したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

☆男装少女 6人目のメンバー☆

1いちご:2011/10/25(火) 18:47:37 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
どうも、いちごです!
これで2作目になります、と言っても
まだ1作目は終わっていませんが(^_^;)
本当は、受験生なのでこんなことをしている場合じゃありません・・
なかなか書けないと思いますが、優しい目で見てください。

164いちご:2012/06/16(土) 20:34:11 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「どうせだから、ごはん食べながら話そうよ!」


「あ、うん...。」


彩乃はコンクリートの地面にすわり、弁当を広げた。


「奥村さんのお弁当、すごいね。」


弁当を見て、思ったことをそのまま口に出すと彩乃は恥ずかしそうに笑う。


「これ、お兄ちゃんが作ってるの。」


「え?」


「お父さんとお母さん、海外で仕事してて家にいないから。

二人暮らしみたいなものだよ。」


「そ、そうなんだ...なんか、意外。

奥村さんのお兄さんが料理できるなんて思ってなかった。」


「そうかな?...あ、そういえば森山先輩、

あたしに聞きたいことあるんでしょ?」


にっこり、

感情の読めない笑みを向けられ、ことりは戸惑う。

165いちご:2012/06/16(土) 20:36:07 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「お、奥村さん、今日の新聞に載ってたことって本当なの?

その、お兄ちゃんとホテル行ったって...。」


「先輩、昨日陽さんと会ってないの?」


「う、うん。」


自分が陽の代わりに男装してるなんて口が裂けても言えない為に、

適当に会話を合わせることにした。

すると彩乃は少し考える素振りを見せてから口を開いた。


「本当だよ。」

166いちご:2012/06/16(土) 21:13:49 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりは困惑した。

昨日は自分が陽の代わりに男装して生活していた。

なのにどうして彩乃が 陽とホテルに行った と言うのかが分からない。


「...そ、なんだ。」


嘘でしょ?とは聞けなかった。

どこか思いつめるような表情で、

発言を否定させないような雰囲気に思わず躊躇う。


「まさか、撮られてたなんて思ってなかった....。」


私、陽君のファンに殺されちゃうかも。とおどけて話す彼女は

嘘をついているようには見えない。

まさか、意識不明だった兄が目を覚まし、彩乃と一緒にいたのか?

否、それはない。

だって、自分が見舞いに行ったときはピクリとも動かず、眠っていた。

167いちご:2012/06/16(土) 21:20:02 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「まあ、そういうことなの。

...私、陽君が好きだから...ごめんなさい、森山先輩。」


先輩のお兄さん取っちゃうような真似して、ゴメン。

素直に謝る彼女に、ことりは慌てて口を開いた。


「あ、謝らなくていいよ!

お兄ちゃんが誰と居たかなんて、私と関係ないし...

それに、奥村さんなら...いいと、思う。」


何適当なことを口走ってるんだろう、と自分でも後悔した。

その言葉を聞いた彩乃は嬉しそうに微笑み、 ありがとう と言う。

168いちご:2012/06/16(土) 21:55:22 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


♪〜♪〜、


ふいに、陽の仕事用の携帯に着信が鳴った。

それを取り出し、画面を見て焦る。

奥村 楓 からだ。

彩乃がいる前で電話をでる事もできず、

あたふたしていると不思議そうな顔をされた。


「電話、出ないの?」


「え、ああ、うん!ちょ、ちょっと電話でてくるね。」


ことりは立ち上がると、彩乃から離れる。

なるべく人のいないところに移動すると電話に出た。

男装しているときのように、少し声音を低くして話す。

169Mako♪:2012/06/16(土) 21:58:08 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
のわぁぁぁぁ!?
二人(?)の筈の陽くんに3人目が!?
こ、これは、一体……!?
いちごさん、頑張ってね!

170もこ:2012/06/17(日) 09:30:42 HOST:pc10131.amigo.ne.jp
ことり「嘘でしょ?」って聞けばよかったのにぃ〜!!

