[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
VaMPiRe
170
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/08/03(金) 17:36:11 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
真冬とマモンは拳をぶつけ合っていた。
真冬は自身の真っ赤な炎を纏った拳を、マモンは自身の毒々しい緑色の炎を纏った拳を。お互いが渾身の一撃だ、と言わんばかりに何度も何度も全力でぶつけていた。
競り合う状態になり、余裕もなさそうな搾り出すようなマモンの声が、真冬の耳を刺激する。
「……やるじャねェか……! もうちョい楽だと踏んでたんだが……これはアテが外れたかァ? まァ、何にしろお前だけじャ俺には勝てねェ。動けない茜空九羅々が動ければ話は別だがな」
真冬はフッと笑みを浮かべ、
「―――そーか」
そう言い残すと、前からの攻撃をかわすように後ろへと飛び退いた。
その真冬の不可解な行動に、マモンは詮索せざるを得ない。
(―――? 何故今距離を取った? 競り合いは互角だったはず―――)
マモンの思考はここで中断され、納得いく解答がすぐに現れた。
頭上。
マモンの頭上から急降下してくる茜空が茜色の炎を纏った金棒を振りかぶっていたからだ。
「……そーかい。二対一か……丁度良いハンデじャねーかッ!!」
ガッ!! と鈍い音。
振り下ろされた金棒は、マモンの両腕で受け止められてしまう。しかし、攻撃を防がれた茜空の表情に一切の悔いや焦りは見られない。
本命はこっちではないから。
茜空の狙いは。真冬の狙いは。あくまで一致していた。
しかし、それは前もって打合せされた綿密な狙いではなく、自分の攻撃がマモンにどのような影響を与えたかで、急遽変更になってしまう。目配せもしない。合図も送らないし、そもそも目すらもまともに合わせていない。長く身を置いてきた戦場でのみ発揮する第六感と本能のみで、真冬と茜空はあまりにも杜撰なコンビネーションを完成させていた。
「良かったよ。―――お前の両手が塞がって」
炎を拳に纏った真冬がマモンの懐に潜り込む。
上の腕をどければ金棒に頭を打たれるし、離さなかったら腹に重い一撃を喰らう。
ならば、少しでも生存率の高い、腹の一撃を喰らっとくか。
真冬の細い腕から繰り出された強力な一撃は、マモンの口から赤い液体を吐き出させ、そのままノーバウンドで三メートルほど後ろの木をへし折って、動きを止めるほどの威力だった。
吹っ飛ばされたマモンは仰向けの状態になっているだろうが、今は砂煙で姿を確認できない。
ほぼ無傷の真冬は、傷だらけの茜空へと視線を落とすと嫌味のように言葉をこぼす。
「ふん、大分手荒い歓迎を受けたものだな。ボロボロじゃないか」
「余計なお世話です。貴女も調子乗ってるとこーなりますから、精々気を抜かずに張り切っちゃってください」
可愛くない返答だ、と真冬は溜息をつく。
しかし、これで倒せてはいないだろうが、マモンに決定的な一撃を与える事には成功した。
後は二人で押し切れば何とか……と思っていたのだが。
「いやァー、マジで効いたぜ、今のは」
砂煙の中から聞こえる、薄気味悪い声。
その声の主は身体を起こしたのか、力むような声を発した後、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。煙の中で人影が揺らめいているのが確認できる。
煙の中から再び姿を現した声の主―――マモンは口の端から血を流しながらも案外平気そうな顔をしていた。
「……参ったな。今ので倒せたとは思っていなかったが、ここまでタフとは」
「あー、そんなんじャねェんだよ。今のはマトモに喰らッてたら俺もダウンしてたかもしれねェ」
真冬は眉をひそめ、問いかける。
「……マトモに、だと?」
「あァ。生憎にもうちの女神サマがくれた連絡用の水晶が若干盾になッてたみたいだぜ。まァこの通り、お前のパンチで粉々に砕けちまッて二度と使えやしねェけどな」
マモンが言いながら服と肌に隙間を作ると、その間から透明な欠片がばらばらと地面に落ちる。とても綺麗な水晶だったろうが、粉々になってしまえばただのゴミ同然だろう。
未練なんか微塵も感じさせず、マモンは何もないかのようにその水晶の欠片を踏みしめ、口の端の血を手の甲で拭う。
「さァて、と。このままお前らと戦ッても体力と時間を浪費するだけだな。つーわけで、俺様また逃げるわ」
「また、情けなく尻尾巻いて、ですか?」
「ハッ、言うじャねェか。言ッとくけどなァ、こちとら最初から目星は二つついてたんだよ! お前が選択肢から外れりャ、答えは一つになッた。アリガトなァ、俺を曲がりなりにも財宝に導いてくれてよッ!!」
マモンはそう言いながら飛び立つ。
彼の発言に顔色を一気に変えた茜空が追撃しようとするが、身体の痛みがそれを許してくれない。
とりあえず、真冬は茜空の傷を治療しながら話を聞くことにした。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板