したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

VaMPiRe

209竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/11/24(土) 22:46:59 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第23話「狂気粉砕へ」

 白波を攫った犯人が紫々死暗だと判明した日の深夜。真冬はこっそり霧澤の部屋から出て、家からも出る。別に家出というわけではない。彼女は携帯電話で呼び出されていたのだ。場所は朧月病院の屋上。呼び出したのはこの病院の院長の息子である朧月昴だ。
 真冬が屋上へと行くとそこには朧月の他に朱鷺綾芽、茜空九羅々、茨瑠璃の姿があった。茜空と茨は真冬と同じように契血者(バディー)の奏崎を連れて来ていない。
 着いた真冬はとりあえず、契血者(バディー)を連れて来ないように、と念を押した理由を聞いた。
「白波が何処にいるか、それはもう全員分かってる。だが、場所を知った霧澤は動くかも知れねぇ。まずは作戦を立てる。赤宮、お前には奴を制止してほしいんだ」
 え、と朧月の言葉に微かに驚いたような反応を見せる真冬。
 しかしながら、扇子で口元を上品に覆っている朱鷺は、真冬に視線を向けながら反論じみた言葉を放つ。
「別に貴方が危惧しなくても夏樹さんは大丈夫だと思うのですが。夏樹さんもそこまで馬鹿じゃありませんわ。むしろ、こういう時こそ彼はよく考えて行動するんじゃ―――」
「だと良いですけどね」
 朱鷺の言葉を茜空が遮る。
 彼女は屋上のフェンスに体重を預け、腕を組みながら立っている。妙にその体勢が格好よく映っている。この体勢が似合うのはこの中では、茜空と朧月だけだろう。だが、朧月は壁に寄りかかったりはしていない。
 茜空のオレンジ色の左目が、僅かに光って見える。
「敵や囚われている人間にもよるでしょう。少なくとも、僕の時は状況が状況で考えてる余裕もありませんでしたがね。敵はかつての大敵。囚われているのは白波さん。まー、後先考えず行動しそうですよね。しかも、紫々が言った『早くしないと壊す』という宣告。この発言をどこまで信じるかは自由ですが、少なくとも僕は危機感を感じています。本当にやりかねないなっていう、危機感をね」
 発言に、朱鷺は反論する材料が無いのか黙り込んでしまう。
「過去のこともあって、煽られちゃ、お兄ちゃんも焦っちゃうと思う。今回は、ちょっと冷静さを欠いちゃうかも」
 茨の発言に、更に朱鷺は気まずくなり扇子で顔を隠してしまう。
 その光景を珍しく思いながら真冬は、朧月に問いかける。
「だとしたら、乗り込むのはいつになるの? 私もクララちゃんと同じで紫々は本気だと思う。私達が遅れれば遅れるほど涙ちゃんの命の危険性は上がるよ」
「まあ待て。最近お前霧澤に似てきたな。まずは情報収集だ。つーわけで朱鷺、お前一回魔界に戻って調べて来い」
 指名された朱鷺は、顔を隠していた扇子を払い、『はあ!?』という抗議の声を漏らす。
 彼女の甲高い声が夜空に大きく反響した。
「ええー? まーたわたくし裏方ですの? 久しぶりに暴れられると思ったのに」
「契血者(バディー)がいなくて自由に動けるのがお前しかいないんだよ。いいから従え」
「命令口調が腹立ちますわ!」
 口を尖らせて抗議体勢の朱鷺に、朧月は額に手を当てて溜息をついた。『この手を使うか』と朧月は用意していた切り札を使うような台詞を吐き、朱鷺にこう宣言した。

「任務を全うした暁には霧澤と一晩過ごせる券」
「乗りましたわ!!」
「ちょっと待ってよ昴くん!?」

 朧月の発言に朱鷺が快く(目は血走っていたが)了承し、朧月のとんでもない提案に真冬が半ギレする。
 その光景に茜空が溜息をついている。ぶっちゃけ霧澤と誰がベッドインしようが彼女には興味が無いし、その過程で霧澤との間に誰との子供が出来ようとも彼女には関係ない。そんな深いところまで考えているが、ぶっちゃけるとどーでもいい。いつの間にか三人の話し合いに『私も頑張るから今度お兄ちゃんと遊びたいー』などと茨も混ざった。こりゃ長く続きそうだと考えた茜空は馬鹿馬鹿しくなって一人だけ先に帰ることにした。
 結果的には朱鷺が任務を全うしてくるので、真冬は霧澤を全力で守ることになった。茨の提案にいたっては、好きにすれば良いという結論にいたった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板