171いちご:2012/06/17(日) 14:33:34 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
Mako♪s>
感想ありがとうございます!!
最近はけっこう更新してます(*^^*)
(期末テストあるのに…)
でも頑張って書きますww

もこs>
そうですね(*´∀`)
でも彩乃©は悪役じゃないんで
多めに見てあげてくださいww

172いちご:2012/06/17(日) 14:52:37 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「もしもし。」


『今日、学校に居ないんだね。』


「え、あ、うん...暫く、学校休むことになったから。」


昨日木村に言われたことを思いだし、

そう説明すると不満そうな声が聞こえた。


『なんで?仕事?今日、わざわざ陽くんの教室行ったのに

居なかったから無駄足だったんだけど。』


刺々しい言い方にことりは思わず苦笑してしまった。

それに気づかれないように、 ゴメン と謝る。


『佐野も心配してた。』


郁美の名前を出され、申し訳ない気持ちになったが仕方がない。

今、陽はいないのだ。

173いちご:2012/06/17(日) 14:55:47 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「...うん、仕事が忙しくて...で、何か用?」


『新曲の事なんだけど、僕、陽くんと同じパート嫌だから

今日変えてもらう予定。それだけ言っとこうと思って。』


はっきりと言われたことに、ことりは驚いた。

ズキン、と心が痛む。

真っ向から拒絶され、少なからず傷ついた。


「...なんで?」


『何度も言わせる気?僕、陽くん嫌いだから。』


「そ...っか。」


自分が嫌われてしまった理由は明白だった為に、

何も言い返す事はできない。

陽がいない間に、だんだんと状況が悪化しているような気がした。

ことりは泣きたくなった。

174いちご:2012/06/17(日) 15:07:39 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


『じゃ、そういうことだからよろしくね』


プツリと切られた携帯。

ことりはそれを見つめ、泣きそうになった。


(私...どうすればいいんだろう。)


とりあえず待っている彩乃の元に向かうと、

もういいの?と聞かれる。

頷けば、 だいじょうぶ? と顔を覗き込まれた。


「だ、大丈夫。」


「今の森山先輩、昨日のお兄ちゃんみたいな顔してる。」


「え?」


「相手に言いたいことあるなら、はっきり言えば?

ため込んでても疲れるだけだよ。」


「....そうだよね。」

175いちご:2012/06/17(日) 16:07:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


刹那、予鈴が鳴った。

彩乃はその音を聞き、鞄を持って立ち上がる。


「あ、じゃあ私はもう行くね!

ねえ、森山先輩が良かったらこれからも一緒にご飯食べない?」


「うん。」


特に一緒に昼食をとる友達もいない為に頷けば、彩乃は嬉しそうに笑った。


「じゃあ、また明日ね!」


手をひらひらと振られて、彼女は去っていく。

一人残されたことりは、弁当箱を片づけると自分も教室に戻っていった。

176いちご:2012/06/17(日) 16:09:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


教室に戻ると、お決まりのように

女子生徒達が自分のまわりに集まってくる。


「森山さん、どうだった?」


「...人違いだって言ってた。」


ことりは嘘をついた。

彩乃を傷つけたくはなかったからだ。


「本当に?」


「うん、昨日は仕事してたって...。」


「じゃあ、あの記事はなんなのよ?」


「合成か何かだと思う...たぶん。」


曖昧に答えると、女子生徒はことりをギロリとにらんだ。

177いちご:2012/06/17(日) 20:35:10 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「ま、今回は陽君に免じてそういうことにしておいてあげるわよ。」


納得がいかない様子だったが、女子生徒は身を引いた。

そのことにほっと息をつく。

今回は引いてくれたが、次がどうなるかわからない。

どうして彩乃が昨日、陽と一緒にいたと発言したのか、

できれば真相を調べようと考える。

ことりは、そのまま自分の席に戻ると、午後の授業の準備をしだした。

178いちご:2012/06/17(日) 20:41:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


キーンコーンカーンコーン、


予鈴の音で、ハッと頭を上げた。

どうやら、自分はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。

無理もなかった。昨日は一睡もしていない。

ふと時計を見れば、授業はすでに終わっていて

下校を始める生徒達がいる。


「!」


ことりは慌てて教科書を片づけると鞄を持って教室を出た。


(ダンスレッスン行かなきゃ!)


