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186竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/02(日) 16:57:59 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 真冬の拳はマモンの腹部に致命的なダメージを与えた。
 茜空がマモンと一人で戦っていた時にも、真冬が駆けつけ攻撃を加えたが彼が偶然持っていた通信用の水晶で、ダメージを与える事は出来なかった。
 だが、今回マモンにとってそんな偶然的なラッキーは起こるはずも無かった。
 茜空との競り合いの途中に、下の階での異変に気付き、いつの間にか目の前の茜空がいないことに気付き、背後に回っていた真冬の攻撃への防御が間に合わず、彼の身体は完全にノーガード状態なのだから。彼にラッキーは起こらない。
 
 ―――ただ、そんな奇跡が起こらないだけである。
 
 真冬の拳はマモンとの間五〇センチ程度のところで止まっていた。
 真冬自身が動きを止めたわけではない。拳が止まった理由は、彼女の腹部に、肩に、足に突き刺さっている鋭利な針が教えてくれた。針が何処から出ているか目で追うと、マモンの背中に生えている針の山から伸びたものだ。
「……な」
 真冬は目を疑い、小さい吐息のような声を漏らした。
 彼女の口の端からは声と共に一筋の血が流れ、針が突き刺さっているところからも当然のように血が流れている。
 そんな状況を理解できていない真冬に、マモンは嘲りと共に告げる。
「残念だッたな。大方、俺様の正面から攻撃を食らわせば致命的なダメージを与えられると思ッたんだろうけどさァ……この姿に死角はねェんだよ」
 真冬の身体から針が引き抜かれ、マモンが彼女を頭を掴み、そのまま地面へと叩き落した。
 彼は上空で高笑いをしながら、
「誰が針は飛ばすだけだと言ッた? 誰が針は俺様の意のままに操れないと言ッた? 誰が針は伸縮自在じャないと言ッた? あァ!? この俺様が! 仮にもこの強欲を司りし俺様でも、死角なんて欲するわけねェだろォが単細胞どもが!!」
 マモンの罵声が、真冬と茜空の耳に不快に入り込んでくる。
 彼はそんな二人のことなど考えずに、構わず続けた。
「お前らには万に一つの勝機もねェ!! 今のが、たッた今さッきのが、俺様の最大にして最後の隙だ!! お前ら如きじャ勝てねェよ!!」
 マモンの言葉に真冬と茜空は歯を食いしばる。
 茜空は地面に倒れている真冬へと駆け寄り、心配そうな表情をしながら声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
 茜空の言葉に真冬は頷く。
 彼女は口の端から垂れる血を手の甲で拭いながら、針が突き刺さり上手く動かない足を震えさせながら立ち上がる。
「……大丈夫に見えるか? だがまあ安心しろ。お前が思っているよりは平気だ」
 二人は上空で笑っているマモンを睨みつけるように見据える。
 二対一、という不利な状況に置かれても、フルーレティやレヴィアタンがそうであったように、マモンも余裕を見せている。
 だが、あの四人は『余裕』が確実に『隙』に変わる瞬間があったのだが、マモンにはそれがない。彼が言った『最大で最後の隙』も恐らく間違ってはいない。
 そのため、真冬と茜空が思うことは同じである。
(……打つ手は限られてきている。ならば!)
(……その僅かな隙を見逃すことなく、どれだけ大きい攻撃を与えられるか、ですね)

 二人が見据える先には倒すべき敵、マモンがいる。


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