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陰陽師 〜前世と現世〜

66ピーチ:2012/04/15(日) 20:31:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
誠人が、苦笑しながら言った。
「・・・なぁ、大丈夫か?」
「・・・え?」
思わず聞き返した誠人に、明人はこう言った。
「誠人ってさ、変な所で上手く誤魔化しきくだろ?」
「そ・・・そうかな・・・?」
誠人は、言い返しながら自分の顔が引き攣っているのがはっきり分かった。
「まぁな・・・」
「あ・・・俺、もう寝るね」
「え?あ、あぁ・・・」
そう言って明人を部屋から追い出し、鍵を掛けた。そしてまた妖のことを調べるため、本を開いた。
次の日、とうとう夏休みが終わり誠人にとっては雑鬼達との約束期限が、今日で切れたことになる。
「・・・行ってきます・・・」
「大丈夫かー?何か顔色悪いぞ?」
「・・・明人が原因だろ・・・」
「え?俺が原因?」
「・・・何でもない・・・」
「はは・・・わりぃ・・・」
明人は、全く覚えがないが、一応謝った。
「あれ?誠人、どうしたの?」
誠人と明人の背後から、いきなり声が聞こえた。
「え?明菜!?」
「あ、おはよう」
まるで言い忘れていた、と言うかのように、後から付け足した。
「お、おはよう・・・」
「・・・オース・・・」
その直後、尭悸が誠人に声をかけた。
「おい誠人、俺は今日は明人の方行くからな。後で見回り行くぞ」
「あ・・・ゴメン、俺今日・・・ちょっと用事が・・・」
誠人が、目だけで明人にSOSを出す。明人はそれに気付き、誠人のSOSに答える。
「まぁまぁ・・・今日くらい、いいんじゃねぇの?」
「・・・夜からな・・・」
「・・・うん・・・」
しばらく四人で、周りから見れば三人で話しながら、教室の前で誠人と、明人、明菜に分かれた。
「あ!誠人!」
「え?」
後ろを向くと、裕也が手招きをしていた。それを見て、裕也の所に行った。
「あのさ・・・昨日何か、家の周りが歪んだ感じがしたんだけど・・・」
「・・・歪んだ・・・!?」
誠人がゆうやの家の周りに張った結界は、破られた時、裕也達でも気付くように簡単な加工をしていた。
「あ・・・あぁ・・・」
「今日、帰る前裕也の家寄ってもいい?」
「え?あ・・・別にいいけど・・・」
「・・・・・・・・・」
その後始業式が行われたが、誠人は、裕也の言葉が頭に張り付いていて、殆ど何の話も聞こえていなかった。
そして、始業式が終わり、裕也の家に向かった。

