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FRAME・GHOST

73竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/03(金) 15:12:09 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 勢いよく炎を下方へと噴射した藤村の身体は、反作用の原理によって宙に浮いたまま上へと上昇し続ける。
 炎を加減していなかったため、天井が迫っている事にも気付かずに、スピードを全く殺すことなく藤村は背中を天井へと打ち付けた。そのことによって、藤村の手から放たれていた炎は治まり、彼の身体はまっ逆さまに急降下していく。
 そんな彼の身体に冷たい鉄が絡みつく。しかし、絡みついた鉄は全く意味を成さずに、ちょっとしたクッションにもならず、藤村の身体は床へと叩きつけられた。
「……ぐぉ……?」
 激痛にごろごろ転がりながら身悶える藤村。だが、彼がもがくたび鎖は複雑に絡まっていく。
 そんな藤村の動きを止めるように、脳に直接劈(つんざ)くような声が響く。

『……う、動かないでくださいっ! 今から鎖解くのでっ!』

 藤村が鎖の伸びている先を目で追うと、桃音の小さく細い腕が鎖の先をがっしりと掴んでいた。
 どうやら、彼女が鎖を伸ばし藤村を引き寄せようとしたのだろうが、少女の弱い腕力では不可能だったらしい。横にいる狩矢は腹を押さえて、堪えるように笑っている。すごく腹が立つ。
 桃音は藤村に駆け寄り、複雑に絡んだ鎖を必死に解いていく。
『……ごめんなさい……。私にもっと腕力があれば……』
「あ……いや、いーよ。気にしなくても。助けてくれようとしてくれたんだし。少なくとも、あそこで爆笑を必死に堪えてる奴よりはマシだ」
 言いながら、藤村は忌々しい目で狩矢を睨みつける。
 狩矢は目に溜まった涙を指でこすると、一足遅くこちらへと歩み寄ってきた。何がそんなに面白かったのか。桃音の救出が空回りした事がそんなにツボだったのか。
「いやぁ……おべっ、おめで、とっ……くふふ……!」
「祝福する気が僅かにでもあるなら笑うな。そんなに面白い事俺もミルもしてねーぞ」
 狩矢が笑いを抑えるために、大きく深呼吸をして、引きつらせた表情をしながら言う。
 彼の視線は、藤村が炎を強引に放ったため真っ赤な爆炎と真っ黒な爆煙に包まれた、流生が立っている場所だ。

「あれさ、流生さん大丈夫かな?」
「あ」

 思わず、と言った調子で藤村の口から間の抜けた声が漏れる。
 藤村もここまでの微調整はしていまい。そもそもあの状況で調整を利かせられるものか、少なくとも藤村の頭脳にそんなスペックを求めてはいけない。
 三人が見つめていると、しばらくして炎と煙の中から聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。
「あー、危ない。ったく、無茶してくれんじゃん。政宗とかだったら死んでたぞ、これ? ……まあ、」
 女性の声は、一度言葉を区切る。
 それから、炎と煙を水で吹き飛ばして、言葉を告げた。

「私じゃなかったらマジで死亡レベルだぞ?」
 彼女は。
 那月流生という女性は、上からの攻撃の一切を防ぐように円盤状の水の盾を構えていた。どんな威力の炎でも、流生の水には勝てなかったのだ。

「……マジかよ……」
 藤村は驚愕と共に、落胆の声を漏らした。
 狩矢と桃音も同じように、目を大きく見開いている。
「今のは思い付きにしてはいい攻撃だったぞ。私もビックリした。その証拠に、ほら!」
 流生は水の盾を生み出していた左腕を藤村に見せた。
 先ほどまでコートの長い袖がついていた左腕には、袖など一切消えており、彼女の左腕には僅かな火傷の跡がついている。
「おめでとう。お前は曲がりなりにも私に傷をつけたってことだ」
 喜んで良いのだろうか。
 彼女が相当強いのは分かった。だが、これじゃ『倒す』にはならない。褒められることではあっても、藤村はどこか納得できずにいた。
「まあ、そんな落ち込むんじゃねーよ。政宗も最初はこんなんだったぜ? 誇ってもいいんだよ、お前は」
「流生さーん。結局のところ、こいつに足りないものって分かった?」
 狩矢の言葉に流生が思い出したように考え始める。
「……武器とかは不必要だな。幽鬼の場合は持ってたら邪魔になりそうだし。強いて言うなら、戦い方が滅茶苦茶だからなー」
 そう聞いた藤村は、頭を下げて床に手をついた。
 相手に願いをこうような、土下座よりももっと確固たる意志があるものだ。
 その光景を見た流生は急に慌てだし、その体勢をやめさせるように促すが、藤村は言葉を紡ぐ。

「……頼む! 俺を、鍛えてくれ……!」
「はァ?」


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