どっとくる疲れを無視して、ことりは急いだ。

179いちご:2012/06/17(日) 20:53:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりが学校を出ると、見覚えのある車が校舎前で止まっている。


「ことりちゃん!」


「あ...木村さん。」


マネージャーの木村が迎えに来てくれたのだ。


「斉藤、メイクを頼む。」


「ええ。」

ことりが後部座席に乗り込むと、隣に座っていた斉藤は

メイクポーチを取り出し、ことりに化粧を施していく。

黙ってされるがままになっていると、木村は口を開いた。


「ことりちゃん、ダンスの事なんだけど...

一から覚えるのは大変なんだ。並大抵の努力じゃどうにもならない。」


「...。」


ことり自身、分かっているつもりだ。

こくん、と頷くと木村は真剣な表情で言った。


「頼むよ、森山 陽 。」


丁度メイクが仕上がる。

そして胸にサラシを巻きつけると、着替えにくいが車の中で着替え始めた。

180いちご:2012/06/17(日) 21:02:32 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


暫く車で走り、ダンスレッスン場についた。

時間ギリギリだったらしく、ことりは少し慌てて会場に入る。


「ことりちゃん、頑張ってね!俺は仕事あるからもう行くけど

何かあったら連絡して!」


「はい!」


できるだけ大きな声で返事をすると、木村は笑顔を向けてから

車を走らせた。

181:2012/06/18(月) 19:40:23 HOST:zaq7719df3a.zaq.ne.jp
いちご>>全然ここに顔出していませんでした(-_-;)

しばらく小説読まれへんかもしれんわ…。

読むのはたぶん夏休みぐらい??

てか、夏休みも予定詰まってきてるからなるべく早く読みます<(_ _)>

182いちご:2012/07/07(土) 09:44:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<燐

更新遅れてすみません(;´Д`)

ホンットすみません…

期末がありましてね…(←言い訳

読むのはゆっくりでいいよ(^^)

183いちご:2012/07/07(土) 09:59:35 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


キィ、


遠慮がちに押し扉を開けると、

中には郁美以外のメンバーがいる。


「こ、こんにちは...。」


ことりが挨拶すれば、南、柚希、楓の視線がこちらに向いた。


「...来るのが遅い。」


柚希は静かにそう言った。

時計を見れば、まだ5分前だ。

どうして遅いと言われたのかわからないことりは首をかしげたが、

喧嘩にはなりたくないため、ゴメンと謝る。

184蹴球:2012/07/08(日) 19:45:25 HOST:i219-167-175-178.s02.a018.ap.plala.or.jp

初めて見てみました。
楓 コワイ

185蹴球:2012/07/08(日) 19:45:39 HOST:i219-167-175-178.s02.a018.ap.plala.or.jp

初めて見てみました。
楓 コワイ

186もこ:2012/07/08(日) 22:35:35 HOST:proxy20008.docomo.ne.jp
待ってました!!

187いちご:2012/07/13(金) 20:54:22 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<蹴球s
そうですね(-_-;)
私もこういうキャラ苦手です←
隣の席の人をもとに楓をつくりましたww

<もこs
わー!!( ;´Д`)
全然更新してなくてすみませんでした!!
もう部活とか勉強が忙しく過ぎて…(←言い訳
書いておきますね!

188いちご:2012/07/13(金) 20:58:55 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「...郁美は?」


「外せない用事があるから、遅れてくるらしいぜ。」


南の答えに、そうなんだ、と少し残念そうな表情を見せた。


「じゃあ、今から練習を始めるわよ〜。」


パンパン、と手を二回たたいてからレッスン場に

入ってきたのは女性だった。


「「宜しくお願いします」」


ことり以外の声が重なる。

女性は、ことりに視線を向けた。

それに気づき、慌てて頭を下げる。


「よろしくお願いします...。」


「じゃあ、最初はパートごとに分かれて練習しましょう。」


「すいません、そのことなんですけど。」


楓が一歩前に出て、発言した。

189いちご:2012/07/13(金) 20:59:50 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「何?奥村。」


「パート、変えてくれませんか。」


ズキン、

ことりの胸が痛んだ。


「駄目だ。」


しかし、それをキッパリと女性は断った。


「どうしてですか、七瀬さん。」


どうやら、ダンスを教えてくれる女性の名前は七瀬と言うらしい。

真剣な表情で七瀬を見る楓に、彼女は呆れたように言う。

190いちご:2012/07/13(金) 21:02:08 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「このパートは、奥村と森山にしかできないからよ。」


