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FRAME・GHOST

88竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/17(金) 23:17:31 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 折宮明日香は一年生クラスの廊下を歩いていた。
 規則的な足音。真っ直ぐ立ち、一切の揺らぎも見せない身体。彼女の足が前へ前へ動くたびに、短い髪の毛先が僅かに上下する。
 放課後、という事もあって現在廊下には彼女しかいない。そこで何をしているのかというと、教室内にまだ生徒が残っていないかの確認である。
 と、そこでふと折宮が足を止め、振り返らないまま言う。
「―――気付かないとでも思ったか。コソコソと女の子を追い回すなんてみっともない。生徒会長がするようなマネじゃないんじゃないか?」
 彼女が言うと、廊下の柱の影から工藤がひょこっと顔を出した。
 女子が行うと可愛らしい仕草だが、高校三年生の工藤が行うと……言ってしまえば悪いが、微塵の可愛さも見出せない。
 彼は尾行を看破されると、苦笑いを浮かべながら人差し指で頬をかきながら、
「いやぁ、気付かれるとは思わなかったな。さすがは、風紀委員長自らスカウトした委員だ、とでも言うべきかな?」
「世辞を言うために来たのかよ」
 折宮は目上の工藤に対しても敬語ではない。
 電話で風紀委員長と連絡していた時も敬語じゃなかったし……そういう敬意を払うことにはあまり気にしていないんだろうか。
 工藤は両手をポケットに突っ込んで、

「本題に入ろうか。君は、どうしても俺達と協力してはくれないのかな?」

 折宮の表情が僅かに険しくなる。
 まだ言うか、というニュアンスの目つきで工藤を睨みつけると、
「言ったはずだ。私はアンタ達とは組まないって。私は私のやり方で事件を解決するってな」
 工藤は溜息をつく。
 まるで、そう返してくるのが分かっていたかのような反応だ。
「良いじゃないか。目的は一緒なんだ。一緒にやった方がよりいっそう早く済む」
「生徒会に風紀委員。更には無関係な生徒も巻き込んどいてよく言うぜ」
「無関係な生徒? それを言うなら君も事情を霧野さんに話したんだろ?」
「私が話さなくても、奴に話すように藤村にお前が仕掛けたんだろが」
 どちらの言う事も正論だ。
 工藤は『より早い事件の解決のため、力のある生徒を集める』やり方。一方で折宮は『無関係な生徒を巻き込まないため、どれだけ時間がかかってもいいから、より犠牲の少ない』やり方。二人の意見は真っ向から衝突していた。
 いわば水と油。
 二人の思想が結局交わる事は無い。

「無関係でも力があれば貸してもらう。より早い事件解決になると思うけどなあ」
「私はそうとは思わない。無関係な生徒を巻き込むなんざ、生徒会長のやるべきことじゃねぇ」
 工藤は溜息をつく。
 すると彼は、最大の切り札を使うように両腕を水平に広げた。抵抗さえもしないというように。
「……何のマネだ? 『俺は抵抗しないから、制限時間内に俺を倒したら従う』ってか? いくらなんでも無抵抗な人間を甚振る趣味はないんだが」
「いいや。そうじゃないよ」
 工藤は言葉を区切ると、

「今回の事件が、風紀委員長自ら『結託してほしい』と言われても、君は意地張って一人でやるつもりかな?」

「……何だと?」
 折宮の眉が、僅かに動く。


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