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花と庭園と、妖怪と、

9 ◆uXwG1DBdXY:2011/09/27(火) 21:31:22 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp


 『  第三夜 / あめいろのおんなのひと / Side*守  』


朝はさんさんと晴れていたはずなのに現在は雨、変わりやすい天気には毎回苛立ちを食らう。
眉間にしわを寄せながら大きく溜息を吐き、ふと窓から外を見る。

今日は副会長、会長の秋原姉弟がお休みのおかげで生徒会が休み。つまりは探索も休みということだから本屋にでも寄ろうかと思っていたがこの有様だ。
大人しく家にいろ、ということだろうか。会長の呪いでないと良いんだけど。今頃家で風邪に魘(うな)されている事だろう、暇だし置き傘はある、可哀想だからお見舞いにでも行ってやろう。


「消化にいいものは…林檎やヨーグルトですかね」


×

林檎やヨーグルトなどが入ったビニール袋を片手に、小さめの傘を片手に。
雨は次第に強くなり、真っ直ぐ帰ればよかっただろうかと思ってしまうが今更帰るのも面倒くさい。


「…ん?」


傘を持っておらず大急ぎで帰る人や、傘を差している人たちの隅に一人の女性を見つけた。傘も差さずに道の真ん中でボーっと突っ立っている。
できれば面倒ごとには関わりたくないし、雨はあまり好きじゃない。できれば早く会長の家に行きたい。

が、気がつけばその女性にゆっくりと近づき、話しかけていた


「あの、風邪引きますよ」
「…ああ、ありがとう。でもいいの、雨は好きだから」


女性は少し不思議そうな表情を浮かべたが直ぐに優しく微笑んでそっと手を伸ばす。
手の平には雨が降り注ぎ、少しだけ水が溜まる。

雨がすき、とは随分物好きだ。それに幾ら雨がすきとはいえ体を壊してしまうだろう、それともそんなことが気にならなくなるほど雨が好きなんだろうか。理解に苦しむ。

「貴方は雨は嫌い?」
「ええ、植物には必要でしょうけれど濡れますし、かなり面倒くさいです」

女性の問いかけにこくりと頷く。
すると女性は少し寂しそうに微笑んでそう、と小さく返す。なぜだろうと疑問に思ったが自分が好きなものを嫌いといわれればいい気分はしないだろうと気がつき訂正しようとするが女性は僕のいいたいことが解っているように僕の口元に人差し指を当てて気にしないでというように優しく微笑んだ。

「私ね、雨女なの。昔からお出かけするときは殆ど雨でね」

彼女の声はとても澄んでいて聞いていて心地が良い。ゆったりとした落ち着いた口調も大人びていて、何時も回りに子供っぽい面子しか居ないからだろうか、とても新鮮に感じた。
このままずっと聞いていたいと思ってしまうが、残念ながら僕には用事がある。子供っぽくて自分勝手な生徒会会長と生徒会副会長のお見舞いだ。


「すみません、僕、用事があるので…お話、もう少し聞いていたかったんですけど」

少し寂しく思いながら小さく微笑んでそう告げると女性は驚いたような表情を浮かべた。

「…私の話、好き?」
「ええ、声がとても綺麗なので」
「…そう、ありがとう。私、雨とか好きだし、色々と変だって言われるから…そんなこと言われたの初めてだわ。」

女性はにこりと優しく笑みを浮かべるとそっと僕の髪に触れて、そして小声で小さく有難うと呟いた。
こんな綺麗な声をしているのに、なぜ言われないんだろうか。綺麗な薄い青色の緩くウェーブの掛かった長い髪に、声と同じように澄んだ黄色に近いオレンジ色の目。顔立ちも整っていて美人という部類の女性だ。


「引き止めちゃってごめんなさいね。私は雨宮和子っていうの、ここら辺の近くに住んでいるから…良かったらまた、お話しましょう」


そういうと女性――雨宮さんは僕の髪からするりと手を離し、優しく、とても嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「是非。僕は堀部守です」
「守君ね、それじゃあ、また」


雨宮さんは軽く手を振るとどこかへ歩いていってしまった。後姿が見えなくなってしまい、少し名残惜しく思いながら再び歩き出す。するとかなり振っていた雨はぱらぱらと小雨になり、最後には降らなくなってしまった。
まるで彼女が雨雲を連れて行ったかのように―――


「まあ、好都合ですね」

小さな傘を折りたたんで歩き出す。




(雨の化身のような、素敵な色)


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