続きまーす

67ピーチ:2012/04/15(日) 21:51:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・まずい・・・!」
「・・・どうなってんだ?」
「・・・結界が破られた・・・」
「え!?」
誠人は大丈夫、と言った後、胸の前で両手を組んだ。しばらくの沈黙が続き、ようやく誠人が、組んでいた両手を元に戻した。
「・・・この前より強度上げたから、多分大丈夫・・・」
恐らく、前の結界が破られた以上、油断はできないのだろう。
「なるべく早く、親に帰ってきてもらうようにしてね。一人でいるよりずっといいから」
「あ、あぁ・・・」
「じゃあ・・・ついでだからここら辺見回って行こうかな・・・」
そう言って、誠人は裕也の家を後にした。しばらく見回して、何もいないのを確認してから帰ろうとした時、反射的に何もない地面を避けた。
「いってえぇぇぇ!」
突然、雑鬼達の悲鳴が上がる。
「・・・自業自得だ・・・」
と、誠人が小さく言った。
「ま、まさあ・・・誠人!」
「え?」
「お前この間・・・あの変な化け物倒したよな!?」
「あ・・・?あぁ、あれは・・・」
そう言いかけた時、誠人は全身を刺すような妖気を感じ、真正面を見た。
≪我ラガ仲間ノ・・・仇ダ・・・≫
「!?」
突然、誠人目掛けて鋭い棘のようなものが飛んできた。
「お・・・っと・・・」
≪オ前・・・ソノ身ニ呪詛ヲ宿シテイルナ・・・≫
「・・・・・・―――っ!!」
いきなり誠人の身体の中で、またあの大蛇が暴れだした。
≪・・・アイツラモ、ハジメカラコウシテレバ良カッタモノヲ・・・≫
はぁはぁと苦しそうな呼吸を繰り返す誠人を一瞥して、妖はこう言った。
≪苦シイダロウ?死ンデシマエバ楽ニナレルゾ?≫
そう言って妖は、誠人の腕を見やった。
≪痛々シイ傷ダ・・・コンナ傷、贄デアル者ニツケテテ良イ訳ガナイ・・・≫
妖が、誠人の腕に手を置こうとした時、誠人は反射的に避け、屋根の上に逃げていた。
≪何故逃ゲル?我ラガ主ノ贄トナレルコト、光栄ニ思エヨ・・・!≫
この妖が言葉を発するたびに、大蛇が一層激しく暴れ、それが、誠人の動きの殆どを封じていた。
≪・・・別ニ、オ前デナクトモ天野ノ人間ナラ誰デモ良イ・・・≫
「な・・・に言って・・・!?」
≪天野 明人、守人、水希・・・誰デモ構ワナイ・・・無論オ前デモナ・・・≫
「・・・!」
「ふざけるな、たかが地獄の使いが」
誠人が答える前に、すぐ近くで誠人や妖以外の声がした。
「え?」
≪・・・何者ダ・・・≫
「・・・お前なんかと話す必要はない、消えろ」
≪フ・・・フザケルナアァァァァ!!≫
「!?」
「う・・・わ!?」
不意に、誠人は自分の身体が宙に浮いたことを理解した。
≪フザケルナフザケルナフザケルナ・・・コノ者は主ノ贄ダァァ!!≫
「・・・その者は俺の主だ・・・」
そう言った直後、尭悸を包んでいた闘気が一瞬にして変わった。
「あの妖を・・・妖だけを焼き払え」
尭気が呟いた途端。火の鳥が姿を現し、誠人に、いや、妖に向かって飛び掛っていった。普段の何百倍もの熱さが頭上から降ってきた。慌てて、妖が誠人から手を離す。
「・・・同情の余地はねぇな・・・」
≪マ、待テ!何ダオ前ハ・・・!?≫
「『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』!!」
そう唱えながら九字を切り、手で格子を切った。元々、尭気が放った鳥の効果で身動きは取れないので、真言密教だけでも良かったのだが、一匹一匹倒さないとずっとこうなるかも知れないと言う思いが、わざわざ九字切りまで持っていったのだ。
「・・・戻れ」
尭悸が、小さくその鳥に言った。
ギャァァァと言う不気味な悲鳴を上げながら、妖が消えた。と同時に、誠人が倒れ、そのまま意識を失った。

