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173竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/04(土) 12:56:21 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 霧澤と真冬にとって、大切な人物が『金瞳(こがねのまなこ)』の体内に宿している。
 茜空の言葉に、二人は絶句した。
 自分達の思う大切な人物がマモンの標的になってしまっていることを考えてもそうだが、そもそもそれは誰なのか。
 誰一人思い当たらないわけじゃない。むしろ、思い当たる人物が多いからこそ絞る事が出来ないのだ。
 それは、霧澤の妹である霧澤梨王かもしれないし。
 それは、同じ学校で真冬と同じ『ヴァンパイア』である白波涙かもしれないし。
 それは、二人を『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と慕う茨瑠璃かもしれないし。
 選択肢が複数ある中、二人だけで誰をどう守れというのだろうか。
「……涙」
 真冬が唐突に口を開いた。
 その言葉に霧澤は真冬の方を振り返る。
 白波のことなのだろうか、と思っていると真冬が言葉を続けた。

「……涙、瑠璃、昴、汐王寺、朱鷺綾芽、梨王、夏樹のお母様、滝本……この中の誰か一人か。私達の、という事は梨王かお母様が一番可能性が高い」

 真冬は自分達とより近しい人物の名前を挙げていった。
 霧澤にとっては誰も等しく大切なのだが、今挙げた人物の中では、確かに家族が一番大切かもしれない。それに、例えば白波か茨か朱鷺だった場合なら自分で自分を守る術は持っているだろうし、朧月か汐王寺なら傍に『ヴァンパイア』がいるため、誰か来るまで持ちこたえる事はできる。
 一番危ないのは家族だ、と霧澤が結論付けようとしたところで、

「―――何にも、分かっちゃいないんですね」

 横合いから茜空が口を挟む。
 彼女は何処か呆れたような表情でいる。誰か知っている彼女からしてみれば、霧澤と真冬の解答はすぐに間違いだと判断できているはずだ。
 彼女がこう言う、ということは梨王でも、夏樹の母でもないということか。
「どういうことだよ、茜空。梨王でも母さんでもないとしたら……」
「貴方達、近すぎて忘れてるんじゃないんですか? 最も大事な存在を」
 茜空の言葉に二人は首を傾げる。
 近すぎて忘れるくらい大切な人物、二人は顔を見合わせた。が、すぐにその思考は消え去った。霧澤も真冬も自分の命を顧みないような行動をすることが多い。そのため、二人が大切に思っているとは多少違うだろう。
 茜空はそんな二人を眺めながら、
「魔界の物っていうのは、体内に宿すとその人物はまるで何かに守られてるみたいに神の加護みたいなものを受けるんです」
 それは、と彼女は続けて、

「成績が良かったりだとか、病気になりにくいだとか、勘が鋭かったりだとか」

 その言葉で、二人はほぼ同時に同じ人物を思い浮かべた。
 真冬は知っている。
 自分が霧澤に好意を寄せている、といち早く気付き、ライバルとして正々堂々戦う事を誓った人物がいる事を。
 霧澤は知っている。
 大して勉強もしないくせに、真面目に授業を受けている自分より成績がよく、つい最近まで風邪なんて引かなかった奴が、珍しく風邪を引いた事を。
「マモンがその人物を見つけたのは、強力な『ヴァンパイア』が傍にいるため、『金瞳』が探知されないように自発的に張っていた結界が、『ヴァンパイア』の魔力によって削られ、それによって探知がされるようになったんでしょう。だから、ここで潰さないといけなかった。僕は、一体何のために彼女から離れたんでしょうね」
 茜空がつい最近離れた人物。
 それは―――、

「―――薫?」

 その頃、教室で授業を受ける奏崎薫を、遠くのビルから眺める一人の人影があった。
「ハッ、見つけたぜェ。『金瞳』ォ!!」
 そう、マモンだ。


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