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FRAME・GHOST

89竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/19(日) 11:07:52 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 工藤が口にした『風紀委員長』という言葉に、折宮は顔を顰める。
 彼女にとって、『風紀委員長』という存在はとても大きい。折宮は委員長に誘われて風紀委員に入った、というのもあるが、今まで誰もが恐れていた自分の力を、彼女が認めてくれたのが一番嬉しかった。『風紀委員長』は折宮にとって、居場所を作ってくれた恩人なのだ。だから折宮は委員長に忠誠を誓っている。委員長が進む道を必ずついていき、邪魔するような障害を全てなぎ払いサポートする。折宮は委員長に心酔していたのだ。
 だからこそ、目の前にいる工藤政宗の言葉に腹が立つ。
 脅しのつもりか、無理矢理にでも協力させるために、わざわざ委員長の名前まで出しやがって。折宮の思考と目に迷いはなく、腰の裏に挿してあるダガーを、鞘からスッと引き抜き、切っ先を工藤に向ける。
 向けられた工藤は眉一つ動かさず、自分の喉元に突きつけられたダガーの切っ先を眺めている。首に少し当てただけで、スパッと切れてしまいそうな程鋭く尖っている。
 工藤は広げていた両手をポケットに突っ込んで、

「……何のつもりかな、これは? 脅しかい?」
「それはこっちの台詞だぜ。わざわざ委員長の名前まで出しやがって……、それで私が動くとでも思ってやがるのか?」
「俺は別に脅しのつもりじゃないよ。ちゃーんと委員長さんと話してきたし」
「そういう問題じゃねぇよ。言ったろ、私は『一人でする』って。だから……アンタの手は借りないし、必要ない」

 折宮が意地を張って『一人でやる』と言い切っているのには理由がある。
 折宮は『風紀委員長』に忠誠を誓っている。居場所を作ってくれた委員長に恩返しがしたい。そのため、彼女の風紀委員としての行動は全て『委員長への恩返し』なのだ。たとえこの一件が片付いても、彼女の委員長への恩返しは終わらないだろう。きっと、委員長が卒業するまでやり続けるはずだ。
 委員長と話し、その事を知っている工藤は、
「何も一人で背負う事ないんじゃない? 協力することは大事だよ?」
「私はそれが必要ないと言っている! さっきから人の話をちゃんと聞いているのか!?」
「悪いと思わないのか」
 工藤の言葉に折宮は眉をひそめる。
 風紀委員長の命令を無視し、生徒会との協力を拒絶していることをだろうか。そう言われれば、委員長の命令に背くわけにもいかないし。
 折宮が思考を巡らせていると、工藤が言葉を続ける。

「風紀委員長の命令を無視し、さらには……協力してくれる人を思い切り突き放して、君の良心は痛まないのかい?」

 そこで折宮はハッとする。
 霧野七瀬。自分が事件を話さなくても、工藤によって無理矢理協力させられていたであろう人物。
 彼女が自分に話をかけてきた理由なんて分からない。確か『誰かの役に立ちたい』とか言っていたような気がする。
 しかし、折宮はそんな彼女に、

『事件の解決に協力してもらおうなんて思っていない』。
 そんな事を言って、突き放した。その後の霧野の表情はかなり曇っていたような気がする。
 彼女は最後まで、自分と協力して事件を解決する、と思っていたはずなのに。

「俺が言えるのはここまで。気が変わったなら明日の放課後、生徒会室でお待ちしてまーす」
 工藤はそのまま背を向け歩いていた。
 折宮は工藤にダガーを突きつけていたことも忘れていたのか、急いでダガーを鞘にしまう。
 ふぅ、と息を吐き、彼女は窓の外に目をやる。
「……私は、一体どうすればいいんだよ」


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