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FRAME・GHOST

86竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/12(日) 22:01:27 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 藤村は自分の寮の扉の前に立っていた。
 今日帰る時に工藤から言われた事を忘れてはいない。とりあえず、帰ってから霧野には今日生徒会の面々から聞いた話を説明し、明日の放課後生徒会室に行くように言うだけだ。篠崎にも説明しないといけないのだが、篠崎への連絡は申し訳ないが電話で済まそうと思う。
 ドアノブに手をやり、藤村はゆっくりと扉を開いた。
「……ただいま」
 いつになくテンションの低い挨拶をする。
 リビングに入ると、心配そうな目で霧野がこちらを見ていた。彼女の表情に面食らっていると彼女は藤村に抱きつき、目にはいっぱいの涙を溜めていた。そんなに一人にさせたことが悪かったのか、と藤村は罪悪感に苛まれる。
 しかし、霧野の口からは藤村の予想とは大幅に違ったものだった。
「……おかえり、藤村くん……。なんとも、ない……?」
 泣き出しそうな、搾り出すような声で霧野は藤村に問いかけた。
 どういう意味か分からない。藤村としては、神山とゲームセンターに行っただけで、そこで偶然事件の調査をしている生徒会と合い、事件の事を聞いたまでで……。
 そこで、藤村はもしかして、と一つの可能性を探り始める。

「霧野。お前、ゲーセン近辺での事件のこと……知ってるのか?」
「……うん。帰る途中に折宮さんに合って、そういう事件が起こってるって言うから心配で……」
 
 まさか、自分達が生徒会から話を聞いている間に、霧野は『あの』折宮から事件のことを聞きだしていたとは。折宮はそういうのは他言しそうにないのに、よく言ったなと藤村は思う。だが、彼女のことだ。藤村は折宮の事をほとんど知らないが、あまり言いふらさないように霧野に釘を打っているに違いない。そこは安心できる。
 霧野は、とうとう目から大粒の涙を流してしまった。藤村の無事が確認できて安心したのか。安堵共に流れた涙だ。
 藤村は霧野の涙を指で拭ってやり、彼女の頭を軽く撫でる。
「心配するな。俺も翔一も無事だし、事件のことは偶然巡回していた生徒会の人から聞いた。これじゃ、説明しなくてもいいな」
 え? と霧野は間の抜けた声を出してしまう。
 藤村は鞄を適当な場所に置き、床に座り込んで言う。
「明日の放課後。生徒会室に集合。どうも生徒会や風紀委員だけじゃ、捜査も難航しそうだぜ」

 夜になると、藤村は霧野に気付かれないように部屋を出て、篠崎へと電話を掛ける。
 二、三回コール音が鳴ると、聞き覚えのある女の子らしい声が耳に届く。
『……ふぁい、もしもし?』
「悪い、篠崎。寝てる途中だったか?」
 彼女の眠たげな声を聞き、藤村は申し訳なさそうに謝罪をする。篠崎は上手く回らない頭を何とか回転し、自分も同居人に気付かれないように部屋を出る。
 それから、いつも通りのしっかりした中で、どこか頼りなさげな声で応対する。
『どうしたんですか? 藤村くんから電話なんて珍しいですね。普段はメールなのに』
「メールで済まそうかとも思ったんだけど、電話の方がいいかなって」
『?』
 藤村の言葉の意味が理解できない篠崎は首を傾げる。
 それに気付かない藤村は真剣な口調で、篠崎に会話を切り出す。今日聞いた事件についての。
「いいか、篠崎。今から説明することをしっかり聞いてくれ」

 夜の街をつまらなさそうに歩く折宮明日香。彼女の頭を巡っているのは、霧野七瀬のことだった。
 彼女が気になるとか、不快だ、という感想もあながち間違いではないが、それとは似ているが違う感覚が身体の中を駆けずり回っている。
 一言で表すなら、彼女は『不思議』だ。
(何で自分から面倒事に関わろうとするんだよ。私がアイツの立場なら、絶対に関わらないのに……チッ)
 折宮は心の中で舌打ちをする。
 心と同時に実際にも舌打ちをしていたようで、道を歩いていた男性がこちらをちらりと見た。
(……いけ好かねぇ。何なんだよ、アイツは……)
 折宮は心でそう呟き、

「……委員長が言った、『誰かとの繋がりを持て』って……あんな変な奴でもいーのかよ?」


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