続きまーす

68ピーチ:2012/04/15(日) 22:38:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「お、おい!誠人!?」
「な、なぁ・・・」
不意に、雑鬼達が尭悸に声をかけた。
「・・・何だ・・・」
「誠秋・・・じゃなくて誠人の左腕・・・」
「!?」
尭悸が誠人の左腕を見ると、黒々とした文様が浮かび上がっていた。それも、普通の大きさではない。
「な・・・・・・!?」
言葉を失っている尭悸は、とりあえず雑鬼達に礼を言って、誠人を連れ帰った。
しばらくして誠人が目を覚ました時、目の前に明人と尭悸、それになぜか守人までいた。
「あ・・・え!?ここって・・・」
「家だ」
不機嫌丸出しの状態で、尭悸がそう答えた。
「・・・俺確か・・・」
「あぁそうだ、妖に襲われた」
「・・・・・・!」
「守人、明人・・・悪い。少し二人にさせてくれ・・・」
「・・・分かった」
二人ともそう答えて、部屋を出て行った。
「・・・誠人」
「・・・分かってる、さっきの妖だろ?あれは―――」
「そうじゃない」
「・・・え?」
誠人は、尭悸が何を考えているのか分からなかった。恐らく、尭悸も同じだろう。
「・・・何で呪詛のことを黙っていた?」
呪詛。その言葉を聞いて、誠人はぐっと押し黙った。
「あのまま誰も気付かなかったら・・・お前今頃死んでたかも知れないんだぞ!?」
「・・・分かってる・・・」
「じゃあ何で・・・」
尚も言い募ろうとする尭悸を、口元に手を当て黙らせた。
≪・・・ドウスル?ヤハリ天野 誠人ヲ使ウカ・・・?≫
≪イヤ、アノ者ニハ妖ガツイテイル・・・天野 明人ノ方ガ・・・≫
≪シカシ、一番霊力ノ高イ者ヲ連レテクルト言ッタデハナイカ・・・≫
「・・・」
誠人が胸の前で両手を合わせ、小さく何かを囁いた。その直後、今まで軽く天野の敷地にいた妖達が外に吹き飛ばされる。それを確認し、誠人は組んだ両手を離した。
「・・・無茶ばかりするな」
尭悸が、重々しく口を開いた。誠人は、ただでさえ力を使いすぎているのだ。これ以上無理に力を使って制限が効かなくなったら、それこそ誠人の身体に余計な負担がかかる。
「・・・うん、分かってる」
「・・・いつからだったんだ?」
「え?」
「いつ、呪詛を受けた?」
誠人はしばらく黙っていたが、尭悸の気迫に負けて、小声で言った。
「・・・夏休みが始まってすぐ・・・」
裕也の家に泊まると言って、数日後に戻ってきた。その時には既に、誠人の身体は呪詛に蝕まれていたことになる。
「・・・文様も大きくなって当然だな・・・」
「・・・!?」
誠人は、反射的に自分の左腕を見た。すると、一番最初の頃よりもずっと大きく、黒々とした文様になっていた。
「いつも間にこんなに・・・!?」
「・・・とにかく、守人を呼んでくる」
「・・・え?」
「自己流で陰陽修行してたら、いつの間にか使えるようになったんだと」
「え・・・」
尭悸は、絶対にこの部屋からでるな、と念を押して、守人を呼びに行った。
「・・・何で気付かれたかな・・・」
そんなことを考えながら、しばらくすると、尭悸が守人を連れて部屋に入ってきた。守人は、誠人の腕を見ながら小さく呟いた。
「・・・何をどうしたらここまで大きくなる?」
「・・・さぁな、本人に聞いてみれば?」
「・・・とりあえず誠人、式紙の準備」
「あ・・・うん」
守人に言われて慌てて式紙を取り出し、自分の形にして隣に置く。
「・・・・・・天野 誠人の体内を蝕む闇の大蛇よ・・・この式紙を形代とし、それを通して暴れよ・・・!」
「・・・・・・・・・あ・・・!」
誠人の、今まで鉛のように重かった体が、急に軽くなった。
「その文様も、ニ、三日で消えると思う」
「あ・・・ありがとう・・・」
「誠人」
急に、尭悸に呼び止められた。守人は仕事があるからと言って、部屋から出て行った。
「・・・何?」
「・・・あまり無茶ばかりするな、分かったか?」
尭悸は、まるで苦虫を噛み潰したかのような表情で言った。
「あ・・・はい・・・」
「今日は家で大人しくしてろ・・・夜になってもだ、いいな?」
「・・・はい・・・」
それだけ言うと、尭悸は身を翻して誠人の部屋を出て行った。

陰陽師 〜前世と現世〜       終わり


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