「...たしかに。俺たちがこのパートをやるとなると、身長的に無理だな〜。」


南が書類を見ながら呟いた。

メンバーの中で身長が低めの陽と楓しかできないダンスだから、

二人を選んだと七瀬は言う。


「っ...分かりました。」


楓はあきらめたようにそういうと、嫌そうな顔でことりを見た。


「...この後、開いてる?」


「う、うん...。」


「僕の家で練習するよ。」


「わかった。」

191いちご:2012/07/13(金) 21:30:01 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「じゃあ、今から一度だけ通して踊るから

それを目で見て、しっかり覚えて。」


「!?」


ことりは目を見開いた。

あまりにアバウトな練習法に驚く。


「まだ佐野が来てないから、奥村と森山のパートからするわね。」


ちゃんと見ておきなさいよ、と七瀬は言う。

頷くのを確認すると、七瀬は踊りだした。

ことりは思わず息を飲んだ。

あまりの高度な、キレのあるダンスに目を奪われる。


(じ、自分にできるわけないよ...)


ダンスを初めてまだ1日しかしていない。

基本的な動きをやっと身につけたばかりのことりにとって、難しすぎた。

192いちご:2012/07/14(土) 13:14:23 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「ここまでよ。」


「七瀬さん、ここのステップから次に動くときって

こうであってますか?」


「うん、そう。」


ことりは隣で、一度見ただけで

大体踊れている楓を見て驚愕した。


「奥村、全然なってない。」


それなのに全然駄目だと言われている。

ことりは手足が震えた。


「次、森山。やってみなさい、

アンタこういうダンス得意でしょ?」


勝手に得意にされても困る。


(ど、どうしよう...。)


出来ない。できるわけない。

この場から逃げ出したくなった。

193いちご:2012/07/14(土) 14:00:15 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「森山?」


七瀬は不思議そうな表情で自分を見る。


「っ、」


どうしよう、頭が真っ白だ。

今七瀬が踊っていたダンスを忘れてしまう。


ことりは、意を決して足を踏み出した。


昨日覚えたばかりのステップを刻む。

その光景に七瀬だけじゃなくほかのメンバーも目を見開いた。


「森山、何やってるの?」


「...スイマセン、おぼえられませんでした。」


素直にそう言って頭を下げれば、七瀬は更に驚いた。

いつもなら一度で大体を覚えてしまうのに、今日は違う。


「調子が悪いようね...もう一度書類に目を通して、

できるかぎりダンスを把握しなさい。」


「ハイ…」

194いちご:2012/07/15(日) 21:12:42 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「ハァ…」


休憩時間、ことりはため息をついた。

ダンスが難しすぎる。ことり以外のメンバーは確実に上達していく中、

一人だけ置いて行かれていた。

そんなことりを見かねた楓が、ため息交じりで近寄ってくる。


「陽君、真面目にやってる?」


ことりは汗だくの首をタオルで拭きながら、

楓を見上げた。

195いちご:2012/07/15(日) 21:15:07 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ドキ、


「うん...ごめん。」


楓は、汗で濡れている髪と

暑さで頬が赤くなっていることりを見て、心臓が高鳴った。

動揺を隠せない楓は、ばっと視線を逸らした。


「楓?」


何処か様子の可笑しい楓を心配し、

大丈夫?と彼に触れようとした瞬間、バシ、と手を払われる。


「あ、」


楓も無意識だったらしい。


「ご、ゴメン。」


「僕こそ...。」


彼はことりを見て、小さく謝った。

196いちご:2012/07/15(日) 21:23:39 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



「遅れてすいません。」


刹那、郁美が姿を現した。


「郁美、お前おせーって。」


お前がいないと全く練習になんねえ、と南は言う。


「しょうがないだろ。これでも急いできた。」


「佐野も来たことだし、練習を再開するわよ。」


再び、練習が始まる。

ことりは少しふらふらしたが、気にせず立ち上がり

最初の立ち位置へと移動する。

197いちご:2012/07/15(日) 21:25:49 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「陽…お前大丈夫か?」


