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FRAME・GHOST

68竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/03(日) 14:49:37 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 突如噴き出した水。その水は渦巻きだし、水の中心点からどこかとぼけた女の声が聞こえてきた。
 藤村はこの感覚に似たものを知っている。というか、最近となってかなり似た感覚を身体で覚えているのだ。
 そう、降霊の召喚だ。
 水が消えると、流生の後ろに彼女の降霊だと思われる人物が現れていた。淡い水色の着物を身に纏い、袖はサイズが合っていないのか指先も出ずに、だらんと途中から垂れている。髪は綺麗な紫色の長髪で、その女性を一言であらわすなら「美女」が最適であろう。しかし、彼女の身体は水で出来ているのか、透けていた。
 彼女が流生の降霊。名前は先程、水神と呼んでいた。
 藤村も対抗するべく右手の包帯を何も言わずに解いた。
 すると、焔華が召喚され、彼女は目つきを鋭くして寝ぼけた表情をしているだらしない水神を睨みつける。
『水神。……おい水神。……おい、水神!!』
『ひ、ひゃい!?』
 水神は甲高い声を上げて、ビシッと姿勢を正した。
 焔華の口調はまるで、失敗ばかりでダメな後輩を叱る先輩のようなものだった。降霊の中でも上下関係は存在するのだろうか。どっちが先に霊になったとか。
 眉間にしわを寄せ、明らかに怒っている焔華に水神はのんびりした口調で声を掛けた。
『あ、焔のじゃないかー。お久しぶりー』
『お前は相変わらずだな、水神。というか、先輩をつけろお前は!』
 焔華は怒っている。
 何というか降霊にも色んな性格の奴がいるんだな、と藤村は思う。
 風椿もそれなりにテンションは高かったが、水神は何というか面倒くさい。流生と性格が真逆だ。風椿の時はまだ工藤と性格が似ていたからここまで不自然に思う事はなかったのだろう。
『やだなー、焔のー。あんま細かい事気にすると老けちゃうぞ?』
 ぶちっと何かが切れた音がした。
 その音は明らかに焔華のこめかみからだ。
『……私達は霊だ……老けても問題ないだろう……!』
 怒っている、確実に怒っている。
 焔華の言葉が怒りで震えている。確かに、こんな後輩はかなり腹が立つ。
『そーじゃなくて、せーしん的にだよぅー。おばば焔のー』
『……テメェ』
 焔華の口から初めて『テメェ』という二人称を聞いた。
 相当怒っているな。藤村は背後に冷たい殺気を感じている。だが、その殺気は自分に向けられたものではないだろう。
『そーいや、この前風のが来てたよ』
『風椿が?』
 水神は何の脈絡もなく、話題を変えた。どうせさっきの会話に飽きたのだろう。
 焔華も話題が変えれば殺気を抑え始めた。
『うん。何でも焔の降霊を使う面白い奴がいたんだってー。もしかして、と思ったらやっぱり焔のだったか』
『……だったらどうするつもりだ?』
 うーん、と水神は考え出す。
 しばらく考えた後ににかっと笑って、藤村と焔華の両方という意味で、ビシッと人差し指で指す。
『倒すよ。二人とも』
『やれるものなら、ぜひともやってもらおうか』
 降霊の間だけで話が進み、双方の降霊がそれぞれの宿主の身体に入り込む。
 瞳を青くした流生が首を鳴らしながら、藤村に問いかける。
「さーて、と。何か降霊の間だけで進んじゃったけど……藤村。準備はいいかよ?」
「ああ。とっとと始めようぜ!」
 キッと、赤い瞳の藤村が流生を睨みつける。


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