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FRAME・GHOST

81ゆり/恭弥/臨也/凛々蝶/キエラ/アル/久賀見虎斬/九条涙/波 ◆u7pJ1aUXto:2012/08/12(日) 13:52:15 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ACT.11「事件発生」

 一人の少女は、自分が通う学校である戦場原学園の門の前に立っていた。
 さすがに一時間目も丁度終わった時間なので、この辺りを通る生徒はいない。中には門の前を通り過ぎる人も何人かいるが、今日は平日だ。会社員は既に仕事場に行っているだろうし、主婦達も昼ごはんの買出しに行くには少々早いだろう。そのため、通るといっても片手の指だけで足りる程度だ。
 少女は学校の門の前で立ったまま、軽く息を吐いた。
 ―――うるさいのは嫌いだ。
 だからこそ彼女は、今までまともに学校にも行かなかった。行ったのは最初の一ヶ月程度。クラスメートの顔も名前も誰一人覚えていない。そもそも関わるつもりも無いから、彼女にとっては取るに足らないものだのだが。そんな今まで不登校だった彼女が学校に来たのは、勿論といえば勿論、事件が起きたからだ。
 彼女は今まで止まっていた足を前に動かし、自分が在籍するクラスの教室に歩いていった。
 一年D組に。

「ねぇ、藤村くん」
 霧野は唐突に藤村に声を掛けた。
 声を掛けられた藤村は、なにやら本を読んでいる。読んでいる物は『鷹の美剣(たかのみつるぎ)』。ここ最近色々なことがあったため、最新の十一巻(古賀塚の直筆サイン入り)をまだ読みきれてなかったのだ。
 藤村は顔を上げて、霧野の言葉に『何だよ』と返す。
「このクラスって席一つ空いてるよね? 病気の人とかいるの?」
 霧野が指差した席は、窓側の一番前の席。
 確かに今も空席で、転校生の霧野は未だにその席に誰かが座っているのを見たことが無い。急な病気で登校できなくなったのか、もしくは退学したのか。霧野は一人であれこれ考えていたが答えは出なかったらしい。知らないのだから、それが当たり前だが。
 すると、藤村の背後から一人の少年が近寄ってきた。
「あー、あの不登校娘な」
 声の人物は勿論、神山翔一だ。
 彼も片手に『ゴスロリメイド・みーたん』の八巻を持っている。彼は藤村が流生と戦ったりしている間に暇だったらしく、既に読み終わっていて、かれこれ五回は読んでいるらしい。
 神山の言葉に、霧野は首を傾げる。
「……不登校娘? 女子だったの?」
 霧野が知らないのも無理は無い。そもそも、一ヶ月ほどしか登校していなかったから、藤村と神山でも話したことはないし、顔もぼんやりとしか覚えていない。声に至っては全然知らない。
 神山は例の『不登校娘』の説明を始める。

「一ヶ月ほどしか登校してないから俺もよく分かんないんだけど……うちの学校の風紀委員。アレは厳正な入隊試験の結果、合格した者だけ入れるんだけど、不登校娘は試験ナシで入ったんだと。なんでも風紀委員長直々にスカウトしたらしくてな。試験結果の発表は三週間くらいかかるから、一ヶ月で入隊が決まったなんて異例中の異例だとよ」

 よく分からない、という割にはかなり詳しく説明をした。
 そこで霧野は『そこまで優秀なら、何で不登校になったんだろう?』という疑問を抱く。そこまで順調に進めていれば苦労も少ないだろうし、学校生活も楽しいと思う。あくまで霧野の主観だが、もし霧野が彼女の立場だったら、廊下をふんぞり返って歩いていると思う。
「……その子の名前は?」
「……あー、何だっけ?」
 霧野の言葉に藤村が言葉を詰まらせ、神山の方へと視線を向ける。
 神山はふふん、と得意げな顔をして名前を言おうとした瞬間、

 バン、と大きな音と共に教室の扉が勢いよく開け放たれた。
 扉を開けたのは女子だ。黒い短髪に、ずっと視線を合わせていたら射抜かれてしまいそうなほどの鋭い目つき。女子にしては背が高めで、恐らく一六〇後半はあるだろう。身体つきは華奢でスレンダーな体型の目つきだけが悪い美女だ。

 彼女を見た瞬間、神山は藤村と霧野にしか聞こえないくらい小さな声で呟く。
「……噂をすれば、だな。折宮明日香(おりみや あすか)。不登校娘のお出ましだ」
 休み時間なので、席は半分ほど空席になっている。自分が来ない間に席替えをしただろう、自分の席だった場所には別の生徒が座っている。折宮は扉の近くにいた女子生徒を睨みつけ、
「オイ、私の席は何処だ」
 荒々しい口調で問いかける。
 女子生徒は怯えたような反応を見せ、『窓側の一番前』と短く応えた。
 折宮は礼すらもせずに、自分の席へと歩いていき、頬杖をつきながら窓の外の景色に目をやっている。
「あれが、戦場原学園風紀委員所属。通称『風紀委員の異端児』、折宮明日香だ」
 藤村、霧野、神山の三人は彼女をしばらく見ていた。
 神山が藤村に『放課後ゲーセン行こうぜ』などと言っている間も、霧野は折宮から目を離さなかった。
 そして一瞬だけ―――、

 霧野七瀬と折宮明日香の視線が重なった。


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