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203竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/10/06(土) 10:17:50 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 予想はしてはいたが、やはり見つからなかった。
 待ち合わせ時刻になってしまい、真冬と奏崎は時間が近くなってきたのに気付き、いち早く引き返していたのだが、
「ありゃ、ちょっと早かったね」
 着いたのは七分前。
 霧澤・朱鷺ペア、朧月・茜空ペアが近づいてくる気配も無く、二人は時間までここでゆっくり待つことにした。
 しかし、二人の間には会話が無い。白波を探している時も、必要な言葉だけを交わしていた。
 だがそれは決して仲が悪いから、とかではなく、

((……話しかけづらいなぁ……))

 もしも、奏崎が『ヴァンパイア』のことや真冬の正体を知っていなければ、話しづらくなることはないだろう。それまでは普通に話していたのだから。だが、今二人が話しづらくなっている理由は似通っている。
 真冬は『契約のため霧澤とキスしていることを、奏崎は知っている』で奏崎は『真冬に内緒で霧澤とキスしちゃった』ので、お互いに気まずくなっているのだ。それに付け加え、奏崎は一足先に霧澤に告白も済ませてしまっている。余計に気まずい。
 しかしここは気遣いの出来る赤宮真冬。
 彼女は意を決して奏崎に話しかける。
「……ね、ねぇ薫ちゃん」
「ふぁいっ!?」
 いきなり声をかけられ変な返事をしてしまう奏崎。
 何一つ悪いことしてないのに僅かな罪悪感に、真冬は苛まれてしまう。
 奏崎は驚きで乱れた呼吸を胸に手を当て整える。落ち着いた様子で、彼女は真冬を見つめ『どうしたの?』と問い返す。
「……あ、うん。あのさ、夏樹くんって昔はどんな人だったの? 今と同じで、人のために頑張れる人だった?」
「ああ、夏樹ね……。人のために頑張れる、というよりは……何事にも一生懸命ってイメージかな」
「何事にも?」
 真冬が聞き返し奏崎はこくりと頷く。
 奏崎は夕方の赤く染まり始めた空を見上げながら言葉を続ける。
「私はアイツを小さい時から知ってるから。でも実際物心ついたのはそれよりずっと後だから、記憶にあるのは小学校の頃ぐらいから。親が離れてる私を楽しませてくれて、知らないことを教えてくれて、困ってる時には助けてくれて、泣いてる時には励ましてくれた。その頃からじゃないかな」
 奏崎は一度言葉を区切って、

「私が夏樹を好きになったのは」

 真冬は自分が霧澤を好きになった理由を思い出す。
 彼と知り合ったのはつい最近のことだ。『四星殺戮者(アサシン)』の件では、眠ってしまった霧澤に泣き叫んだ。彼が無事だと分かって安心して、それで好きになったのは間違いないが、
 自分は日は浅いけど、奏崎には及ばないかもしれないけど、
 思い出だけはたくさんある。
 強力な悪魔のフルーレティと戦ったり、朱鷺綾芽と霧澤を取り合ったり、茜空と一緒に奏崎を守るためにマモンと戦ったり。そして、これからもそんな思い出を―――
「薫ちゃん」
 真冬は奏崎は呼ぶ。
 彼女はきょとんとした表情で振り返り、真冬と目を合わせる。
 きりっとした、一つの大きなことを決意したような赤い瞳を持った真冬と見つめ合う。

「私、負けないよ!」

 奏崎には何のことか分かったようだ。
 彼女は楽しそうな表情をして、息を吐いた。
「望むところだよ」

 ちょうど皆が帰ってきた。
 二人は決意を固めて、それぞれの家へと戻っていくのだった。


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