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175竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/04(土) 17:01:45 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 何とか人気のない工場跡地で戦いを繰り広げている白波とマモンはお互いに二十メートルほど距離を開けていた。
 マモンはいつでもどの方向へ向けて動けるように僅かに身を屈め、白波はマモンへ向けて銃を向けている。いつでも撃てるように、引き金に指を掛けているのはマモンも見えている。
 二人は睨み合っており、どちらにも動く様子は見られない。
 そんな中、余裕あり気な表情をしているマモンが口を開く。
「……いやァ、人間共に赤宮真冬のことを聞いても情報手に入れられなかッたし、直後に茜空九羅々に襲われるしでイイことねェなァッて思ッてたが……まさか一人で迎えに来てくれるなんてよ。殺されるッてのに、随分なお人好しだ。いいぜ、そういう奴は嫌いじャねェしな」
「はん、アンタの都合なんか知ったこっちゃないわよ。ただ、授業中にずっと魔力を向けられてたら集中出来やしない。まーた授業遅れちゃうじゃない!」
 そッちの都合なんざ知るか、とマモンは吐き捨てた。
 言ってしまうと、マモンの今回の狙いは『金瞳(こがねのまなこ)』ではなく赤宮真冬達の殲滅だ。『金瞳』は二の次である。
 しかし、目の前にお宝が転がっているのを、マモンが。あの『強欲』のマモンが見逃すであろうか。お宝も入手し、目的も果たす。これ程自分に良い影響を及ぼす一石二鳥も早々あるまい。
 だが、
「つーか、テメェが来てくれたことはありがたいんだが……ターゲットを見逃しちまッたじャねェか。どうしてくれんだ」
「だから、アンタの都合なんか知らないって言ってるでしょ。そもそも、何でアンタが薫ちゃんを狙うわけ? 夏樹くんや真冬への人質のつもり?」
 白波の言葉にマモンは短く笑う。
「んなわけねーだろ。そもそも、俺はあの女と赤宮真冬が知り合いッてのも今聞いたッつの。こちとら『ヴァンパイア』の交友関係なんざ調べてねェしな」
 じゃあ何で、と白波は問いかける。
 マモンは引き裂かれた笑みを浮かべながら、白波の質問に対する答えを出す。

「奴の身体に『金瞳』がある。それだけだよ」

「何……ですって……?」
 白波の引き金に掛けている指に、僅かに力が込められる。
 それに気付いているのか気付いていないのか、よく分からないような表情でマモンは続けた。
「お前も『ヴァンパイア』なら聞いたことぐれェあるだろ?」
「……あるわよ。でも、何で薫ちゃんの身体に……?」
「俺が知るかよ。まァ、あの女は殺しはしねェからよ。お前らの大事なモノッてんなら『金瞳』だけ奪ッて本体は返してやる。だから邪魔すんな。そこを退け」
 恐怖を与えるような目で、マモンは白波を睨みつける。
 白波は歯を食いしばり、引き金に掛ける指に徐々に力を加えていく。彼女のかいた汗が、頬をすぅ、と伝っていく。
「応じねェ、か。まァそうだよな」
「……アンタはここで、私が討滅する!」
「あァ、それね」
 マモンが白波の指を刺激するように、あるいは挑発するように。口を開く。

「テメェじゃ無理だよ。帰れ」

 ドォン!! と白波が引き金を引く。
 白い弾道を描き、白い炎の弾はマモンへと一直線に向かっていく。
 その弾をマモンは片手で受け止め、彼方の空へと弾き返した。
「な……っ!?」
「だから言ったろ……?」
 瞬間、マモンが白波の頭を掴み静かに告げる。

「お前じゃ無理だって」
 そしてそのまま、白波の顔を地面へと叩きつけた。

「ったく、あの馬鹿は何処に行ったのよ!」
 鞄を持ちながら、走り辛そうにしている奏崎は息を切らしながらあちこちを見回していた。
 今の彼女は怒っている。
 やはり、授業も集中できずに学校を抜け出してしまった。
「……全部、吐かせてやるんだから!」
 再び走り出そうとする彼女の耳に、

「何か探し物か? いやァ、探し人が正しいよなァ」

 緑色の悪魔のような男が声を掛ける。
 一瞬で、奏崎はその人物が怪しいと分かり、一歩、二歩後ずさりをする。
「……だ、誰……なの……?」
「まァまァ、話は後でゆッくりと、な」

 奏崎薫の意識がここで途切れた。


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