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195竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/17(月) 06:00:43 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「でさ、『けーやく』ってどうすればいいわけ? アンタと真冬ちゃんはもうやったんでしょ?」
 奏崎は軽い調子で聞いてきた。
 霧澤と真冬は答えるかどうか迷った。
 現在霧澤と真冬両者の右手の中指には指輪が付いている。それはお互いが契約した証で、これが付いている限りは契約が持続している証拠なのだ(『ヴァンパイア』の存在を知らない者には見えていないが、先程知った奏崎には既に見えている)。故に二人は契約の方法を知ってはいるのだが……、
 言えない。
 霧澤と真冬はそう思っていた。
 奏崎が自分のことを好きだ、ということを知らない霧澤だが、契約の仕方を伝えても大丈夫という保障がどこにもない。
 奏崎の霧澤に対する気持ちを知っている真冬は、契約のためにあんなことをしなきゃならないなんて言えるわけがない。
 契約には、

 二人がキスしなければいけないなんて言えるわけがない。

 奏崎は急に黙り込んだ二人をきょとんとした表情で見つめている。
 自分の質問に答えてくれないことに不満を募らせた奏崎は霧澤の服の先っちょをつまんで、駄々っ子のように揺らしながら言う。
「ねーねー、聞いてんの? どうしたら『けーやく』ってのは成立すんのさ! ねーってば!」
 いよいよ手に負えなくなる頃合だ。
 霧澤は奏崎薫という人物を知りすぎている(の割には彼女の恋心には全く気付いていない)ため、どうしようか本気で悩んでいると茜空が奏崎をつついて彼女に耳を貸すようジェスチャーした。
 聞こえないほどの小さな声で、彼女は奏崎に契約の方法を伝えると、

 ぼっと顔をゆでだこのように赤くした奏崎は大きな声で叫びだす。
「は、は、は、はいぃぃぃぃぃっ!?」
 その声は校舎中に響き、中にいた生徒もびくりと肩を震わせた。

「なななななな、ききき、キス!? そ、そそそんなことを女の子同士でしろっての!?」
 さすがの彼女でも許容範囲を大きく超えたようだ。
 意外だな。茜空大好きな彼女なら『キス? そんなことしちゃっていいの!? いっえーい、何回でもやるぜ!』とか言いそうだったのだが。
 恐らくは初めてのキスを捧げることに恥ずかしさを覚えているのだろう。彼女は僅かに考え込むと、
「わ、分かったわ……。夏樹、真冬ちゃん。目瞑って。見られたくないから」
 奏崎の指示に二人は大人しく従う。自分達の時は周りに誰もいなくて良かった。まあ、状況も場所も選んでいる暇はなかったし。
(……キス、か)
 奏崎は一人で考えていた。
 自分は霧澤のことが好きで、今からするのは人生最初のキス。
(……夏樹……。真冬ちゃんと契約してるってことは、アンタは真冬ちゃんとキスしたってことよね。……真冬ちゃんとは正々堂々って言ったけど、これは反則にならないよね)
 奏崎はしゃがんで茜空に囁くように言う。
「(……ちょっとだけ待ってね)」
「(……構いませんよ。そうすると思ってました)」
 奏崎は立ち上がり、霧澤の目の前に立つ。
 そして目を閉じている彼の胸に手を添え、身長差があるため少しだけ背伸びをし―――、

 霧澤と。
 自分の大好きな人の唇に、自分の唇を重ねた。


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