイメージアップがなされたことを祈る!

308ピーチ:2013/03/03(日) 18:49:50 HOST:EM114-51-64-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃんはやっぱり美人なのにね!

ヒナさんと美羽ちゃんのデートとなると、どーなるかなぁ…

……うん、確かに第一印象は…

309心愛:2013/03/04(月) 15:27:43 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女としての自己評価が低すぎる美人さんですw
ここあキャラは無駄に美形が多いけど、だいたい自分の容姿レベルはわきまえてますがね!


甘酸っぱい展開にはなりそうもないことは確か←
デートといっても二人でちょっと出かけるだけだしね!
…でも、シスコン姉がこっそり暗躍しちゃうかも(笑)


第一印象がアレなのは無理ないと思うよ、うん。むしろ狙ってたしね、うん。
「なんだこいつもちょっとだけいいとこあるじゃん、キモいけど」とでも思ってやってーw

310ピーチ:2013/03/05(火) 05:16:29 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

低すぎるの問題じゃないくない? 最早女として見てなくない?←

分かる! 自分の容姿レベルわきまえてるから自然と美形が多くなる!

え、でもここにゃんって綺麗そうなのに?

311心愛:2013/03/05(火) 17:00:41 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ


………ぇ(゚_゚)………?

いやいやいやそんなことぜんっぜんないよ!
つい自分と真逆の容姿のキャラを作ってしまうんだよ…。


ピーチこそ可愛い子だと思うよ!


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