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201竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/28(金) 23:12:00 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 どうしたもんか。
 霧澤夏樹は夕方に差し掛かる前の人通りが割りと多い街で茫然と考える。
 彼が『どうするか』迷っているのは白波を捜索するための手立てではなく、彼がくじで一緒に行動することになった朱鷺綾芽のことだ。彼女は霧澤と遺書になったことで、幸せそうな表情を浮かべ完全に舞い上がっている。霧澤からしてみれば舞い上がっている理由は不明で、相談どころではない。
(これだったら話し辛いけど、茜空の方がマシだったな……)
 絡みやすさよりもまだ会話になりそうな相手を選ぶ始末だ。それだったら一番都合が良いのは真冬か奏崎であるのだがあくまで、朱鷺綾芽と茜空九羅々という『そこまで親しくない人物』を比べた時の話である。
 彼の苦悩を知る由もない朱鷺も、ただ舞い上がっているだけではない。
 彼女は幸せそうな笑みの裏には、想像しがたいほど深いところまで考えていた。
(……さて、どうしましょうかね)

 彼女は街行く人々の会話に聞き耳を立てていた。
 まずは『耳』からの情報収集だ。
(当然ながら『白髪の娘が攫われた』、という噂はないようですわね。消えたのは深夜。会社勤めの方々もとっくに帰宅しているでしょう)
 次は己の『眼』を頼りにする。
 知っていそうな、そんな人物を見つけようとするのだが……。
(当然ですわね。見当たりませんわ。まず噂がないのですし……知らない方がほとんどでしょう)
 知られても厄介ですけど、と彼女は軽く思いながら自分の思考を展開する。
(白波さんと朧月さんの仲からして家出ではない。となると、誘拐? まさかですわね……。彼女がそんな安い手に引っかかるでしょうか? 不意打ち? 考えられる可能性はいくつもありますけど、現実的なのは……)

「朱鷺!」
 突然、自分を呼ぶ霧澤の声で朱鷺はふと我に帰る。
「あ、はい?」
 彼女にしては珍しく慌てたような声。それに違和感を感じないほど鈍い霧澤ではなかった。時として彼は勘が鋭い。人の感情や気持ちに対する時には異常なほど敏感になる。
 霧澤は距離が空いてしまった朱鷺の元へと駆け寄りながら、
「一人で勝手に行くんじゃねーよ。見失ったらどうすんだ」
「……あ、すいません。少し考え事を……」
 霧澤の言葉に朱鷺は苦笑いを浮かべながらそう返す。
 霧澤は溜息をついて、
「お前な、一人で悩むんじゃねーよ。今回はお前だけの問題じゃなく、俺や真冬も協力してるんだ。皆を頼っていいんだぜ? ってか、一番近くに俺がいるんだから、俺をまず頼れよ」
 霧澤の言葉に朱鷺は頬を赤く染める。
 自分の好きな人が『俺を頼れ』と言ってくれた。
 彼女は嬉しさで爆発しそうな自分の感情を制御して、扇子の裏側でうっすらと笑うと、
(……だから、ダメなんですよ……)
 彼女は思う。
 再確認した自分の気持ちをしっかりと抱いて。

(……だから、そんな貴方だからこそ、わたくしは貴方を真冬さんから奪って独り占めしたくなりますのよ……)

 朱鷺は霧澤の手を軽く握り、小走りをしながら、
「さあ、行きましょう!」
「お、おい!? 行くってどこに!?」
 彼女は微笑みながら、
「ゆっくり話せる場所ですわ。二人で相談しましょう!」
 付け加えるように、心の中でそっと思う。
(……二人の将来のことを……。……なんちゃって)


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