「え?」


そんなことりを見た郁美が気づき、彼女に近寄る。


「顔色悪いぞ。」


「だ、大丈夫だよ。」


「無理、するなよ。」


心配そうな表情を見せる郁美にドキドキしつつ、

ことりは平常を保ち笑顔を見せた。


それからもダンスレッスンは続いたが、ことりだけ上達していない。

無理もなかった。体がついていかないのだ。

一人泣きそうになり、瞳を潤ませる。

198いちご:2012/07/18(水) 17:42:06 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「森山。」


七瀬が低い声音で彼の名を呼んだ。


「今日は帰りなさい。」


「え、」


ことりは驚いて顔をあげた。

どうして、帰れと言われなければいけないんだろう。

自分は何か間違ったことをしただろうか?


「調子が悪いのに、無理にレッスンしても意味ないでしょ。

今日の森山はダンスのキレが悪すぎよ。

今日は帰って。調子が戻ったら自主練しなさい。」


「…ハイ。」


ことりは小さく返事をした。

どうやら、いつものようなダンスではない為に調子が

悪いのだと勘違いされてしまったらしい。

メンバーも、陽の調子が悪いということに気づいていたが、

あえて何も言わなかった。

ふらふらとした足取りで自分の荷物をまとめ、肩に担ぐ。

199いちご:2012/07/18(水) 17:54:15 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp




「...奥村ー。」


そんなことりを見かねてか、

七瀬は練習している楓に声をかけた。


「はい。」


「送っていってやりなさい。」


「え…」


なんで僕が、と声を濁らせたが、

七瀬はもう一度力強く同じことを言った。


「奥村も、今日はそのまま帰りなさい。

同じパートの森山がいないなら練習にならないでしょ。」


たしかに、七瀬が言うとおりだ。

楓は、ハァ、とため息をついてから、荷物をまとめてことりの後を追う。


「行くよ。」


「ご、ゴメン…。」


「別に。…お疲れ様でしたー。」


「お、お疲れ様でした!」


楓につられて、ことりも挨拶をする。

メンバーが茫然とこちらを見ている中、二人は練習場を後にした。

200いちご:2012/07/18(水) 18:01:08 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜.:。£+゜仲間゜£+゜.:。



「陽君。」


楓の視線が突き刺さる。ことりは焦った。

自分のせいで、たったの二日間しかない新曲のレッスンを最後まで

受けることができなかったのだ。

ことりは戸惑った表情で楓を見る。


「...本当に体調悪いの?」


「ぜ、全然平気!大丈夫!」


笑顔を張り付けて彼を見れば、「なら、いいけど」 と言う。

201いちご:2012/07/18(水) 18:03:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりの家の方向とは、別の方へ向けて歩き出す彼をみて

不思議に思った。どこかに行くのだろうか。


「ねえ、楓」


「何。」


「どこいくの?」


「僕の家に決まってるだろ。」


「え?」


「練習」


体調悪くないなら、僕の家で練習する。と言う。

本来ならダンスレッスン後に練習する予定だったのだが、

半強制的に帰宅命令が出されてしまった為にしょうがない。

202いちご:2012/07/20(金) 21:18:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「楓の家に行ってもいいの?」


「仕方ないでしょ。場所がないんだから」


ことりは息を飲んだ。

男の子の家には行ったことがない。

いくらダンスレッスンのためと言えど、

緊張しないわけがなかった。

203いちご:2012/07/20(金) 21:20:16 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



―――

―――――…



「ここだよ」


「でっか...。」


目の前にあるのは、大きな屋敷だった。

自分の家の3倍はありそうな楓の家に、言葉が出ない。


「何突っ立ってるの?」


「あ、今いく」


声をかけられて、慌てて彼の後につづいた。

204いちご:2012/07/20(金) 21:21:56 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



お邪魔します、と告げて中に入る。


「お兄ちゃんお帰りー」


「ただいま」


妹の彩乃の声が聞こえて、思わず肩をビクつかせた。


「あれ?お客さん?」


彩乃は足音がもう一つ聞こえる事に気づき、

リビングから顔を覗かせた。


「っえ!?な、なんで森山陽がっ...」


「新曲の練習。彩乃、邪魔しないでよ」


「う、うん」


ほら、さっさと行くよ。と言い、楓はことりを案内する。

彩乃の前を通り過ぎる時に控えめに頭を下げておいた。

205いちご:2012/07/21(土) 12:07:31 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



