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FRAME・GHOST

84ゆり/恭弥/臨也/凛々蝶/キエラ/アル/久賀見虎斬/九条涙/波 ◆u7pJ1aUXto:2012/08/12(日) 16:59:43 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 霧野七瀬は一人で寮への帰り道を歩いていた。
 ゲーセンに行っても、ゲームセンスが壊滅的な自分は楽しめずにお金が消えていくだけなので、一人で先に寮に戻ることにしたのだ。本当は篠崎と一緒に帰れればなぁ、と思いC組の教室を覗くと、教室に残っていた生徒が『唯ちゃんならもう帰ったよー』と言ったので、今現在の霧野は一人ぼっちだ。
 男の子って本当にゲームとか好きだなー、などと頭の中で適当に思っている。確か前にも一人で帰っている状況があったような。藤村と神山がライトノベルの新刊を買いに行った時だ。厳密に言えばあの時は篠崎と一緒だったのだが、寮に戻っても一人だったので、結局のところ状況は同じだ。
 最近自分って置いて行かれてる? などと不審がる霧野だったが、ハッと彼女の頭に良いアイデア、もとい自分の重要さを気付かせる方法を思いついた。
(そーだ! 折角だから、今日は早く帰って藤村くんのために晩ご飯を作ってあげよう! 藤村くんにはお世話になりっぱなしだし、私からも何かお礼をしたいし。どうせなら、神山くんや篠崎さんも呼んでみようかな?)
 霧野が秘密のディナーパーティーの事を妄想していると反対側の通路に、

 壁に背中を預け、携帯電話で誰かと会話している折宮明日香が視界に入った。

 彼女はこちらには気付いておらず、電話の応対に集中しているようだ。何故かは分からないが初めて見た時から、『彼女とは友達になれそうな気がする』と思っていた霧野は、折宮のいる反対側の道路に移り、気付かれないように彼女に近づいていった。
 そんな霧野に気付かず、折宮は電話の応対を慣れた様子で行っている。
「……ああ、心配はいらない。私をスカウトしたのはアンタだろ? ちょっとは私を信用しろっての。必要な時には応援の要請をするからさ。ああ? 生徒会との連携? そんなもん必要ないさ。私だけでいける。じゃあな」
 折宮は携帯電話を折りたたみ、スカートのポケットの中にしまいこんだ。
 こんな時に面倒くさいこと起こしやがって、と苛立つ彼女だったが、風紀委員である以上厄介ごとに巻き込まれるのは仕方のない事だ。頭では分かっていても、身体が微妙に拒絶反応を起こす。その不快感で苛立ちが増幅するが、とりあえずは仕事に集中だ、と思考を切り替える。
 彼女が足元に置いておいた学生鞄を担ぐように持ち上げ、目的地に向かおうとしたところに、

「折宮さん!」
 唐突に後ろから掛けられた、聞き覚えの全くない女子の声。振り返るとそこにいたのは黒い髪をポニーテールにした同じ学校の制服を着た、霧野七瀬だった。

 折宮は彼女の事を毛ほども知らない。
 そもそも、彼女が転校してきたのは折宮が学校に登校していない期間で、今日だって一瞬視線が合った程度だ。折宮としては霧野の事を全然気にしていないし、『クラスメートにこんな子がいるの知ってる?』と聞かれて顔を出されても、恐らく首を傾げ、数秒程度で『知らない』と返すだろう。
 そんな事を知りもしない霧野は、笑顔で折宮に声を掛けていた。
 やはり、自分はこいつを知らない。だからこそ、折宮は言葉を紡ぐ。
「……アンタ誰だ」
「霧野七瀬。貴女と同じ一年D組だよ。貴女が来ないうちに転校してきたの! よろしくね」
 笑顔で霧野は答える。
 今まで接してきた事のないタイプだ、と折宮は溜息をつく。
 霧野は笑顔のまま、
「さっきは誰と電話してたの?」
「アンタには関係ないだろ」
「友達? ……にしては、結構深刻っぽかったよね。『生徒会との連携』だとか聞こえたし……風紀委員長さん?」

 霧野は時として、鋭い勘を発揮する事がある。
 それもごく稀にだが、篠崎が男であることも彼女が一番最初に気付いていた。先程の折宮の電話相手も彼女の言うとおり風紀委員長で、これまた彼女は直感で見抜いていた。

「何でお前は私が風紀委員だってことを……、まあいい。電話相手が委員長だろうと誰だろうと、お前が関わることじゃない。厄介な事件だしな」
「厄介ごと、なの?」
「ああ。関わりたくないだろ?」
 こう言えば相手も引くだろう、と思い折宮は彼女に告げる。
 だが、霧野は綺麗なほど見事に、折宮の予想を裏切った。
「じゃあ、話して! その事件、私にも関わらせてほしいの!」
「はぁ? 何で?」
「私、誰かの役に立ちたい! だから、その事件を私にも手伝わせて!」
 霧野は折宮の手を掴み、そう懇願しだす。
 自分のペースを乱されまくった折宮は、面倒そうな表情をして、
「あー、もう分かったよ! 分かったから手を離せ! あんま他言するなよ?」
 霧野は自ら風紀委員の任された厄介ごとに、
 藤村と神山は望まないまま厄介ごとに、

 巻き込まれていくことになった。


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