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FRAME・GHOST

67竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/05/13(日) 11:53:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 地下への階段を下りていくとそこにはだだっ広い何もない白い空間が広がっていた。明らかに店の地下だけで収まっていない気がするのだが。
 藤村はこのスケールに圧倒されていると、桃音の言葉が脳に届いた。
『ここは流生さんが用意した簡易修行スペース「ルキルキ・バトルサーキット(仮)」です。壁や天井にはかなり強度が高い素材を使用しているので、そう簡単に壊れる事はありませんよ』
 補足的な説明だった。
 藤村としてもそっちの方が分かりやすいので助かるが、さっきのふざけた名前はどうにかならないものか。しかもサーキットじゃないし。
 流生は首を鳴らして、藤村と向かい合うように、十数メートル離れたところに立つ。
「んじゃ、始めようぜ藤村幽鬼。アンタの力を私に見せてくれ」
「え!? アンタと戦うのかよ!」
 藤村はぎょっとする。
 『見せてくれ』なんて言うから、てっきり誰かとの戦いを傍観するだけだと思っていた。どうやら、彼女は理論派ではなく、実践派の人間なんだろう。
 だが、藤村にはどうしても彼女と戦えない理由が二つあった。
 一つは女である事。
 よっぽどの事がない限り、藤村は女に手を出したりしない、差別的な言い方だが、藤村は女とだけは戦うのが嫌なのだ(例外で篠崎とも戦わないらしい)。
 二つ目は相手が丸腰であること。
 立ち振る舞いは隙がないのだが、どうしても戦わないといけないと言うのならせめて武器は構えていてほしい。だが、今の相手は武器を構えるどころか、むしろこっちから攻撃を仕掛けるのを待ってるような気がする。
「……やりにくいんだが」
「何だお前は。紳士的な事言って私を惚れさせたいのか」
「違うっての。武器も何も持ってない丸腰の女の人と戦えってのが俺のポリシー的にアウトなの」
 流生は溜息をつく。
 流生は手で髪をくしゃくしゃとかきながら、
「面倒だなぁ。私は武器を持たずに戦うってのに。それでも武器持たなきゃいけねーの?」
「無理にとは言わん。が、それならば構えの一つでも取ってくれ。じゃないとやりにくくてしょうがない」
 流生は再び溜息をついた。
 今度は呆れたような、駄々をこねる子供を見ているような溜息だった。
「……知らねーぞ、後悔しても」
 その言葉で流生の雰囲気が変わった。
 流生はズボンに手を当てて、藤村に質問を投げかける。
「お前、戦場原学園の工藤政宗とは戦ったかい?」
「……ああ、一度だけ。ボロ負けしたけどな」
 じゃあダメだな、と流生は呟く。
 藤村はそんな小さな呟きも聞き逃さなかった。
「じゃあダメだよ。お前は私に勝つことが出来ない。だって、私はアイツより強いから」
 流生はズボンを右足の付け根まで片方だけ下ろした。かなりきわどい場所だが、そこには藤村が見逃せないものが刻まれていた。
 青色の降霊紋。
 言葉にしなくても分かる。降霊紋を見て、彼女が『武器を持たない理由』と『余裕を見せる理由』が一気に分かった。
 降霊術者であり、工藤政宗より強い。
 藤村からしたら。工藤政宗に手も足も出なかった藤村からすれば、あの工藤政宗より強い彼女はどれほどの化け物に見えてしまうのだろう。
 流生は青い降霊紋を見せつけながら、口の端に笑みを浮かべ言った。
「出て来い。時間だぜ、水神(みなかみ)」
『……んもー、少し時間をずらそーとは思わないの? このバカ宿主。今はみーちゃんのお昼寝の時間だとゆーのに』
 瞬間、とぼけた声の後に流生の周りに水が渦巻きだした。


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