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FRAME・GHOST

85竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/12(日) 18:54:44 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 折宮は再び壁に背中を預け、腕を組みながら説明を開始する。
 彼女の表情には言わずもがな真剣さが見て取れる。どうやら、電話の応対で何となく分かっていたことだが、相当深刻な問題のようだ。
 霧野がどんな事件なんだろう、と身構えていると、
「お前、私がいない間に転校したって言ったよな。ってことは、ここの地理にはあんま詳しくないだろ?」
 霧野は折宮の言葉に意表を疲れ、肩の力が抜けてしまう。
 本題にはまだ入らないようだ。それほどまでに自分は信頼されていないのか、と心配になるが、折宮の言っていることは合っているので一応軽く頷いた。
 すると、折宮は同じ声のトーンと口調で言葉を続ける。
「……じゃあお前、戦場原学園の近くにゲームセンターがあるのを知ってるか?」
 何度も言うが、霧野はゲームセンターで良い思い出はない。
 もしかしたら、その近場にあるゲームセンターが、丁度今頃藤村と神山が立ち寄っているゲームセンターであろうか、と霧野は顎に手を添え考える。折宮は『分からないんならいいんだが』と言っているが、藤村と神山が行ったところだろう、と根拠のない確信を持って『知ってる』と答える。
 それを聞いた折宮の目つきと声色が急に豹変した。
 さっきまでまだ穏やかな方だった目つきは射抜くほどに鋭く、声色は僅かに低い状態になり、言葉を紡いでゆく。
 折宮の言葉は一言だった。

「あそこには近づくな」

 霧野が『え?』と言う前に、折宮がすぐに言葉を続ける。
「……つい、一週間くらい前からか。そこのゲームセンター近辺で、戦場原学園の生徒が無差別に襲われているんだ」
 瞬間、霧野の表情が凍りつく。

「無差別に生徒が襲われてる?」
 同時刻、神山と同じく例のゲームセンターにいる藤村は神乃院の言葉に、思わず声を荒げてしまう。
 幸いゲームセンター内なので音が大きく、藤村の声はほとんど他の客の耳に届いていなかったようだが、神乃院が口の前に人差し指を立て、静かにするようにジェスチャーを送る。
 藤村は落ち着きを取り戻し、説明を続ける神乃院の言葉に集中する。
「学年、クラス、性別は……まあ来るのが大抵男子だから圧倒的に被害は男子が多いんだけど、学年とクラスにも何の共通点も見つからないし、個人同士でも共通点が見つからないの。一緒に来店した人でもない限りはね」
 まさに無差別だな、と神山は呟く。
 神乃院の説明を補足するように、今までしかめっ面で辺りに気を配っていた那月が口を開く。
「狙われてるのは戦場原学園の生徒が主だ。他の学校もやられてるらしいが……うちに比べれば被害はほとんどねぇ。他校を含めての無差別だ」
 言い終わると、那月は再び殺気を辺りに撒き散らす。そのお陰か、藤村達のいるところを中進とした半径五メートルくらいには誰も近寄ってこなかった。
 さすがは流生さんの弟、とも思うが、逆に彼女は大っぴらにして何も警戒しないと思う。
「被害が主にうちだから、犯人は戦場原学園に挑戦状を叩きつけてきたとみて間違いはないわ。何にしても、君達が被害に遭う前に私達と合流できて良かった」
 真田は明智に取ってもらった大きいぬいぐるみを抱えながら親権に言う。
 抱きかかえている可愛らしいぬいぐるみが真剣さを削いでいるが、そこは特にツッコまないでおこう。
 工藤は踵を返し、背中を藤村達に向ける。
「俺達はそろそろ戻るよ。近々ここら辺を戦場原学園の生徒は立ち入り禁止にするから、君らも今日は急いで帰った方がいい」
 あ、そうそう、と工藤が思い出したように声を出し、
「出来れば、明日の放課後。生徒会室においでよ。訳と事情を話して、霧野さんと篠崎さんも連れてね」
 そう言い残せば、工藤は那月と神乃院とともに、巡回に戻って行った。一方の真田と明智は次なる景品ゲットを狙っているようで、他のクレーンゲームを見回っている。
 工藤の言いつけを守ろうと、藤村と神山は早々にゲームセンターから外へ出る。
 
 巻き込まれたな、と藤村は上を仰いで呟くが、その呟きは空に溶けていった。


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