とある部屋の前で立ち止る。

楓はそこに入る。ことりも続いて入り、中を見て目を見開いた。


「うわあ...」


「ここ、ダンスレッスン用の部屋」


目の前にとても大きな鏡があり、

レッスン場並みの広さのそこに驚きを隠せない。

楓は鞄からレッスン用のCDを取り出すと、

近くにある大きな機材にセットし始めた。


「陽君、なんで急にダンス下手になったの?」


ズバリとそう聞かれて、戸惑う。

自分は陽ではない、そう言ってしまえば楽なのにそれはできない。

なんて言おうか悩んでいれば、楓は大きくため息をついた。


「ま、どうでもいいけど。僕と同じパートになったからには

ちゃんと完璧にしてよね」


「...うん」


ピ、と再生ボタンを押すと音楽が流れ始めた。

206いちご:2012/07/21(土) 12:17:05 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりは楓の隣に立ち、始まるのを待つ。

足元がふらふらするが、休んでいる暇はない。

眠気と怠さと疲労が一気にことりに襲い掛かる。


「っ、」


唇を噛みしめて、なんとか堪えた。


「笑顔」


隣の楓に言われて、慌てて笑顔を張り付けた。

無理やり張り付けたぎこちないそれに、楓は無言でことりを見る。

207いちご:2012/07/21(土) 12:29:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「や、る、気、あ、ん、の?」


むぎゅう、とことりの両頬を引っ張る。


「いひゃい.…」


「いい加減にしてよね。

足手まとい、役立たず。時間は限られてんだよ、

その中で完璧にしなきゃいけないのに」


楓は本気なんだ。自分の仕事に誇りを持っている。

だから、嫌いな自分とでも文句言わずに練習している。

ことりは、頬の痛みに涙目になりながらも、もう一度決意を決めた。


(完璧に、ダンスが踊れるようにしよう)


彼女の目つきを見て、楓は満足したのか解放する。

208いちご:2012/07/21(土) 12:33:27 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp






「―――陽君は、僕の憧れなんだから」


「え?」



ぽつりとつぶやかれた言葉は、

ことりに届くことはなかった。

209いちご:2012/07/27(金) 19:20:13 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



それから2時間、心を入れ替えたからか、

ことりは急激に成長していた。

なんとか楓のダンスについていけるようにまでなる。

曲が終わった瞬間、ことりはその場に座り込んだ。



「はぁー、はぁー、」


「陽君、このくらいで疲れてんの?」



いつもなら、疲れていても休憩時間も

一人で練習しているくらい努力しているのに。


「――…陽君?」



彼女の頬が赤く火照っていることに気づく。

210いちご:2012/07/27(金) 19:28:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



「よ、陽くん…」


何処か焦点があわない瞳をしていた。

楓は彼女の視線に合わせてしゃがみこみ、額に手を触れた。


「――ッ熱」


ことりは熱を出していた。

昨日からずっと無理をしていたせいだろう。


「…家まで送る」


「立てる?」と楓はことりの腕を掴んだ。

彼女の腕の細さに驚き、目を見開く。

こんなに陽は筋肉が無かっただろうか。


「…ッ!?」


ことりは限界だったのか、ガクッ と、その場に倒れ込んだ。

211いちご:2012/07/28(土) 13:32:38 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


苦しそうな呼吸を繰り返している。


これにはさすがにヤバイと感じた楓が、慌てる。


とりあえず、ここから一番近いリビングのソファーに寝かそうと思い


ことりの体を横抱きにして持ち上げた。


男を横抱きにするなんて、と内心思ったが文句は言ってられない。


持ち上げた瞬間、想像していたよりもずっと軽い彼の体に


楓は目を見開いた。

212いちご:2012/07/29(日) 11:56:52 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「彩乃!」


「どうしたのお兄ちゃんって、陽君!?」


リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て

彩乃は声をあげた。


「熱があるみたいなんだけど」


楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。

彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。

213いちご:2012/08/03(金) 12:41:26 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「…お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!

汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」


「う、うん」


「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」


テキパキと動いている彩乃を見て、

楓はさすがだと思った。

リビングを出て行った彩乃を確認してから、

近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板