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191竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/15(土) 10:30:58 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 奏崎はうっすらと目を開けた。映る景色はどこかの建物の天井と思われる白いタイル。ここで彼女は今まで自分が眠っていたものだと気付かされた。
 まだはっきりとしない意識の中、彼女は身体の上体だけを起こし辺りを見回してみる。個室だった。清潔感に溢れ白のイメージが強いその部屋は一目で病室だと分かるほどだった。
「……病院……?」
 奏崎は漠然とした答えを言った。
 自分自身あまり覚えていないのだ。記憶にあるのは緑髪の男に襲われているところを霧澤が助けに来てくれたところまで。あの男の正体も知らなければ、彼女は今回の事件とは無縁なのである。
 だが、自分を助けてくれた人物が霧澤だけではないことも知っている。彼の他にもう二人、赤宮真冬と茜空九羅々がいたことは覚えている。
 すると自分の病室の扉が開き、四〇代くらいの白衣を着た男性が入ってきた。
 彼は病室で目を覚ましている奏崎を見ると、優しい笑みを浮かべた。
「目が覚めたかい。良かった。まあ君は気絶していただけだから、そろそろ目を覚ますんじゃないかと思っていたよ」
「……あの、ここは……?」
 奏崎が男性に質問すると男性は優しく答える。
「病院だよ、見ての通りね。まったく、馬鹿息子が携帯電話で『個室を一個用意しろ』なんて上から出るものだから、どんな患者を連れてくるかと思えば……友人さんだったか。しかし、昴にこんな可愛いお嬢さんと知り合っていたとは。涙ちゃんというものがいながらあいつは」
 男性は一人で話を進めていた。
 そのペースに流されてしまった奏崎だが、彼が朧月昴の父親だと分かった。だとすると涙というのは、彼と一緒にいる白波涙のことだろう。白波はどうかわからないが、自分は朧月とはそんな関係じゃない、と言い返すことも出来なかった。
 ははは、と苦笑いする奏崎に朧月の父親は続けた。
「まあいいか。そういえば、君が病院に来た時たくさんの友達が一緒だったよ。女の子二人は傷だらけで治療しようとしたが断られてね。なんでも『寝たらある程度回復する』だそうだ。今では息子の部屋にいさせてるよ。名前はたしか、霧澤くんというのがいたかな」
「夏樹が!?」
 奏崎は思わず大きな声を出してしまった。
 その声に朧月の父親は『院内では静かに』と警告する。奏崎はしまった、という感じで口をふさぐ。
 朧月の父親は奏崎に、
「そういえば霧澤くんからメッセージを僅かっているよ」
「メッセージ?」
 奏崎が聞き返すと、朧月の父親は話し始めた。

「『今まで隠していてすまなかった。もしお前がこの事を知っていたらこんなことにはならなかったのかもしれない。あとで全部話す』だそうだ。もし君が彼らより早く目が覚めたら伝えておいてくれ、と頼まれた」

 全部話す、というのは今回のことだろうか。
 真冬に良く似た長い赤髪の女性のこと、茜空九羅々の正体、そして自分を狙ってきた緑髪の男のこと。
 霧澤は全部知っていたのだ。知っている上で、多分自分を巻き込まないために今まで内緒にしていたんだと思う。霧澤は、奏崎の大好きな人はそういう男だ。
 朧月の父親は扉の方へと歩きながら、
「とりあえず君は早くお家に帰りなさい。制服は洗って妻に渡してあるから受け取るんだ。私は馬鹿息子とその友人達を起こしてくるよ。今日は大事をとって君は学校を休みなさい。馬鹿どもは遅刻してでも行かせるがね」
 時刻は七時三七分。
 今から起こして学校へ向かわせれば余裕で間に合うだろう。
 彼女は朧月の母親から制服を受け取り、それを着て病院から出て行く。

 学校には間に合う。
 霧澤達も、そして自分も。


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