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169竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/21(土) 20:04:50 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 茜空は自分を真っ直ぐに見つめる霧澤と視線を交えていた。
 それから、彼女は視線を外し軽く溜息をついた。
「……貴方、彼女と知り合いなんですね」
 茜空の言う『彼女』は恐らくは奏崎のことであろう。
 霧澤はこくりと頷いて、
「ああ。つっても、知り合いなんて簡単な言葉で済む関係じゃねーけどな」
 その言葉を聞くと、茜空は僅かに考え込む。
 『知り合い』よりも進展した関係―――ということは、
「―――恋人ですか?」
「違う違う! いきなり関係進み過ぎだろ! 俺とアイツはただの幼馴染だよ」
 大体アイツをそういう感じで見たことねーし、と恋人という意見を全力で否定している。
 この場に奏崎がいたらどうなっていただろう。
 『そんなに私と恋人と思われるのが嫌かい? 夏樹?』とか『はんっ。私だってアンタには興味ないすぃー』とか言いそうだ。

「……貴方は、そんなに彼女を助けたいですか……?」

 茜空の言葉に霧澤は言葉を返さない。
 こんな事を訊いた茜空の真意が掴めないのだろう。霧澤は返そうにも、返すべき最適な言葉が見つからないのだ。
「……正直、僕はずっと一人だったから幼馴染っていうのがどういうものかよく分かりません……。ただ、それは……その幼馴染と呼べる存在は、意見が食い違った相手に協力を求めてでも、守りたい存在なんですか?」
 彼女の言葉を、霧澤は大まかな解釈をした。
 要は『幼馴染のためなら、嫌いな相手にでも協力を頼むのか。幼馴染という存在は、それほどまでに大事なものなのか』という事を訊いているようだ。
 彼女の言葉に、霧澤はさも当然のように答える。

「堅いこと考えてんじゃねーよ。困ってる人がいるなら助ける。そんな簡単なことに、理由とか考えはいらねーよ。それは多分、幼馴染に限定されねーよ」

 同じだ。
 奏崎の言葉と、同じだった。
 茜空は霧澤の言葉に、前に聞いた奏崎の言葉を重ねていた。
「俺はアイツの泣き顔だけは見たくない。お前が死んじまったら、きっとアイツは大泣きするだろうからな。なんせアイツ、今日学校でお前が残した英文を日本語訳してから来たんだぜ?」
「……だったら、彼女だけ助ければいいじゃないですか……。わざわざマモンと戦う道を選ばなくたって……」
「仕方ないだろ」
 霧澤は茜空の言葉を遮るように言った。
「アイツを助けようとしたら、お前を生かさなきゃいけない。お前を生かすためには、マモンをぶっ飛ばさないといけない。同じなんだよ。アイツとお前を助ける事は」
 その言葉に茜空は薄く笑みを浮かべた。
 霧澤はすっと手を伸ばし、再び茜空に問いかける。

「薫のために、お前の力を貸してくれ」

 茜空は呆れたように息を吐いて、金棒を杖代わりに立ち上がる。
「―――この状況、手を貸すのは貴方達ですよ? 最初に奴と戦ってたのは、僕ですから」
 そう言い残し、茜空は真冬とマモンが戦っている場所へと突っ込んでいく。

 世話焼きを一人、守るために。


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