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FRAME・GHOST

95竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/22(水) 17:59:05 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「……ッ!」
 思い切り霧野とぶつかり、やはり身体を倒してしまった藤村は起き上がろうとする。しかし、上に何かがのしかかっていて身体が起き上がらない。というか、身体に何かがではなく、顔の部分に何かがのしかかっている。
 藤村は目を開けるが、頭にのしかかっていて暗い視界ではのしかかっている物の全貌は掴めない。
 ただ、感触としては柔らかい、が。その奥に何か固いものがあるような気がする。そして香水のような甘い香り。上の方から『うーん』という起き上がろうという声が聞こえる。
 間違いなく霧野の声だ。
 ということは、今自分の顔の上に乗っかっている柔らかい物体の正体は……。

「きゃあっ!?」

 状況を把握した霧野が甲高い声を上げる。確認できないが霧野の顔は今とても赤いと思う。
 藤村の顔に乗っかっているのは彼女の胸だ。彼女の胸の谷間に丁度藤村の顔が埋まっている、という構図だ。
 慌てて何が何だか、何をどうすればいいか分からない錯乱状態に陥っている霧野は、
「ちょ、ちょっと藤村くん! いつまでそ、そんなところにいるのよ! は……早くどいてぇ!!」
「お、お前がどかなきゃ俺がどけねぇだろ! お前が上に乗っかってんだぞ!」
 
 かくして、藤村は窒息しそうになりながらも脱出し、肩で大きく息を吐いていた。神山は羨ましそうに藤村を見ている。
「はぁ……はぁ……苦しくて死ぬかと思った……!」
 その言葉を霧野は聞き逃さなかった。
 彼女は涙目で胸を押さえながら、その言葉をよく考え直してみる。
 藤村は苦しいと言っていた。彼の顔に乗っかっていたのは自分の胸。つまり、これは胸が大きいということ? という思考に霧野は持ち込んでいく。
 霧野はホッと息を吐く。『私って大きい方だったんだ』と安堵していた。恐らく、小さいほうだと思っていたのだろう。
 しかし、藤村の言葉の本意は『自分の身体に乗っかっていた霧野の身体の重みによる圧迫感』で苦しんでいたため、彼女の胸が大きいからではなく、彼女の体重によるものだという事を、霧野はこれから知ることはない。
 いつもどおりの騒々しい喧騒の後に、刺すような言葉が響く。

「……まったく、愉快な奴らだな」

 そこにいたのは折宮明日香。
 彼女は引っ張られていたため腕を痛めたのか、手首をぶらぶらと回している。
 今までの出来事でそちらに視線がいっていなかった神乃院は彼女を忌々しそうな瞳で睨みつける。その視線に気付いたのか、折宮も負けず劣らず睨み返す。
「……何だよ、生徒会」
「……大体生徒会って名前じゃないんだけど、風紀委員。大体何でアンタがここにいるわけ?」
「私だってこんなとこに来るのは願い下げだっての。迷惑だったんなら帰るさ。そもそも、私は無理矢理連れて来られたわけであって―――ッ」
 帰ろうとする折宮の襟を霧野は素早い動きで掴み取る。中途半端に首を絞めたのか、霧野が襟から手を離すと折宮は涙目で咳き込んでいる。
 霧野はそれを気に留めず、折宮を神乃院の前に立たせた。
 向かい合わされた意味が理解できていない神乃院と折宮は眉をひそめながら、霧野を見つめると、
「はい、仲良しするために握手しよ。こんなギスギスした空気じゃ共闘なんてできないし」
 はぁ!? と神乃院と折宮は声を揃えた。
「何で私がこんな生意気な奴と握手なんてしなきゃいけないんだよッ!?」
「そうよ霧野さん! 大体いくらなんでもこんな奴と握手なんて私はしたく―――ッ」

「あ・く・しゅ!!」

 生徒会室に霧野の大声が響き渡る。
 近くにいた神乃院と折宮は堪らず耳を塞ぐ。霧野の勢いに負けた二人は渋々右手を差し出して、お互いに嫌そうな表情のまま握手をする。両方口を尖らせている。
「……仕方ないからよろしくてやるよ、神乃院市」
「……こっちこそよ、馴れ馴れしくしないでね。折宮明日香」
 言葉はともかく、和解できたことに霧野は満面の笑みを見せる。
 可愛らしく、幸せそうな、小さな子供が親から褒めてももらった時のような、無邪気な笑みだ。


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